
「パブロフの犬」という言葉を知っていますか?
「聞いたことはあるけど、どんな意味なのかは分からない…」
「パブロフって何?人の名前?パブロフさんが飼っていた犬のこと?」
「何か偉業を成し遂げた犬なのかな」
と、意味を詳しく説明できる人は意外と少ないかもしれません。
実は、「パブロフの犬」とは、条件反射を示す有名な実験に由来した言葉。
条件反射は私たちの日常の行動にも関係しており、犬のしつけにも役立つ反応です。
本記事では「パブロフの犬」の意味と実験内容を分かりやすく解説し、条件反射の身近な例も紹介します。
愛犬のトレーニングやしつけにどう生かせるかもまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
「パブロフの犬」ってどんな意味なの?

「パブロフの犬」とは、ロシアの生理学者「イワン・パブロフ(以下、パブロフ)」が行った実験を意味する言葉です。
“ベルを鳴らした後に犬に餌を与える”という行為を繰り返していると、犬はベルが鳴っただけで唾液を分泌するようになります。
後天的に、ある特定の条件が揃ったときにだけ起こす特定の反応を、パブロフは「条件反射」と名付けました。
反対に、「犬が唾液を分泌する」など、生まれながらに備わっている先天的な反応を「無条件反射」と名付けています。
この実験結果は1900年代初頭に発表され、広く知られることとなりましたが、脳内でどのような仕組みが働いているかは解明されていませんでした。
パブロフの実験から100年以上の時を経た2014年、「パブロフの犬」の脳内の仕組みが詳しく解明されたのです[1]。
「パブロフの犬」の実験について
パブロフは元々、犬を用いて消化腺の研究を行っていました。
その研究中、餌を運んでくる人の足音がすると、犬がヨダレを垂らすことに偶然気が付きます。
犬が、飼育係の足音と餌を結びつけていると考えたパブロフは、実験を行いました。
【「パブロフの犬」実験内容】

②のような、犬が餌を見て唾液を分泌するなど、人間を含む動物が生まれながらにして持っている反応をパブロフは「無条件反射」と名付けました。
その他、パブロフは反射とそれを引き起こす刺激を以下のように定義しています。
【反射と刺激の関係】
| 内容 | 実験での例 | |
|---|---|---|
| 無条件反射 | 動物が生まれながらにして持っている反応 | 餌による 唾液の分泌 |
| 無条件刺激 | 無条件反射を引き起こす刺激 | 餌 |
| 中性刺激 | 無条件反射を引き起こさない刺激 | ベルの音 |
| 条件反射 | 中性刺激と無条件反射の引き起こしが繰り返される(=学習する)ことで起こる反応 | ベルの音による 唾液の分泌 |
| 条件刺激 | 条件反射を引き起こす刺激 | ベルの音 |
中性刺激が無条件反射の引き起こしと繰り返される(=学習する)ことで、条件刺激へと変化するのです。
これらの一連の流れは「レスポンデント条件づけ」といい、「古典的条件づけ」やパブロフの名前を取って「パブロフ型条件づけ」とも呼ばれています。
犬の条件反射いろいろ
「パブロフの犬」の実験で示されたような条件反射は、犬の身近な行動にも見ることができます。
【犬の条件反射の例】
・おやつが入っている袋の「カシャカシャ」音でおねだりをする
条件刺激(本来は何の反応も引き起こさない刺激):おやつが入っている袋の音
条件反射(学習によって引き起こされる反応):おねだり(⇨おやつの時間だと思っている)

・おやつが入っている袋の「カシャカシャ」音でおねだりをする
条件刺激(本来は何の反応も引き起こさない刺激):おやつが入っている袋の音
条件反射(学習によって引き起こされる反応):おねだり(⇨おやつの時間だと思っている)

・飼い主さんが鍵を持つと吠える
条件刺激(本来は何の反応も引き起こさない刺激):飼い主さんが鍵を持つ
条件反射(学習によって引き起こされる反応):吠える(⇨留守番をさせられると思っている)

このように、犬はさまざまな音や状況と、うれしい出来事や悲しい出来事などを結びつけて学習していきます。
条件反射は本能的に備わっている反応ではないため、犬によってその反応は異なります。
中には、特定の扉の開く音を聞くだけで「ごはんの時間だ!」とソワソワし始める子もいるかもしれません。
そして、条件反射は犬だけでなく、さまざまな生き物で見られる反応です。
なんと、ゴキブリにも条件反射があることが発見されているんですよ[2]!
人間の条件反射いろいろ

もちろん、人間にも条件反射があります。
一番分かりやすい例に、「梅干しを見るだけで唾液が出てくる」という現象があります。
新型コロナウイルス感染症のPCR検査を行う際、検査場の壁に梅干しやレモンの写真が貼ってあるのを見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
酸っぱいものを食べると唾液が出るという反応は、生まれながらにして持っている反応ですが、その繰り返しによって見るだけで唾液が分泌されるようになるのです。
他にも、「ある曲を聴くと涙が出る」「サザエさんを見終わると憂鬱になる」「ある人に名前を呼ばれると体がこわばる」など、私たちの日常生活にもたくさんの条件反射がありますよ。

学生時代、ずっと運動部に所属していた筆者。
走っている仲間に対してある特定の掛け声を叫ぶという、部の決まりごとがありました。
ある日ボーッと何も考えず家族と道を歩いている時に、走ってきたサラリーマンに対して部活の掛け声を叫んでしまった経験があります。
これも条件反射ですね…。
「パブロフの犬」は愛犬との生活にも活用できる!

「パブロフの犬」の実験で明らかにされた条件反射のメカニズムは、愛犬との生活シーンにおいても非常に役立ちます。
トレーニングやしつけにおける「パブロフの犬」の活用で代表的なのは、「クリッカートレーニング」。
クリッカーと呼ばれる、ボタンを押すと「カチッ」と音が鳴る道具を使用したしつけ法です。
「クリッカーを鳴らした後におやつを与える」という行動を繰り返すと、犬は「クリッカーの音=良いこと」と学習します。
本来クリッカーの音は犬にとって何の反応も引き起こさない刺激ですが、毎回おやつがもらえることで、クリッカーの音が「うれしい刺激」に変化するのです。
その結果、効率的にトレーニングやしつけが行えるようになります。
また、愛犬の認識を変えるトレーニングにも活用できます。
例えば雷など、愛犬がネガティブな感情を抱いている現象が起きた際に、おやつを与えます。
すると、雷の音とおやつが結びつき、「雷=嫌な刺激」が「雷=うれしい刺激」に変化。
雷が鳴っても不安になったり、パニックになったりしなくなるという効果があります。
大切なのは、条件反射が起こる一連の流れをしっかりと理解し、愛犬が学習するまで根気強く続けることです。
「パブロフの犬」のまとめ
「パブロフの犬」とは、条件反射のメカニズムを理解する代表的な実験を表した言葉です。
この実験は、本来何の反射も引き起こさない「ベルの音」と唾液の分泌が、学習によって結びつくという事例を示しました。
犬の実験に由来した言葉ですが、条件反射は私たち人間の日常生活でも見られる反応です。
また、「パブロフの犬」の意味や実験内容を理解すると、犬のトレーニングやしつけに活用することもできます。
単なる知識にとどまらず、愛犬との暮らしのさまざまシーンでぜひ役立ててみてくださいね!
この記事の監修者

鮎川 多絵 (愛玩動物飼養管理士2級・ライター)
東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。
犬と私
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。







