
1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災…多くの人々が命の危機にさらされ、愛するペットと離れ離れになる悲劇が、数え切れないほど起きました。
「せめて一緒に避難できていたら」「最期にもう一度、抱きしめてやれたら」
そんな言葉を耳にするだけでも、飼い主さんの辛さが身に染みて、胸がいっぱいになります。
今回は、愛犬と一緒に安全に避難するため知っておきたいポイントを、分かりやすくまとめました。
近年は地震などの自然災害も多く、更なる災害がまたいつ起きるか分かりません。「自分の子ども同然の大切な命」…愛犬を守るため、私たちが今できる準備を一緒に始めましょう。
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そのとき、犬はどうなる?「防災グッズ」が必要な理由とは?
環境省が定めるガイドラインでは、災害時にはできる限りペットと一緒に避難する「同行避難」が原則とされています。多くの自治体でも、この方針が基本とされています。
しかし、過去の大規模災害では、「ペットと一緒に避難する」という意識や準備がまだ行き届いておらず、多くの飼い主がやむを得ずペットを置いて避難しました。
その結果、ペットの行方が分からなくなるケースが相次ぎ、自治体や避難所でも対応に追われるなど、混乱が生じたという報告があります。
こうした事態を繰り返さず「いざという時」に慌てず行動できるよう、「愛犬専用の防災グッズ」も備えておくことがとても大切です。
次章では、具体的にどのようなものを用意すべきかを紹介していきます。
【実際に一緒に避難できるの?】過去の事例も知りたい
■ 東日本大震災(2011年)
・多くの避難所がペット受け入れを想定しておらず、屋外や車中泊で過ごす飼い主が多数発生。
・ペットを手放したり、避難をためらった人もいた。
・この経験をふまえ、国のガイドラインが整備されるきっかけに。
■ 熊本地震(2016年)
・一部の避難所で、ペット用のスペース(段ボール仕切りやテント)が用意され、人とペットのゾーニングが実施。
・「同行避難」の重要性と課題が改めて浮き彫りに。
■ 近年の台風や豪雨災害
・自治体によっては、ペットの受け入れ体制が進んできており、ペット用避難所や一時預かり制度を導入している所もある。
自治体や避難所の体制によって、ペットの受け入れ対応は大きく異なります。建物の中に一緒に入れる場合もあれば、屋外に繋ぐ形や、車中泊を求められるケースもあります。そのため、事前に自分の地域の避難所の対応を確認しておくことがとても大切です。災害時にペットが受け入れ可能な避難所については、各自治体のホームページや防災マップに記載されていることもあるので、ぜひ一度チェックしてみてください。

【犬用防災グッズ一覧】優先順位別・必要なものリスト
災害が発生したとき、特に犬の場合は、フード、トイレ、クレート(移動や避難時にも使える、ペット用のハウス)など必要となるものが多く、その場ですぐ対応するのは難しいでしょう。
この章では、「何を用意すべきか」「どこまで備えるべきか」を、3段階に分けて詳しくご紹介します。表をプリントするなど、チェックボックスに印を付けご活用ください。さあ、一緒に準備していきましょう!
| 優先順位 | 避難時 必要なものリスト |
|---|---|
| 優先順位1常備品と飼い主やペットの情報 | □ フード、または療法食(5日〜1週間分) □ ペット用(犬用)ミネラルウォーター(少なくとも5日分、できれば 7 日分以上) □ 携帯用食器 □ 予備の首輪(迷子札付) □ ハーネス、リード(災害時に犬がパニックになっても制御できるよう、伸縮しないものを選びましょう。) □ キャリーバッグ or クレート □ 布製ガムテープ(ケージの補修など多用途に使用可能) □ 飼い主の連絡先とペットに関する飼い主以外の緊急連絡先、預かり先などの情報 □ ペットの写真(携帯電話に画像を保存も有効) □ 薬、かかりつけの動物病院などの情報(ワクチン接種状況・既往症・健康状態) □ 風呂敷(スリングにもなり、寒い時の保温、ケージの目隠し等、大きな布は何かと役に立ちます) |
| 優先順位2ペット用品 | □ペットシーツ □トイレ用品(排泄物の処理用具) □タオル □ブラシ □愛犬がお気に入りのおもちゃ |
| 優先順位3避難生活が長引いた場合の、3段階目の備え「あれば便利」 | □服(寒さ・虫よけ対策)やブランケット □モバイルファン(夏場用) □虫よけ・消臭スプレー □マナーウェア(オムツ)や防水シート □ストレスケア用品(知育トイ、音を遮るカバー付きクレートなど) |
推奨!食料品のローリングストック
ローリングストックとは
ドッグフードや水など、口に入るものには当然ながら賞味期限があります。非常時に備えて、食料や日用品を少し多めに持ち、使いながら補充していく「ローリングストック」という備蓄方法が効果的です。これは、「使ったら買い足す」を繰り返すことで、常に一定量の備えを維持できる方法です。愛犬が普段から食べ慣れているフードを少し多めにストックし、日常の中で自然に回していきましょう。
※持病がある子は、診察の際にお薬を多めにもらっておき、防災グッズに入れておくのもおすすめです。こちらもローリングストックが有効ですね。
100円ショップでそろえる!自分と愛犬の「オリジナル防災リュック」
「防災グッズ=高価」と思われがちですが、実は身近な100円ショップでもそろうものがたくさんあります。気軽に防災の第一歩を始めてみましょう。

100均で購入できるおすすめグッズ
□ ウェットティッシュ・除菌シート(体、足の汚れ拭きに)
□ 携帯用フードボウル(折りたたみ式)
□ ビニール袋(排泄物処理や汚物入れに)
□ 小分けボトル&ジッパーバッグ(フードや薬の小分けに)
□ ガムテープ・結束バンド(ケージの補修など多用途に活躍)
□ タオル・手ぬぐい(寒さ・汚れ対策、体を包むなど)
□ 小型ライト(LED)や反射グッズ(夜でも見えやすく)
□ 使い捨て手袋・マスク(衛生管理に)
□ おもちゃやぬいぐるみ(小型)(愛犬が安心するアイテム)

こういったアイテムを集めて、「自分とペットのオリジナル防災セット」を作るのもおすすめですが、その「器」となる、防災用リュックの選び方も重要です。
アウトドアショップやワークマンで、軽くて丈夫なデイパックもありますので、お店をのぞいてみるのも良いかもしれません。
犬の防災用リュックを選ぶときのチェックポイント
☑ 両手が空く「背負えるタイプ」 避難時にはリードを持ったり、段を上がったり、他の荷物も運んだりと、両手を使う場面が多いので、断然リュックがおすすめです。
☑ 軽くて、肩に負担がかからない 長時間背負う可能性も考えて、軽量かつクッション性のある肩ベルトがベスト。防災用は「たくさん入ること」よりも「持って逃げられること」が大切です。
☑ ポケットが複数あると便利 中でゴチャゴチャにならないように、ポケットや仕切りがあるものだと整理しやすくなります。小物(薬やネームタグなど)を見失わずに済みます。
☑ 撥水加工 or ナイロン製がおすすめ 雨や泥汚れに強いナイロンやポリエステル素材、できれば撥水加工がされていると安心です。中身が濡れると大変なので、雨カバーが付いていればなお良いでしょう。
ちなみに、ペット用の防災リュックとして、アニコム損保が販売している「犬用防災リュック」があります。折り畳み食器、洗えるペットシーツ、歯みがきジェル、防災手帳、ウォータータンクや肩掛けリードなど、実際の災害現場で必要なものが一式入っています。こうした市販のセットを参考にしつつ、愛犬に合わせて必要なものを追加・見直しておくことが、安心な備えにつながります。

【リニューアル犬用防災セット】 anicom pafe
大型犬と生き抜く防災準備(Big Dog, Safe Life!)
日頃のハウストレーニングの重要性
大型犬と災害時に避難する際、特に重要なのが「ハウストレーニング」です。
避難所では広いスペースが確保できない場合も多く、犬が安心して過ごせる「自分の場所」があることが、ストレス軽減やトラブル防止につながります。
普段から「ハウス!」のコマンドで、自らクレートやケージに入る練習をしておきましょう。
狭い空間でも、「自分の安心できる場所」があることは、愛犬の心と体の安定に大きな支えとなります。
動物病院の連絡先リストの作成
災害時は、かかりつけの動物病院がすぐに利用できない場合も多く想定されます。
普段から地域の動物病院リストを作成し、防災リュックなどに保管しておきましょう。
さらに、ペットの写真や年齢、持病、ワクチン接種状況などを記載した「ペット情報カード」を用意しておくと、第三者に預ける場合や救護を依頼する際にも役立ちます。
同伴避難可能な避難所の確認
すべての避難所がペット同伴避難に対応しているわけではありません。
お住まいの自治体のホームページや「地域防災計画」を事前に確認し、どの避難所が同伴避難を受け入れているか調べておきましょう。
「○○市 地域防災計画 ペット」などで検索すると、該当する情報が見つかります。
最寄りの避難所だけでなく、複数の候補を把握しておくと安心です。
ワクチン証明書・マイクロチップ登録の徹底
避難所やペットホテルでは、ワクチン証明書の提示を求められることが多くあります。
紛失を防ぐためにも、ファイルなどにまとめて保管しておきましょう。
また、マイクロチップの装着と登録も重要です。
災害時に愛犬が迷子になっても、マイクロチップがあれば飼い主のもとへ戻る可能性が高まります。
2016年の熊本地震では、マイクロチップを装着した迷子の犬のうち、なんと86%が飼い主の元に戻ってきているのです。
※多くの自治体では、災害時の避難所でペットと一緒に避難するには「鑑札+狂犬病注射済票」または「猶予証明書」の提示が必須になっています。問題なければ 狂犬病ワクチンを接種しておく方が安心です。
【マイクロチップ登録方法】 マイクロチップとは、犬の個体情報(15桁の番号)を記録した米粒ほどの小さな電子タグです。専用のリーダーで読み取ることで、登録された飼い主の情報を照会できます。動物病院で皮下(首の後ろ辺り)に装着した後は、装着証明書をもとに以下サイトから登録を行いましょう。https://reg.mc.env.go.jp/ (環境省 犬と猫のマイクロチップ情報登録)

「ペット同行避難訓練」全国で広がる自治体の防災対策
近年では各自治体で、犬との避難訓練(ペット同行避難訓練)が行われるケースも増えてきました。
例えば、神奈川県藤沢市や東京都多摩市では、実際にペットを連れて避難所に集まり、ケージの設置方法やルールの確認、糞尿の処理手順などを実践的に学ぶ訓練が行われています。
このほかにも、以下の自治体で同行避難訓練の事例があります。
※同行避難訓練…地域によって対応が異なるため、お住まいの自治体の方針をあらかじめ確認しておくことが大切です。市役所の防災課や公式ホームページで「ペット同行避難」の項目をチェックし、不明な点があれば事前に問い合わせておくと安心です。
■江戸川区(東京都)
2025年2月、マンション居住者を対象に「ペット防災セミナー」と「ペット同行避難訓練」が実施されました。
飼い主が犬をキャリーバッグやケージに入れて避難所まで移動し、実際の受付や飼養スペースでの過ごし方を体験しました。
■豊田市(愛知県)
2025年3月、「ペット同室避難所」の設営訓練が行われ、飼い主とペットが一緒に避難できる体制づくりが進められました。
段ボールハウスやペット用屋内飼育コンテナの体験も実施されています。
■戸田市(埼玉県)
2025年3月、防災イベントの一環としてペット同行避難訓練が実施され、ペット防災に関するブースも設置されました。
■各地の防災イベント・ワークショップ
一般社団法人やNPO団体などが主催するペット防災講座や避難体験ワークショップ、実際の避難行動を再現する「フルスケール訓練」なども、全国各地で開催されています。
まとめ 防災グッズは「命をつなぐ橋渡し」
災害時、愛犬と落ち着いて過ごせた多くの家庭では、防災グッズの備えができていました。
フードや薬の備蓄、クレートトレーニングなどをしていたことで、混乱の中でも冷静に対応できたという報告もあります。
日頃の備えが、非常時に「ともに生き延びる『力』」になるのです。
混乱の中、愛犬の健康と安全を守るために、今できることは?
愛犬とあなたの「命をつなぐ橋」を架けられるのは、ほかでもない、あなたです。








