寝そべる白いグレートピレニーズ犬の顔のアップ

セラピードッグ」という言葉を聞いたことはあっても、実際にどんな犬のことを指すのか、盲導犬や介助犬とどう違うのか、イメージがぼんやりしている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、セラピードッグの基本から活動内容、向いている犬の特徴、実際の体験談、団体ごとの選考基準などなど、初めての方でも分かるように徹底解説します。
「うちの子もセラピードッグになれる?」「セラピードッグにはどこで会える?」という方にも役立つ完全保存版です。

この記事を書いた人

セラピードッグとは?

セラピードッグとは人々の心のケアやリハビリテーションの支援を目的に活動する犬のこと。
病院や高齢者施設、学校、被災地などで、利用者の心を穏やかにし、人々に安心感や笑顔を届けています。
人と動物のふれあい活動コンパニオン・アニマル・パートナーシップ・プログラム(CAPP)と呼ばれ、公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)は、この活動を「高齢者施設、病院、学校などを訪問し、動物のもつ温もりや優しさにふれていただくボランティア活動」と定義しています。
大切なのは、「犬が誰かの“治療”を直接行う」という意味ではなく、専門職(医療・福祉・教育など)が設計した安全な枠組みの中で、犬とハンドラー(飼い主)が“支援チームの一員”として関わるという点です。
なお、一般に『アニマルセラピー』と呼ばれる領域には、①動物介在活動(AAA: 訪問・交流中心)と、②動物介在療法(AAT: 目標や評価を伴う介入)など複数の形が含まれます。
団体や施設によって呼び方・定義が異なるため、参加時は必ず主催側の説明を確認しましょう。

盲導犬・介助犬との違い

盲導犬・介助犬・聴導犬[1]は、特定の障害のある方の日常生活を補助するための『補助犬』で、法律に基づいた育成・認定・受け入れの枠組みがあります。
一方、セラピードッグ(動物介在活動犬)は、特定の一人に付き添うのではなく、施設や学校などで複数の利用者と交流し、安心やコミュニケーションのきっかけを提供することが中心です。
つまり、補助犬は“生活の補助が主目的、セラピードッグは“交流と心の支えが主目的、と整理すると分かりやすいでしょう。
活動に参加しているのは、普段はそれぞれの家庭で家族として幸せに暮らしている動物たちです。

[1]厚生労働省「犬の種類

セラピードッグの活動場所と活動内容

セラピードッグが活躍している場はさまざまです。

  • 高齢者施設:膝に寄り添う・触れ合い・思い出話のきっかけ作り
  • 児童施設:読み聞かせ、自己肯定感の向上
  • 病院:不安軽減、入院中の孤独の緩和
  • 被災地:避難所での心のケア
  • 地域イベント:ふれあい体験、福祉啓発

たとえば、国際セラピードッグ協会では保護された犬を2年以上かけて育成し、病院・児童館・被災地などで活躍しています。
犬種や年齢を問わず「その犬の性格と人との関わり方」を最も大切にしているのが特徴です。
また近年は、医療・福祉の現場に限らず、矯正施設や少年院などでも動物介在の取り組みが行われています。
たとえば富山刑務所では、モルモットやウサギなど小動物と触れ合い、餌やりや健康チェック(聴診器で心音を聞く等)を通して表情が和らぎ、「癒やし」や「命の尊さ」を実感したという声が報告されています。
こうしたプログラムは、高齢受刑者の生きがいづくりや、再犯防止に向けた社会性の回復を支える狙いで導入されることがあります。

セラピードッグの実際の体験談

ベージュの犬が人の手にそっと鼻を寄せている

ケース①:泣いていた園児のそばに静かに寄り添う犬

幼稚園で活動するセラピードッグが、泣いている子の横にただ座り、刺激せずに寄り添ったという事例。
これは「非言語的共感行動」と呼ばれ、動物が人の情動に反応する典型例です。

ケース②:認知症の男性が久しぶりに言葉を発した

高齢者施設の訪問で、普段ほとんど話さない男性が、犬を優しく撫でながら「昔なぁ、家にもおってな……」と語り始めたという例があります。
これは回想法(Reminiscence Therapy) と動物介在療法(Animal-Assisted Therapy)の相乗効果とされています[2](Nordgren, 2014)。

[2]Nordgren, L., & Engström, G. (2014).「 Effects of Animal-Assisted Therapy on Patients with Dementia.」 Journal of Gerontological Nursing, 40(4), 10–15.

ケース③:読み聞かせで子どもの自信が向上

R.E.A.Dプログラム(Reading Education Assistance Dogs:認定されたセラピードッグの前で子どもが音読し、評価や訂正のプレッシャーを減らしながら読書経験を積む支援プログラム)に参加している児童が「犬は間違っても笑わないから安心して読める」と語った例もあり、非評価的な聴衆としての犬の存在は学習心理学的にも有効です[3](Smith, 2010)。
このように、セラピードッグに向いている犬は「人の気持ちを敏感に感じ取り、その場に合った距離感で寄り添える犬」です。これには訓練だけでは育ちきらない“持って生まれた気質”が大きく関わります。

[3]Smith, Kelly A.   Northcentral University ProQuest Dissertations & Theses,  (2010). 「Impact of animal assisted therapy reading instruction on reading performance of homeschooled students.

どんな犬が向いている?

セラピードッグといえば盲導犬や介助犬になる犬種として知られるゴールデン・レトリバーやラブラドール・レトリバーを思い浮かべる方も多いですが、実際には犬種は関係ありません。
最も重要なのは“性格”と“人を見る力”。

向いている犬の特徴

  • 人が好き、初対面でも怖がらない
  • 触られることが好き
  • 落ち着きがあり、吠えにくい性質
  • 初めての場所でも過度に緊張しない
  • 人の様子をよく観察し、その空気を読んで行動できる
  • 基本的なしつけができていて、健康である

向いていない犬の特徴(安全のための基準)

  • 触られるのが苦手
  • 吠えやすい・警戒心が強い
  • 噛みつきが出る
  • 初めての場所で強いストレスを感じやすい
  • 疾患がある/高齢で長時間活動が負担になる

※ただし、慣れ・トレーニングで改善する犬もいます。

セラピードッグ適性チェックリスト

以下は、JAHA(CAPP)/IATA/R.E.A.D./自治体と連携して活動する各団体の運用基準を参照し、共通して重視される観点を整理して作成したチェックリストです。

ワン!ポイント 用語解説

JAHA:一般社団法人 日本動物病院協会。

全国で「人と動物のふれあい活動(CAPP)」を推進し、活動動物の衛生・行動面の基準や運用ルール(感染対策等)を整備している団体。

IATA:一般財団法人 国際セラピードッグ協会。

保護犬(捨て犬・被災犬等)をセラピードッグとして育成し、病院・高齢者施設・児童施設などで動物介在の活動を行う団体。

R.E.A.D.:Reading Education Assistance Dogs(読みの支援犬プログラム)。

子どもがセラピードッグの前で音読することで、評価不安を下げ、読む経験を積みやすくする読書支援プログラム。

基本性格(必須)

以下に 7つ以上当てはまると、適性が高いといえます。

□ 人が大好きで、初対面の人にも自然に近づける
□ 子ども・高齢者・障害のある方に対して落ち着いて接する
□ 見知らぬ環境でも緊張しすぎず適応しやすい
□ 騒音や大きな物音に過度にびっくりしない
□ 他の犬に対して攻撃的にならない
□ ボディタッチ(頭・背中・足・しっぽ)を嫌がらない
□ 抱きしめられる・急に触られてもパニックにならない
□ 飼い主の指示(おすわり・まて・呼び戻し)が安定してできる
□ 長時間のサポート活動でも集中力が続く
□ 人間の表情や気持ちをよく観察し、空気を読める

健康状態(必須)

□ 年1回以上の健康診断を受けている
□ ワクチン(狂犬病など)・フィラリア・ノミダニ予防ができている
□ 重大な持病がない
□ ボディケア(爪切り・ブラッシング・歯磨き)が苦手でない

家庭での生活態度(活動前提)

□ トイレの失敗がほぼない
□ 人に飛びつかない
□ おもちゃや食べ物に強い執着を見せない
□ 物を壊す・拾い食いが少ない

向いていない傾向(注意)

下記に複数当てはまる場合、活動が難しいことがあります。

□ 大きな音・環境変化にとても敏感
□ 人に触られるのが苦手
□ 他の犬を見ると吠える or 興奮しやすい
□ ハンドラー(飼い主)に強く依存してしまう
□ 叱られると落ち込みすぎる or 逆に反抗的になりやすい

セラピードッグになるまでの流れ(国内基準版)

  1. 団体に連絡
  2. 犬と飼い主の面談
  3. 行動評価テスト(JAHA基準)
  4. 健康診断
  5. トレーニング
  6. 施設訪問の実習
  7. 正式登録・活動開始

注意点として、インターネットには「セラピードッグ資格」を名乗る民間サービスが多数存在しますが、必ずしも公的なものではありません。
必ず自治体や専門協会と連携している団体かどうかを確認したうえで申し込みましょう。

セラピードッグ団体ごとの選考基準の比較

日本で活動している主要な団体を比較しました。

📋 比較表

団体名対象犬主な基準特徴引用
JAHA(日本動物病院協会)CAPP家庭犬人が好き
しつけ
健康
攻撃性なし
日本最大規模
全国で活動
病院や施設との連携が強い
JAHA「CAPP活動ガイドライン」(2017)
国際セラピードッグ協会(IATA)保護犬
家庭犬
2年以上の専門育成
ストレス耐性
情動理解
「保護犬からセラピードッグへ」の理念
社会的使命が強い
代表大木トオル『セラピードッグの奇跡』(IATA公式パンフレット, 2020)
R.E.A.D. Japan家庭犬子どもとの相性
落ち着き
読み聞かせに適した気質
読み聞かせ支援に特化
発達支援領域で高評価
Intermountain Therapy Animals「R.E.A.D. Program Overview」(2010)[4]
自治体連携団体(例:社会福祉協議会・地方NPO)家庭犬穏やかさ
適応力
地域特性に応じた研修
地域密着
地域福祉活動の一環として運営
独自研修あり
自治体「動物介在活動ガイドライン」(例:北海道・神奈川県 2020–2023)[5]

[4]Intermountain Therapy Animals「R.E.A.D. Program Overview」(2010)
[5]東京都福祉保健局「東京都動物愛護相談センター

必須トレーニング(日本の団体基準)

JAHA(CAPP活動)

  • 基本のしつけ
  • ブラッシング・ボディタッチに慣れている
  • 車椅子・杖・医療器具に慣れるトレーニング
  • 多様な世代(子ども・高齢者)への接触練習

IATA(国際セラピードッグ協会)

大木トオル代表の方針:「保護犬を専門育成し、人間の感情を理解する力を2年以上かけて伸ばす」(IATA公式パンフレット)

R.E.A.D. Japan

読み聞かせのため、

  • じっと座っていられる
  • 子どもの動きや声に驚かない
  • ページをめくる音や身動きに反応しない

などが求められる。

セラピードッグになるための費用

団体によって異なりますが、概算は次の通りです。

費用項目金額の目安内容
健康診断(必須)5,000〜15,000円ワクチン・フィラリア検査など
しつけ教室・トレーニング10,000〜50,000円基礎トレーニング
団体の登録費用0〜10,000円団体により異なる(JAHAは年会費制)
活動時の交通費0〜5,000円/回自己負担が多い
保険加入0〜5,000円団体で加入するケースが多い

✔ 合計:1〜5万円程度(初年度)
ボランティア活動なので、基本的には自費負担が一般的です。

セラピードッグになれる年齢は?

団体ごとに基準が異なりますが、共通して以下の目安があります。

団体名最低年齢最高年齢引用
JAHA CAPP1歳10歳(健康であれば活動可能)JAHA「CAPP活動基準」[6]
IATA年齢制限なし(ただし健康必須)健康により判断IATAパンフレット
R.E.A.D. Japan1歳団体基準なし(落ち着き重視)Intermountain Therapy Animals

✔ 結論

  • 1歳以上
  • 高齢でも、健康で穏やかなら活動可能

シニア犬でも活躍する例は多く、むしろ「落ち着き」が評価されます。

[6]公益社団法人日本動物病院協会「CAPP犬認定東

セラピードッグは小型犬でもなれる?

芝生の上に座る人の膝の山をもぐろうとするふわふわの小さい犬

セラピードッグには小型犬でもなることは可能です。
JAHA・R.E.A.D.・自治体団体すべてで、犬種・体格の制限はありません。
体格によって、それぞれに適した役割があります。

小型犬が活躍しやすい場面

  • 膝の上で寄り添う
  • 子どもとの読み聞かせ
  • ベッドサイド訪問

大型犬が活躍する場面

  • 歩行支援(軽度)
  • ハグや寄りかかりで安心感を与える

セラピードッグは給料をもらえるのか?

✔ 基本:無償ボランティア活動
JAHA・IATA・R.E.A.D Japan いずれも報酬は発生しません。

セラピードッグをボランティアとして始めるには?

日本で最も一般的な流れをご紹介します。

【STEP 1】団体に問い合わせる

おすすめの団体は以下です。

  • JAHA CAPP
  • R.E.A.D. Japan
  • 自治体の動物介在団体

【STEP 2】犬と飼い主の面談

以下を確認されます。

  • 性格
  • 他犬・他者への態度
  • 健康状態
  • しつけのレベル

【STEP 3】適性テスト(団体基準)

例:車いす・杖・音に対する反応、触られ方への耐性など。

【STEP 4】トレーニング・講習

ハンドラー講習も含みます。

【STEP 5】施設での実習

ベテランハンドラーと同行します。

【STEP 6】正式登録 → 活動開始

登録されて、活動を行うことができます。

セラピードッグに会ってみたい人へ

「まずはセラピードッグに会ってみたい」という方は、各団体が開催する公開イベントや施設訪問の見学会に参加するのがおすすめです。
JAHAや国際セラピードッグ協会のイベントは一般参加が可能で、犬たちの落ち着いた振る舞いに驚く方も多くいます。
実際の活動を見れば、「うちの子に向いてる?」「活動ってどんな雰囲気?」がよく分かります。

JAHA(日本動物病院協会)CAPP活動

対象犬:家庭犬
特徴:日本最大規模・医療施設との連携多数

国際セラピードッグ協会(IATA)

対象犬:保護犬・家庭犬/2年以上の専門育成
理念:保護犬からセラピードッグへ

R.E.A.D. Japan(読み聞かせ支援セラピー)

対象犬:家庭犬
特徴:読み聞かせ支援・学校・図書館で活動

自治体/地域密着団体(例:社会福祉協議会・動物愛護センター)

対象犬:家庭犬
特徴:地域密着、独自基準あり

代表的な例:

まとめ

セラピードッグは、「そばにいるだけで人の心を軽くする力を持った犬」 です。特別な犬種である必要はなく、

  • 人の様子をよく見て
  • その場の空気を感じ取り
  • 必要な距離感で寄り添える

という“共感的な気質”を持つ犬なら、家庭犬でも大いに活躍できる可能性があります。
「うちの子も向いているかも」と感じたら、ぜひ一度、信頼できる協会や団体に相談してみてください。
犬と人が互いに支え合う素晴らしい活動の一歩につながるはずです。

この記事の監修者

吉田 亜里咲 (公認心理師・臨床心理士)

1991年7月生まれ、大阪府出身。鳴門教育大学大学院修士課程修了。公認心理師・臨床心理士。高知県教育委員会人権教育課にてスクールカウンセラーを務めながら、心療内科「らくだクリニック」、就労支援事業「ジョブカフェこうち」での相談支援に従事。その後、カナダに単身社会人留学で依存症ケアについて学ぶ傍ら、カナダ政府の事業にて自閉症児への訪問支援を行い、行動介入士としての経験を積む。現在は、マインドウェル株式会社にてカップルセラピストとして活動し、関係改善をサポートしている。

資格
公認心理師臨床心理士

その他
依存症ケアワーカー(カナダ)修了

 この記事の監修者

鮎川 多絵 (愛玩動物飼養管理士2級・ライター)

東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。

犬と私
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。

HP/SNS
instagram note 

資格
愛玩動物飼養管理士2級 防災コーディネーター 学芸員 登録日本語教員

この記事を書いた人

あーりー

大阪生まれ。小学生のころからメンタルヘルスに興味を持ち、真っ直ぐその世界へ。心・食・体はつながっている!をモットーに、美味しい物と運動で日々セルフケアに励んでいます。

昔から「なんか犬っぽいよね」と言われることが多いです。「人懐っこい」「素直」「楽しいときはすぐわかる」とか。たしかに、誰かといるとテンションが上がるし、ごはんの時間はすごく楽しみ。見ているだけで「まあ、いろいろあるけど、楽しく生きていこう」と思わせてくれる存在って最高のヘルスサポーターだなと憧れます。

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