ぬいぐるみをくわえた犬

愛犬が何かを飲み込んでしまった!

散歩中に落ちていたごみを食べちゃった!

犬は狩猟本能の名残から、目の前の物を「食べられるかどうか」試す習性があります[1]

強い興味から特に子犬や若い犬は何でも口にしてしまうことが多く、性格によって拾い食いしがちな子もいます。

誤飲・誤食したものによっては、犬の体に危険なもの、緊急を要するものがあります

飼い主さんは、愛犬が誤飲・誤食をしてしまうと慌ててしまいますよね。

そして何かできることはないだろうかと応急処置の方法を探すでしょう。

塩水を飲ませて吐かせる?マッサージをしたら出てくる?

対処方法はいろいろいろいろと耳にしますが、本当に正しいのでしょうか

飼い主さんが、どのように対処するべきか解説します。

[1]吉田動物病院 獣医師コラム【獣医師監修】愛犬の誤飲誤食を防ぐ対策とは?盗み食いのリスクと予防法を解説

この記事を書いた人

犬の誤飲・誤食のサインと飼い主さんの確認ポイント

少し目を離した隙に落ちていたボタンを食べちゃった

家に帰ったらぼろぼろのクッション。愛犬の口には綿が。もしかして食べてしまった?

散歩中に落ちていたプラスチック製のものを食べてしまった……

など、好奇心旺盛な犬と暮らしていると飼い主さんは焦ることが多くなるかもしれません。

このように、犬が何かを誤飲・誤食してしまった際、どのように確認してどう対処すべきなのでしょうか?

飼い主さんは落ち着いて確認しよう

目を離している時に愛犬が何かを食べてしまったようだという話をよく聞きます。

しかし冷静になって犬の周囲を確認したら、

ソファー下から誤飲したと思っていたボタンが出てきた!

なんてこともよくあるようです。まずは犬が本当に何かを飲み込んでしまったのか?食べてしまったのか?飼い主さんは落ち着いて状況を把握しましょう。

犬の体調の変化をよく観察し、もともとの住環境の様子を思い出してみてください。

実は何も飲み込んでいないのに、飼い主さんの勘違いで病院の処置を行うと、犬の心身に負担がかかってしまうこともあります。

本当に誤飲・誤食をしたのか確認をして、何を飲み込んだのか明確であれば病院で状況をしっかりと伝え、不明確で不安な場合には、その旨もきちんと伝えて獣医師に判断してもらいましょう

誤飲・誤食をしたときの犬の状態

犬が誤飲や誤食をした際には、以下のような症状がみられる場合があります。

  • 嘔吐
  • よだれが多く出ている
  • 下痢
  • 元気がない
  • 便秘
  • 異常を感じる咳
  • 血便
  • ゲップ
  • ぐったりしている
  • 落ち着きがない
  • 呼吸が荒い
  • 呼吸困難などの異常
  • 体の震え

犬の様子を注意深く観察してみてください。

無症状でも、部屋の様子や家具などの物に何らかの変化があると思えば、誤飲の可能性があるため、早めに動物病院に行って獣医師に診てもらいましょう

危険な誤飲・誤食

座ってこちらをじっと見つめる犬

犬が誤飲・誤食をすると非常に危険なものもあります。

特に家の中で注意するもの、散歩中に注意するものに分けて一例をご紹介します。

家の中で注意すべきもの

家の中では、以下のものを中心に注意を払うようにしましょう。

注意するもの起こり得る症状など
犬のおやつ硬い骨などのおやつは、実は喉に詰まらせることが多くあります。犬種や体格、年齢に合わないおやつをあげることは避けましょう。例えばシニア犬に硬いおやつをあげたり、小型犬に大きな形のままあげるのは危険です。
布製品
ぬいぐるみ
小さなボール
おもちゃ
喉や消化器官などに詰まる危険があります。
爪楊枝
ヘアピン
ネジ
画びょうなど
尖ったものは消化管や内臓を傷つける恐れがあり、危険です。
人間の薬など多量の薬で体調不良になり、命に関わる危険があります。
乾燥剤
防腐剤
殺鼠剤
乾燥剤と防腐剤はそれぞれの中身によって症状は異なりますが、飲み込んでしまって体の中で発熱するもの、腐食するもの、粘膜がただれて出血するものなどそれぞれに危険です。殺鼠剤も大変危険なものです。
玉ねぎなどのネギ類
ナス科野菜(じゃがいも、トマト)
チョコレート
キシリトール
ぶどう・桃・梅・アンズ・アボカドなど
犬には毒性が強い食べ物なので決して食べさせないでください。ここであげている食べ物以外にも中毒症状を起こす食べ物があるので注意してください。
魚介類生のタコやイカ、エビ、カニや貝類(ウニなど)は、ビタミンB1欠乏症を発症し、脳や神経系に障害が起こります。与えないようにしましょう。
アルコールお酒などを舐めさせないように注意しましょう。犬は人間と違い、アルコールを分解することができません。臓器や脳への悪影響があり、重篤な場合には命に関わります。
おむつ
サニタリー用品
ペットシーツなど
おむつやサニタリー用品、ペットシーツは表面は不織布などでできており、中身は高吸水性ポリマーという塩粒のような粉末でできています。これは水分を含むと物凄い量の水を吸着してゲル化します。かなり膨張しますので誤って食べてしまうと腸閉塞をおこしたり、胃の中に詰まり嘔吐を繰り返すなど非常に危険です。おむつを丸ごと1つ食べてしまう事例は、小型犬では少ないですが、大型犬では起こり得ることです。処理の仕方や普段の扱い方には要注意です。

散歩時に注意すべきもの

散歩時は、以下のリストを中心に外での拾い食いに注意しましょう。

注意するもの起こり得る症状など
他の犬や動物の便、動物や昆虫の死骸寄生虫や感染症にかかる危険があります
除草剤がついた植物、毒物激しい嘔吐や痙攣、中毒症状となり、命に関わります
観葉植物(アロエやアジサイ)
スイセンやチューリップなどのユリ科植物
中毒を引き起こす可能性がありますので植物にも十分に注意しましょう
タバコ タバコに含まれるニコチンは中毒症状や死の危険があります。脊髄、自律神経、消化器官にさまざまな症状が現れます。水溜まりに落ちているタバコはニコチンが水に溶けだして内臓への吸収がより早く危険です
生ごみなどのごみバクテリアやカビにより健康被害の恐れがあります
ガラスなど尖ったもの 内臓などを傷つける危険があり、無理に吐き出させると消化器官も傷つけてしまい危険です
プラスチック、ビニール袋窒息の危険や異物による体調不良
葉っぱ(除草剤など)食べてはいけない植物の葉、または除草剤がついていた場合に中毒症状を引き起こします
石、果物の種など消化できず腸に詰まってしまう危険があります

家の中は日頃から掃除を心掛け、何か落ちていないか愛犬がいたずらしやすいものはないか確認しておくようにしましょう。

散歩中に犬が下を向いて何かを探している時には、飼い主さんも地面をよく見ること、散歩コースに危険なものが落ちていないかよく見ておくようにしましょう。

応急処置・吐かせる方法

茶色いブランケットに包まれた犬

実際に誤飲・誤食をしてしまい応急処置をする場合、どうしたらよいのでしょうか。

飼い主さんが吐かせたほうがよいのでしょうか?

また、吐かせる方法としてよく聞くものは正しいのでしょうか?

結論から言うと、すぐに病院に連れて行くことが何より大切です。

判断に迷う場合には、かかりつけの獣医師に連絡をとり、正しい処置の指導を仰ぎましょう。

獣医師より来院を勧められたら速やかに連れていきましょう

時間帯によっては、救急の獣医師もいますので普段から近くにいるかどうか調べておくのもよいですね。

では、応急処置の方法をいろいろと耳にすることがありますが、それが正しいものなのかどうか以下でご紹介いたします。

マッサージで吐かせるのは正しいのか?

結論から述べると、マッサージで吐かせる行為はやめましょう

万が一、竹串や針といった鋭利なものを飲み込んでしまった場合、無理なマッサージによって犬の内臓、食道や胃の粘膜を傷つけてしまう危険もあります。

塩水を飲ませると聞いたことがある?

食塩水を飲ませて吐かせる方法はやめましょう

塩分を過剰摂取したことにより塩中毒を引き起こすことがあります。

吐かせる処置は獣医師に任せましょう。

オキシドールを飲ませて吐かせるのは正しい?

獣医師によっては犬の消化器官へのダメージが大きいと判断して使用しないところもあります。

オキシドールで胃の粘膜がただれ、重度の潰瘍ができてしまいます

安易な自己判断での使用は逆効果です。避けた方がよいでしょう。

喉につまったものをピンセットなどで取ってもよい?

犬のおやつが喉に詰まってしまう事故は多くみられます。

何よりも喉に詰らせないこともが最も大切ですが、万が一詰まってしまい口の中を覗いて見える場合にはピンセットで取り出す応急処置もあります

しかし、犬の頭を上に向かせて取ろうとすると、詰まったものがさらに中に入ってしまう可能性があるのです。

飼い主さんが自ら下から犬の口を覗く姿勢となりできたらライトで照らしながら行うとよいでしょう。

しかしこの場合、喉に詰まらせた犬もパニックになっていることが多く、誤ってピンセットなどで口の中を傷つけてしまったり、飼い主さんがかまれてしまったりする可能性があります。

犬の様子、状況を見て無理には行わず、可能であればすぐに病院に連れていきましょう 

正しい応急処置の方法

何を飲み込んだか、犬がどのような状態であるかは、その時のその子の状況によって異なります。

まずは専門知識を持つ獣医師に、必ず診せるようにしてください。

獣医師の判断なしに飼い主さんが自力で吐かせようとすることはとても危険です。

無理に吐かせようとすることで、かえって犬が命の危険にさらされることがあります。

かかりつけの病院や夜間であれば救急に連絡をして連れていきます。

ワン!ポイント

獣医師に伝えることは以下の通りです。

  • 【何を】誤飲・誤食してしまったもの
  • 【いつ】どの時間どのくらい前か
  • 【どのくらい】量やサイズをどのくらい食べたか

破片・吐き戻したものがあるなら持参することや犬の様子など吐いたものを動画や写真に撮るという手段もあります。

どのような場合にも、まずは状況を見てすぐに病院に連れていきましょう。

日頃からの注意点

ケガをした犬のぬいぐるみ

何よりも犬に危険となるものが落ちていないことが大事であり、拾い食いをさせないことが危険を回避する方法です。

ワン!ポイント

予防法として以下のことを心掛けて、実践してみてください。

〇犬が普段過ごしている場所、部屋、行動範囲には口にしそうな異物を置かない

部屋は綺麗に掃除をすること。整理整頓をして環境を整えましょう

〇犬が漁ってしまうごみ箱・おもちゃ箱は、犬の視界や手・口が届かないところに置く、またはふたをするなどあらかじめ防ぐようにしましょう

〇犬の年齢や体格、性質を考慮して誤飲しそうなおもちゃ・おやつは与えない

〇散歩時は、飼い主さんもよそ見(スマートフォンを見るなど)をせず、散歩コースをしっかりと確認するようにしましょう。よそ見は誤飲・誤食だけでなく、交通事故のリスクも高くなります。

鮎川多絵

愛犬との外の散歩は気持ちのよいものですよ!

〇何でも拾い食いをしてしまわないためにも、しっかりとしつけをすることも重要です。家庭内で「待て」や「よし」などの指示を聞くようにする訓練をしましょう

〇緊急時に受診できる病院、獣医師をメモしておきましょう。このとき、夜間でも受診可能な病院の連絡先もあるとよいでしょう

しつけのこと

訓練は子犬の頃から始めるのがよいとされていますが、成犬であっても毎日訓練をすることで慣れてくれる子もいます。

しつけ教室なども地域で開催していたり、専門家もいますので相談してみるのもよいかもしれません

まとめ

抱きしめられて笑顔の犬

誤飲・誤食時には速やかに獣医師に連絡し、診察を受けることが大事です。

飼い主さんの誤った判断で大切な愛犬が苦しい思いをしないようにしましょう。

大事な家族がいつまでも元気に楽しく過ごしてくれることが一番ですよね。

日常におけるちょっとした不注意が、残念な結果を招くこともあるものです。

そのようなことにならないよう、大切な家族を守れるのは自分なのだと、日頃から心掛けておきたいものですね。

 この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)

国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。

資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級

この記事を書いた人

鮎川多絵

東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。

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