羊のぬいぐるみと白くて小さな愛らしい犬が並んでいる

「羊頭狗肉(ようとうくにく)」という言葉を耳にしたことはありますか?

読み方も難しく聞き慣れない言葉ですし、「狗肉って犬の肉のこと……?」と不安になってしまう飼い主さんも多いかもしれません。
でも、安心してください。
実はこの「羊頭狗肉」とは、犬とは関係のない故事成語で、「見た目は立派なのに中身はそうでもなかった」という見せかけの状態を表した言葉なのです。
身の回りを見渡してみると、「これって羊頭狗肉では?」と感じる場面が意外とたくさん。

この記事では、「羊頭狗肉」の意味や由来、使い方を分かりやすく解説します。
さくっと読めて、ちょっと賢くなれる四字熟語の世界を、一緒にのぞいてみませんか?

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1.「羊頭狗肉」ってどんな意味なの?

羊と犬が肩を組んでいるイラスト

「羊頭狗肉」「ようとうくにく」と読み、「見かけは立派でも中身が伴っていないこと」「表向きと実態が違っていること」を意味する四字熟語です[1]
もう少し分かりやすくすると、「宣伝はすごく良いのに、使ってみたら期待外れだった」「高級ブランドに見せかけて、実際は偽物だった」などのギャップを表現する言葉。
あまりポジティブな意味ではありませんね。

本間ユミノ
本間ユミノ

先日、ラーメン屋さんに訪れた筆者。
麺が見えないほどチャーシューが乗っているメニュー写真に引かれ、チャーシュー麺を頼みました。
しかし実際出てきたのは、普通のラーメンよりチャーシューが数枚多いだけ……。
そんな経験、誰しも一度は経験があるのでは!?

[1]コトバンク「羊頭を掲げて狗肉を売る

「羊頭狗肉」の由来

僧侶が教本を読んでいる

「羊頭狗肉」の意味が分かったところで、この言葉の由来を解説していきます。
「羊頭狗肉」は、1228年に成立したとされている中国の仏教書『無門関』第六則に出てくる「羊頭を懸けて狗肉を売る」という言葉が由来です。
「羊頭」とは羊の頭、「狗肉」とは犬の肉。つまり「外の看板には羊の頭を掲げておいて、実際には犬の肉を売る」の意味で、まさに、見た目は立派でも実際は違うことを表しています。

犬を食べる話?

水辺にある仏像が夕陽を逆光に浮かび上がっている

「羊頭狗肉」の由来を聞いて、「犬を食べる話なの…?」とショックを受けてしまった方もいるかもしれません。
しかし、犬を食べる話ではないので安心してください!
ドキドキしている方もいるかもしれないので、この「羊頭を懸けて狗肉を売る」という言葉がどういった流れで出てきたのか解説します。

『無門関』第六則の内容

釈迦が昔、ある説法で一本の花を手にして大衆に見せた。
大衆は黙っているだけだったが、迦葉という名の弟子だけが微笑んでいた。

それを見た釈迦は、
「私には、本質を見抜く正しい眼(正法眼蔵)、深い悟り、(涅槃妙心)、目には見えない真実の姿(実相無相)、絶妙な教え(微妙の法門)がある。これらを文字にも言葉にもせず、別の方法で迦葉に伝えたのだ」と言った。

この逸話を聞いた無門慧開という僧は、このように評した。

「釈迦も勝手だ。善良な大衆を卑しんだかと思えば、羊の肉を掲げて犬の肉を売るようなものだ。教えをどのように伝えるのか奇策があるのかと思ったが、凡人にはできないことである。もしその時、大衆が皆笑っていたら、教えをどのように伝えたのか。もし迦葉が笑わなかったら、教えをどのように伝えたのか。もし教えを伝授できるというのなら、釈迦は大衆を騙したことになるし、もし教えを伝授できないというのなら、なぜ迦葉にだけ伝えることができたのだろうか」

仏教の教えは文字や言葉では伝えられません。 
その教えは一体どのように伝えられるのか、といった批判の一説ですが、批判を通じて仏教のあり方を考えさせる話になっているため、本当に釈迦を批判しているわけではありません。

釈迦を批判する際に登場した「羊頭狗肉」。
実際に犬を食べる話ではないことがお分かりいただけましたでしょうか。

なぜ「羊」と「犬」が使われているの?

女性が両手を広げて困っている様子

中国では古くから犬食が行われていました。[2]
しかし、南北朝時代に入ると、羊が食用肉として主流になっていきます。
羊の肉は味が良いため値段も高いですが、犬の肉は羊ほどではないので値段も安いです。
そのため、肉屋は外に羊の頭を掲げ、羊を売ると見せかけて、安い犬の肉を売るのです。
ただ、この「羊頭狗肉」という言葉は、ごまかしを強調するための比喩表現です。
「羊頭狗肉」を使用して本当に犬の肉の話をしている人は、ほぼいないでしょう。
あくまで、羊の頭と犬の肉が例えとして使われている位置づけです。

[2]朱銀花「日・中・韓三国の言語における犬文化の考察

「羊頭狗肉」を使うシーン

ここまで「羊頭狗肉」の意味や由来について解説してきました。
ここからは、実際にどのようなシーンでこの言葉が使われるのかご紹介します!

ビジネスシーン

テーブルに書類やパソコンが並びビジネスマンたちが話し合っている

ビジネスシーンでは、成果や品質が見かけ倒しである状況を表現する際に使うことができます。
当初の計画や宣伝が立派であったにもかかわらず、実行段階では内容が伴わずに期待外れの結果に終わってしまうケースなどですね。

ビジネスシーンでの使用例

状況例使用例
プロジェクトの遅延や品質低下「このプロジェクトは、当初のもくろみは大きかったものの、蓋を開けてみれば羊頭狗肉に陥っており、期待された機能は未実装、納期も大幅に遅れています」
新規事業の不振「大規模な広告展開で話題になった新サービスですが、利用者の反応はイマイチで、まさに羊頭狗肉といったところでしょうか」
「あの会社は華々しい宣伝をしていますが、実態は羊頭狗肉で、取引を続けるのはリスクが高いでしょう」
合併・買収後の効果不足「合併当初はシナジー効果が期待されましたが、組織文化の融合が進まずに事業統合は羊頭狗肉の状態が続いており、具体的な成果が見えてきません」

日常会話

グラスを片手に女子会で談笑する様子

日常会話では、期待外れだった商品やサービス、あるいは人の言動などに対して使うことができます。
皮肉を込めたり批判したりする際に効果的ですよ。

日常会話での使用例

状況例
使用例
期待外れな商品やサービス「あの新しいカフェ、SNSにおしゃれで美味しそうな写真がたくさん載っていたから実際に行ってみたら、内装も料理も全然写真と違って羊頭狗肉だったよ」
「CMでやっている最新家電、すごい機能がついているように宣伝しているけど、実際はほとんど使えない機能ばかりで羊頭狗肉らしい」
評判先行の人物や団体「彼の話はいつも壮大ですが、実際には何も成し遂げていないので、羊頭狗肉な人だと思っています」
「あのインフルエンサー、発言は派手だけど、具体的な行動は何も伴っていない羊頭狗肉だ」

使用する際の注意点

ふとした瞬間に「羊頭狗肉」という言葉を使えると、知的な印象を残せますよね。
しかし、使用する際には注意も必要です。
「羊頭狗肉」は、相手の言動や状況を批判するニュアンスのある言葉です。
使用する場面や相手には十分配慮し、直接相手を侮辱する使い方は避けるようにしましょう。
不用意な発言は、相手を深く傷つけたり、人間関係を悪化させたりする可能性もあります。

また、犬の飼い主さんに対しては、

・動物が例えとして使われている言葉である
・飼い主さんによっては不快に感じる可能性がある

といった点を理解した上で、使うように意識しましょう。

「羊頭狗肉」の類語・反対語

「まだまだ“羊頭狗肉”を使いこなすのは難しい!」
「なんとなく意味は理解したけど、もう少し簡単な表現はないかな……」
そう思っている方のために、「羊頭狗肉」と似た意味を持つ類語や反対語を見ていきましょう。
「羊頭狗肉」に対する理解がもっと深まりますよ!

類語

見かけと実態が伴わない状況を表す「羊頭狗肉」。
似た意味を持つ言葉には以下のようなものがあります。

・看板に偽りあり
・有名無実
・羊質虎皮
・牛首を懸けて馬肉を売る

例えば、ある商品が派手な広告で宣伝されていたにもかかわらず、実際には期待外れだった場合には「あの店の宣伝は看板に偽りありだね」などといった表現ができますよ。

反対語

逆に、見かけと実態が伴っている状況を表す言葉には以下のようなものがあります。
どれも、期待通りの内容だったというポジティブな印象の言葉ですよ!

・看板に偽りなし
・言行一致
・実質伴う
・評判通り

これらの言葉は、信頼性や確実性を示す表現として用いられます。
言葉の選択によって、物事の評価や信頼性を正確に伝えることができますね。

まとめ

「羊頭狗肉」は、「見た目は立派なのに中身が伴わない」状態を表す四字熟語です。
“狗肉”という表現に少しドキッとするかもしれませんが、犬そのものとは関係がありません。
人のごまかしを批判する、あくまで比喩表現です。
日常生活の中でも、見た目は良いけど中身が伴わないものに出会う瞬間がありますよね。
そんな場面でこの四字熟語を知っていると、「これがまさに羊頭狗肉なのか!」と本質を捉える視点を持つことができます。
言葉の背景を知っていると、意味を誤解せずに使えるようになりますよ。
羊頭狗肉の意味を押さえた今、これからは誤解することなくスマートに使いこなせるはず。
愛犬との暮らしと同じように、言葉とも心地いい距離で付き合っていきましょう。

 この記事の監修者

鮎川 多絵 (愛玩動物飼養管理士2級・ライター)

東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。

犬と私
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。

HP/SNS
instagram note 

資格
愛玩動物飼養管理士2級 防災コーディネーター 学芸員 登録日本語教員

この記事を書いた人

本間ユミノ

新潟県出身。2児の母。食べることと寝ること、読書が好き。動かないことも動くことも好き。モットーは「夜を乗りこなす」
第49期 宣伝会議 編集・ライター講座修了。
小学生の頃に読んだ、漫画『動物のお医者さん』に出てくるチョビ(主人公が飼っているシベリアン・ハスキー)の可愛さに虜になる。以来、好きな犬種はシベリアン・ハスキー。

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