茶色と白の犬が首をかしげながらこちらを振り返っている。

今、海外でも人気といわれる日本犬。その種類をどのくらい知っていますか?

大きさも、性格も、毛色もさまざまですが、よくいわれる特徴は飼い主への忠誠心があり、頑固な一面もあるけれど、そこがたまらなくかわいい!…と、いったところでしょうか。

この記事では日本犬についてたっぷりとご紹介します。日本犬に詳しくなって、もっと好きになるかもしれません!

この記事を書いた人

日本犬とは何か?

雲の上の岩山に立っている白と茶色の日本犬。

日本犬のルーツ

日本を原産国とし、古くから日本に住む犬種の総称のことを「日本犬」と呼びます。「和犬(わけん)」という言い方も同義で使われます。(⇔西洋品種の犬を指す「洋犬」)

そもそも犬は、人類が最初に家畜として飼い始めた動物ともいわれています。日本でも、縄文時代の遺跡から、埋葬されていた犬が発見されています。
今から1万2000年ほど前の縄文時代から、人間と犬が非常に密接な関係であったことが分かり、この時代にいた犬を「縄文犬」といいます。
現在の柴犬ほどの大きさだったといわれています。体の大きな動物、例えば鹿やイノシシを狩るための狩猟犬として飼われていたようです。
縄文犬のルーツは、東北アジアから現在の韓国に移動した犬がさらに日本に渡ってきたといわれています。
ただし、現在の日本犬を調べると、東南アジアの犬と同じ型の遺伝子を持つ個体もいるため、ルーツは1つに絞れません。

弥生時代から江戸時代の日本犬

弥生時代から現在に至るまで、犬にとっては多くの苦難もありました 。6世紀に入って仏教が伝来すると使役犬として飼われることがあり、奈良から平安時代には貴族の狩猟犬として、また番犬として飼われていたようです。
鎌倉時代から江戸時代にかけても、愛玩動物というよりも主に使役犬としての役割が大きかったのですが、江戸時代5代将軍綱吉によって「生類憐みの令」が発令され、犬に対する手厚い保護政策がとられました。
天下の悪法ともいわれることがありますが、これがきっかけとなり、人々の犬への意識が変わったことも否めないでしょう。江戸時代後期の裕福な人々の間では、犬は愛玩動物として飼われることもあったそうです。

明治維新後の日本犬

明治維新後には、西洋の文化や品々が流入し、それに伴い日本人の価値観も変わっていきます。
西洋から来た犬を洋犬と呼びますが、この洋犬が本格的に日本に入ってきたことで、犬は放し飼いではなく、ペットとしてリードで繋いで飼育するという考えが生まれるようになりました。
その後は、数々の世界大戦へと突入することで再び犬にも苦難が到来します。
第二次世界大戦後には、再び洋犬が流入し、ペットを飼うということが一般的となりました。1973年には「動物愛護法」(「動物の保護及び管理に関する法律」)が成立し、虐待が禁止されるなど、犬への対応も少しずつ変わっていきました。
現在、多くの一般家庭で愛される存在となった犬の歴史は、振り返れば苦難の連続だったことがわかります。

※1973年「動物愛護法」は、現在の「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)へと名称が変わりました。

代表的な日本の犬種

千本鳥居を赤い和傘をさしながら歩く着物の女性の後ろ姿。

日本犬の中には、よく見かけたり、聞いたことがあったり、また映画の題材となり私たち日本人に馴染みのある犬種が全部で6種類います。さらに、聞いたことはあるけれど、昨今はなかなかお目にかかれない日本の犬種もいます。よく知る6種類と珍しい犬種も併せて、それぞれの特色をご紹介しましょう。

馴染みのある日本犬6種類

ご紹介する6種類は、国の天然記念物に指定されており、皆によく知られた馴染みある日本の犬です。

ワン!ポイント <天然記念物とは>

動物・植物・地質鉱物の3種類において、日本で学術上の価値が高いもののことをいいます。絵画や音楽などと並び、文化財のひとつという括りで、更にその中の「天然(自然)のもの」という分け方をされています。

秋田犬

紅葉した木々をバックにこちらを見ながら座っている赤い首輪をつけた日本犬。
天然記念物指定年度   昭和6年
サイズ大型犬
毛色赤、白、虎、胡麻
体格体高:オス63.5~69.9㎝ メス57.2~63.5㎝ 体重:オス39~59㎏、メス27~50㎏
気質大変勇敢で賢い性格。飼い主に忠実です。『忠犬ハチ公物語』の主人公も秋田犬でした。

甲斐犬

黒と茶色が混ざった毛並みの甲斐犬の顔のアップ。
天然記念物指定年度      昭和9年
サイズ中型犬
毛色毛色は「甲斐虎」ともいわれ、虎毛。色調の濃淡で、黒虎・中虎・赤虎毛に分けられます。
体格体高:オス52㎝ メス49㎝ 体重:オス13~18㎏ メス11~15㎏
気質甲斐犬は、警戒心があり、初対面の人や犬、他の動物に敏感に反応します。しかし、飼い主にはとても甘える可愛い一面があるのです。猟犬として働く甲斐犬もいます。気性の強さも重要として繁殖されています。

紀州犬

白い紀州犬が人の前に立っている様子。

(『一般社团法人天然記念物紀州犬保存会 』様より写真ご提供 @kishu_dog_hozonkai

天然記念物指定年度      昭和9年
サイズ中型犬
毛色多くが白毛、わずかに赤毛・胡麻毛の有色犬がいる
体格体高:オス49㎝~55cm メス46cm~52㎝体重:オス17kg〜23kg メス体重:15kg〜18kg位
気質警戒心がやや強く、飼い主さん以外には慣れない一面もあります。とても落ち着いた性格で、真面目、忠実さがあります。好奇心旺盛で指示をしっかりと聞き分ける高い理解力を持っています。
ワン!ポイント 〈もっと知りたい!紀州犬〉
舌を出しながら立っている白い紀州犬のアップ。

天然記念物の紀州犬の保存活動を行う一般社団法人天然記念物紀州犬保存会(てんねんきねんぶつきしゅうけんほぞんかい)。現在SNSでも「多くの方に紀州犬を知ってもらいたい」と発信をしていますので、ぜひチェックしてみてください!
Instagram:@kishu_dog_hozonka

☆紀州犬の顔☆直立した小さめの耳に、広い顔。そして何より目が特徴的です。これは「ハマグリの目」ともいわれ、目頭から目尻にかけ下側にわずかに弧を描く形は他の日本犬にはない紀州犬の特徴とされています。

引用:公益財団法人 日本犬保存会「紀州犬

四国犬

モノクロの空間にいる白と黒と茶色の毛並みの四国犬
天然記念物指定年度      昭和12年
サイズ中型犬
毛色一般的に胡麻毛が多い。その中に赤胡麻・黒胡麻と区別している
体格体高:オス49cm~55cm メス46cm~52cm体重:オス17㎏~23㎏ メス15㎏~18㎏
気質飼い主さんにはとても忠実な性格です。しかし、それ以外の人にはなかなか慣れません。勇敢で冷静、状況判断の適格性に優れており、むやみに興奮することがありません。猟犬気質があり、闘争心があります。

柴犬

青空の下、自然の中のベンチの上で楽しそうにこちらを見ている黒の柴犬と茶色の柴犬。

(『黒柴豆と茶柴空 』様より写真ご提供 @mamesola_a)

天然記念物指定年度     昭和11年
サイズ小型犬※
毛色赤・白・黒・黒胡麻・赤胡麻
体格体高:オス39.5cm前後 メス36.5cm前後体重:オス10kg前後 メス8kg前後
気質飼い主さんと、程よく距離をとり、独立心も強いものの、甘えることもあります。柴犬は日本人には最もポピュラーで、馴染み深い犬種かもしれません。
ワン!ポイント 〈もっと知りたい!紀州犬〉
車の中で歯を見せながらニコニコしている茶芝の空ちゃん。
自然の中で口角を釣り上げて笑っている黒柴の豆ちゃん。

Instagramで綺麗な背景と共に柴犬の魅力を発信する『黒柴豆と茶柴空』さん(アカウント:@mamesola_a)。2匹はご近所のお友達なんだそうです。とても仲が良いため、よく遠出をして海や川、山を訪れて四季を楽しんでいるそうです。素敵な写真をたくさん載せていますので、ぜひ1度アカウントをチェックしてみてはいかが?(写真:左は茶柴の空ちゃん、右は黒柴の豆ちゃん。ユーモア溢れる表情で思わず笑わせてくれます!)

北海道犬

砂の上に白い円が描かれており、その中に人と一緒に入っている真っ白な北海道犬。

(『一般社団法人 天然記念物 北海道犬保存会』様より写真ご提供

天然記念物指定年度      昭和12年
サイズ中型犬
毛色赤毛が多い。白毛・黒毛・胡麻毛・虎毛と日本犬の中でさまざまな毛色をもつ犬種
体格体高:オス52cm メス49cm体重:オス20kg前後 メス15kg前後
気質日本犬の中でも、この北海道犬は聴覚や嗅覚が優れています。更に、警戒心も強く、周りの状況をよく察知します。気質は荒い面もありますが、飼い主さんにはとても従順で、勇敢、忠誠心がある日本犬です。

※北海道犬保存会さんのWebサイトもぜひご覧になってみてください

ちょっと珍しい日本犬5種類

聞いたことはあるかもしれない5種類ですが、なかなか実際にお目にかかることがないかもしれません。少し珍しい日本の犬をご紹介しましょう。

狆(ちん)

芝生の上で寝そべっている銀の首飾りをつけた白と黒の狆。
サイズ小型犬
どんな犬?   日本で初めて、外来犬との交配で生まれた日本原産の犬です。「狆(ちん)」という犬種名は、「ちいさいいぬ」という意味をもち、段々と呼び方が縮まり「ちぬ」「ちん」となっていったといわれています。奈良時代732年に韓国から日本の宮廷に送られた犬が、狆の祖先といわれています。

土佐犬

モノクロの背景の空間で立っている皮膚が少したるんだ茶褐色の土佐犬。
サイズ大型犬
どんな犬?   【犬種名】土佐犬は、実は現在の四国犬を指す犬種名でした。しかし、犬種名が紛らわしく、四国犬が土佐以外の地域にもいたということから変更されました。現在は「四国犬」と「土佐(闘)犬」と区別されています。土佐犬は、「土佐闘犬」「ジャパニーズ・マスティフ」とも呼ばれています。マスティフなどの洋犬の血が混ざっていることが、「ジャパニーズ・マスティフ」と言われるのですが、日本原産の犬なのです。
【性質】土佐闘犬ともいわれる通り、闘犬のイメージが強く怖いという印象を持つ方もいるかもしれません。しかし、土佐犬は用心深く勇敢な性格である一方、とても愛情深く、信頼関係を築いた相手と絆を結ぶことができます。もちろん、その気質からきちんとした社会化とトレーニング、また飼い主自身の飼い方もきちんとしていなければ、思わぬ事故に繋がります。トレーニングはかかせません。

※闘犬:日本では、一部の自治体の条例によって闘犬を禁止しています。東京都・神奈川県・福井県・石川県では条例によって「闘犬、闘鶏、闘牛など動物を互いに闘わせてはならない」と定めています。

日本テリア

モノクロの背景の空間で立っている、顔は真っ黒、他は真っ白の毛並みを持つ日本テリア。
サイズ小型犬
どんな犬?   18世紀に、ヨーロッパから日本に持ち込まれたスムース・フォックス・テリアを、日本にいた小型犬と交配されたことで誕生しました。交易船の中でネズミ捕りをする役割がありました。その後は、横浜や神戸などの港町で愛玩犬となりました。戦争の影響もあり、飼育数は減り、戦後は洋犬ブームのためどんどん数を減らしていきました。現在は希少犬種となっています。日本テリアの犬種名は、「ニッポンテリア」「コウベテリア」「ミカドテリア」「お雪テリア」などの愛称を持ちます。アメリカの大財閥モルガン家の息子・ジョージモルガンの妻の名がお雪であったため、ここからお雪テリアと呼ばれたそうです。

日本スピッツ

穏やかな日差しの中、お座りしながら少し首をかしげている真っ白の日本スピッツ。
サイズ中型犬
どんな犬?1920年頃、シベリア大陸を経由して、中国東北地方から日本に来た大型の白いジャーマン・スピッツが起源とされています。その後の1925年にカナダから2組の白いスピッツが輸入され、また1936年頃までカナダ・アメリカ。オーストラリア・中国の各大陸から輸入され、その子孫により改良され、繁殖が行われました。尖った鼻、三角形の立った耳、何より純白のふさふさとした毛と尾が特徴です。

 グレートジャパニーズドッグ(アメリカンアキタ)

暖色系の街灯がともった冬景色の中、舌を出しながらお座りしているグレートジャパニーズドッグ。
サイズ大型犬
どんな犬?   1936年、ヘレンケラーが来日し、秋田県を訪問した際に、当時の文部省が2頭の秋田県の子犬を送ったそうです。アメリカに連れ帰ったその秋田犬が、グレートジャパニーズドッグといわれる犬種の最初です。第二次世界大戦時には、軍用に毛皮が必要とされていたが、軍用犬のジャーマン・シェパードのみ対象外でした。秋田犬の愛好家たちが捕獲を逃れるために、愛犬にジャーマン・シェパードを交配するなどしたそうです。その後、アメリカの土地に合うように改良されたのが、現在のグレートジャパニーズドッグの姿です。勇敢な気質を持ちつつ、他の犬に攻撃的な面があるので注意。人に対しては優しく、敏感で家庭犬として多くの人に愛されています 。
ワン!ポイント 数えきれない日本犬の種類

実は、日本犬の種類は細かくご紹介すると数えきれないほどいるのです。「川上犬」「薩摩犬」「美濃柴犬」などなど。皆さんも初めて聞いた犬種名があるのではないでしょうか。これらの犬種を「地犬(じいぬ)」といい、特定の地域のみに生息する日本犬のことを指します。この地犬はかつての日本に多く存在していました。それぞれ固有の特色を持ち、地域ごとに保存活動が続けられたり、天然記念物に指定されている犬種もいましたが、絶滅してしまったり、今では見られなくなってしまった地犬もいます 。 

【地犬の犬種名を一部ご紹介】
〇川上犬(長野県)・・・天然記念物に指定
〇肥後狼犬(熊本県)
〇琉球犬(沖縄県)・・・天然記念物に指定
〇十石犬(群馬県、長野県)
〇美濃柴犬(岐阜県)
〇信州柴(長野県)・・・現存するほとんどの柴犬のルーツ
〇山陰柴犬(鳥取県、島根県)
〇岩手犬(岩手県)
〇三河犬(愛知県)
〇薩摩犬(鹿児島県)
〇大東犬(沖縄県)

日本犬の特徴とは?

赤く色づいた葉が舞い落ちる中、斜め上を見ながら佇んでいる日本犬。

日本犬の特徴

遥か昔から、日本の犬たちは番犬、猟犬として活躍していました。人懐っこいと言われることが多い洋犬と比べて、警戒心と自立心が強く、飼い主さんだけに従順な気質を持つ犬が多いといわれています。そのようなことから、しつけが難しく、犬の飼育初心者には難しいともいわれることがあります。もちろん、性格には個体差があります。

先に紹介した天然記念物に指定されている6種(秋田犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬、柴犬、北海道犬)の外見上の共通の特徴としては、「立ち耳」「巻き尾または差し尾」があります。がっちりとした体格に三角の立ち耳とくるっと巻いたシッポは、世界中で愛される姿なのです。

ワン!ポイント 日本犬の特徴まとめ

●神経質・警戒心・自立心が強い 
●飼い主さんへの従順な気質・忠誠心がある

シッポの豆知識

巻き尾

シッポがくるくるっと巻いている日本犬をみかけることがあるでしょう。見た通り、くるくる巻いているのは「巻き尾」と言われています。更に巻き尾の中でも、シッポが背骨の位置から右か左向きかによって、右巻き、左巻きという違いもあります。巻き尾は巻き尾でもシッポの先がさらに一周していると「右二重巻」「左二重巻」ともいわれています。

中には巻き尾が右でも左でもなく、背骨の上に乗っている「車巻」、シッポの巻が弱く先端が体から離れている「半巻」というのもあります。

右巻きのしっぽを解説したイラスト
左巻きのしっぽを解説したイラスト
右二重巻きのしっぽを解説したイラスト
左二重巻きのしっぽを解説したイラスト
車巻きのしっぽを解説したイラスト
半巻きのしっぽを解説したイラスト

差し尾

犬を横から見て、シッポの先端が背中につかず、半円にもなっていないものを「差し尾」と呼びます。

差尾の形状を解説したイラスト

太刀尾

古来に犬に多くいたとされる「太刀尾」。その名の通り、刀のようにピンと立った形をしています。山陰柴犬に多いといわれています。

太刀尾の形状を解説したイラスト

                             各尻尾のスケッチ画:鮎川

床に寝そべったグレートピレニーズの顔の拡大写真。
ぼんじょび

これできみもお尻マニア&尻尾マニアっすね!

知ってた?柴犬の顔には種類がある?

茶色のきつねがじっとこちらを見つめている様子。
緑生い茂る空間できょとんとこちらを見つめているたぬき。

国内・海外問わず人気のある日本犬。中でもとりわけ人気の犬種は柴犬といってもいいでしょう。ご近所でもよく見かけることはありませんか?ピンと立った耳に、キュッとした鋭い目、くるっと巻いた尾。日本犬種の中でも小柄ながら、その凛々しい立ち姿と愛くるしさに胸を打たれる人は多いのではないでしょうか。

そんな柴犬には、キツネ顔とタヌキ顔に顔のパターンが分けられるのを知っていましたか?

ここでは、それぞれのパターンの特徴をご紹介します!愛犬が柴犬という方は、ぜひ「うちの子」がどちらなのか判別してみてくださいね。

キツネ顔の特徴

●面長な輪郭でシャープな顔つき
●野性的でキリっとした雰囲気
●額が浅い
●歯が比較的大きくワイルド
●細めで引き締まった体型

縄文柴の骨格を継いでいる。また、地犬の中の「山陰柴」もキツネ顔をしている。

タヌキ顔の特徴

●輪郭が丸みを帯びていて、目・鼻が丸く可愛い顔立ち
●首が太く、短め
●体格も筋肉質で骨格がしっかりとしている
●全体的に丸い雰囲気

弥生柴または新柴犬という「縄文柴」から派生した柴犬のタイプの姿を受け継いでいる。地犬の中では「信州柴」「美濃柴」もタヌキ顔。

紫のアジサイをバックに、水色とピンクのリードをつけておすわりしている日本犬。

飼い主さん曰く、空ちゃんは「キツネ顔」、豆ちゃんは「タヌキ顔」の柴犬なんだそう…。(『黒柴豆と茶柴空』さん@mamesola_a の2匹のうちの空ちゃん)

日本犬保存活動と課題

薄茶色の大きな日本犬と小さな茶色の日本犬がほほを寄せ合っている様子。

1928年(昭和3年)に、日本犬保存会が創設されました。さかのぼって明治時代には、海外から数多くの洋犬が日本国内に輸入され、日本犬との交雑種が急激に増えてしまいました。また、その後の第二次世界大戦での軍用の毛皮供出などにより、犬が犠牲となる非常に辛い時代を迎えます。このことから、日本犬は絶滅の危機となりました。

その状況に日本犬を守ろうと立ち上がったのが斎藤弘吉氏でした。斎藤氏は、かの有名な渋谷駅で飼い主を待ち続けたハチ公を世の中に知らしめた人物です。斎藤氏が中心となり日本犬保存会が発足しました。保存会では、日本全国の純血の日本犬を探し、「日本犬標準」となる犬種の特徴を定めました

この活動から、日本犬6種(本記事『2.代表的な日本の犬種』参照)が天然記念物に指定され、種の保存へと繋がりました。現在も日本犬の貴重な血統が守られる活動が続けられています。

ワン!ポイント 〈どんな人物?ハチ公を有名にした斎藤弘吉〉

斎藤弘吉(さいとう ひろきち)は、1899年に山形県で生まれ、日本犬の研究や動物愛護活動に尽力した学者であり芸術家。1964年に亡くなるまでの間、日本犬の保存活動に尽力し、日本犬保存会の初代会長を務めました。渋谷駅に毎日通う老犬ハチのことを朝日新聞に記事を投稿したことで、「ハチ公」が世に知られることになったのです。その他にも、第1次南極地域観測隊の『タロとジロ』などの樺太犬救出のために尽力した事でも知られています。

最後にちょこっと小話♪ 世界中を感動させた『忠犬ハチ公』

人々の待ち合わせ場所となっている忠犬ハチ公像

世界で最も有名な日本犬。それはもしかしたらあの秋田犬かもしれません。

『忠犬ハチ公物語』の主人公ハチの飼い主への忠誠と愛情は、多くの人に語り継がれ、映画にもなりました。現在は、世界中から人々が観光に訪れる渋谷駅前の銅像にもなった、とても有名な秋田犬です。

忠犬ハチ公の物語とは

秋田犬のハチは、秋田県大館市で生まれました。生後50日で鉄道に運ばれて東京までやってきたのは1924年1月のことでした。犬が大好きだった東大農学部の教授 上野英三郎博士と共に暮らし、大変可愛がられていたそうです。
子犬のハチは体が弱く、上野先生は自分のベッドに寝かせることもあったそう。大学で教鞭をとる上野博士は、大学や渋谷駅にハチを送り迎えさせていました。しかし、1925年5月21日、上野博士は突如大学で亡くなります。上野博士と暮らしたのはわずか1年4か月ほどのこと。共に暮らした家は、渋谷駅から徒歩5分ほどの場所にありましたが、博士の死後は八重子夫人と共に渋谷を離れて5キロほど離れた世田谷区に移り住みました。しかし、ハチはその後も世田谷から渋谷駅に通い、改札口から出てくる上野博士を探しました。(気の毒に思った八重子夫人は、渋谷に住む知人宅にハチを預けて見守ったそうです)

亡くなるまでの10年間、暑い日も寒い日も渋谷駅で待っている姿に、たくさんの人たちが涙を流し、胸を打たれました。飼い主を待ち続ける「忠犬」として有名になったのは晩年のこと。ハチ公として世の中にその姿を伝えた斎藤弘吉氏(後の日本犬保存会初代会長)は、ハチのことをこう述べています。

「死ぬまで渋谷駅をなつかしんで、毎日のように通っていたハチ公を、人間的に解釈すると恩を忘れない美談になるかも知れませんが、ハチの心を考えると恩を忘れない、恩にむくいるなどという気持ちは少しもあったとは思えません。あったのは、ただ自分をかわいがってくれた主人への、それこそまじりけのない、愛情だけだったと思います。ハチに限らず、犬とはそうしたものだからです。無条件な絶対的愛情なのです。人間にたとえれば、子が母を慕い、親が子を愛するのに似た性質のものです。

「渋谷駅を離れなかったのは、心から可愛がってくれた到底忘れることのできない博士に会いたかったのです。ハチ公の本当の気持ちは、大好きな博士にとびつき自分の顔を思いきりおしつけて、尾をふりたかったのです[1]。」

飼い主に従順で忠誠心ある日本犬らしいハチの物語。しかし、斎藤弘吉氏の述べた通り、そこにはただただ可愛がってくれた上野博士への、純粋なる深い愛だけが存在したのでしょう。

100年ほど前の愛情物語が、長い月日に語り継がれ、現代を生きる私たちに変わらぬ静かな感動と、本物の愛について考えさせてくれるのでしょう。

ハチ公はなぜ「公」がついている?

ハチ公という呼び名で有名ですが、実は上野英三郎博士の教え子たちが 、先生の飼い犬を呼び捨てにできないという理由から「公」を付けて呼んだそうです。「公(こう)」の意味は、「敬意を込めた敬称」で、身分の高い人や尊敬する人に対してつける呼称なのです。

博士のことは“毎日”送り迎えしたわけではなかった !?

ハチ公の物語を語るとき「毎日駅まで送り迎えして‥」と話されることが多いかもしれません。実はこれは誤りだったのです。飼い主の上野博士が電車を使って通勤していたのは、「毎日ではなく西ヶ原の農商務省農事試験場を訪れるときなどであった」(『渋谷駅100年史 忠犬ハチ公50年』日本国有鉄道渋谷駅、1958年)とされているため、国内で作られた映画に出てくる通勤場面などは、事実とは少し異なる点があるそうです。

[1]『ハチ公と上野英三郎博士の像と東大に作る会』チラシデータより

まとめ

ところどころ水たまりのできた岩場の上に立ってこちらを見ている茶色の柴犬。

(『黒柴豆と茶柴空 』様より写真ご提供 @mamesola_a)

ここまで様々な角度から日本犬についてお伝えしてきました。キリっとした顔立ちなのに、意外にも人間への愛が溢れ、しかし自立心もあるという2面性が、私たちを魅了して止まないのでしょう。巻尾を揺らしながら散歩をしている日本犬を見かけたら、キツネ顔?タヌキ顔?シッポはどんな形?など、これまでと違う見方で観察できるかもしれません。

私たち人間にさまざまな性格があるように、犬にも個体差があり、犬種の枠を超えたさまざまな性格を持っています。中には、ご紹介したような「日本犬らしさ」のない日本犬も、当然にいることでしょう。追い求める理想を優先するのではなく、共に暮らすその子がどんな性格であっても、その子らしさに魅力があるものなのです。これから日本犬をお迎えしたいと考えている方は、どんなことが双方の幸せなのか、よく考え、いろいろなことを知って、ぜひ世界でたった1匹のその子を可愛がってあげてください。

この記事を書いた人

鮎川多絵

東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。

NEW

新着記事

RANKING

お悩みから探す