
お散歩をしている犬のリードに「黄色いリボン」が付いているのを見たことはありますか?
おしゃれでもしているのかな?と思ったならば、ちょっと待って!
実は、この黄色いリボンには大切な意味があり、見た人たちに「あるサイン」を送っているのです。
この記事では、その「黄色いリボン」についてお伝えします。
この記事を書いた人
鮎川多絵
東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。
黄色いリボンに込められたメッセージ

「近づかないでね」「触らないでね」
犬のリードに黄色いリボン。
そんな犬のお散歩姿を見たことはあるでしょうか?
この黄色いリボンは、単なるリボンではありません。
実は、きちんとした意味が含まれており、見た人に大切なメッセージを送っているのです。
人間にもさまざまな性格、体の状態があるのと同じく、犬にもあります。
一見すると、何も問題なく見える犬のお散歩も、実は飼い主さんの苦労や心配事が尽きないこともあるのです。
そこで、お散歩中の犬のリードに目印となる黄色いリボンを付けて、「近づかないでね」「触らないでね」と周囲に分かってもらい、飼い主さんや犬にとって、さらにその犬を見かけた人にとっても過ごしやすくしようという活動が世界中で広まりつつあるのです。
この黄色いリボンをつける運動が、「イエロードッグプロジェクト」。
昨今、日本でも活動が広がってきています。(詳しくは第4章で解説します!)
さまざまな事情
黄色いリボンは、「近づかないでね」「触らないでね」の意味があります。
では、なぜそのようなことをみんなに分かるように付けているのでしょうか?
それは黄色いリボンをつける犬にさまざまな事情があるためです。
この機会にぜひ知っておきましょう。
他の人や犬に強い反応を見せる・怖がる
さまざまな理由から、他の人や犬に強い反応を示し、近づくことでパニック状態になってしまうことがあります。
例えば、過去に他の犬に噛まれてしまったなどの咬傷事故。
これが原因で、トラウマを負い、トレーニングではなかなか改善できないこともあるのです。
強い反応を見せたり怖がっている犬を見たら、自分自身も、そして連れている愛犬もその犬には近付けず、距離を保つようにしてあげてください。
散歩道によっては、狭かったり逃げ道がないこともあるでしょう。
そんな時は、その場から離れて距離をつくるなど、配慮をしてあげることで、お互いが安心してお散歩ができます。
トレーニング中
他の犬や人が苦手な繊細な犬たちが、安心してお散歩ができるように大事なトレーニングを行っていることがあります。
そのような犬たちが「トレーニング中なので近づかず、そっとしておいてね」という意味で黄色いリボンをつけていることがあります。
不用意に人や他の犬が近づくことで、集中力が保てなくなることも考えられます。
トレーニングは犬にも、そして飼い主さんにも大事な時間です。
飼い主さんとの絆を深める時間でもあります。
もしも黄色いリボンをつけた犬を見かけたら、配慮と思いやりを持って見守りましょう。
健康上の理由
黄色いリボンは単なる「近づかないでね」の意味のみならず、物理的に大きな理由がある場合もあります。
犬の体のどこかが不自由である、手術後の回復期で無理ができない、ケガをしているなどの理由でそっとしておいて欲しいことがあります。
健康上無理な動きをして悪化させないことが目的ですので、優しく見守ってあげましょう。
社会復帰のトレーニング中
例えば、人間から虐待にあった過去を持つ犬や、人間との共同生活や他の犬たちと関わる環境にいなかった犬もいます。
このようなトラウマを抱え、人見知りの性質を持つ犬たちは、社会に馴染む訓練を必要としているのです。
まだまだトレーニングが必要な時に、人に不用意に触られたり、他の犬との接触に強いストレスを感じることがあります。
これからの新しい生活を安心して過ごしていけるように、そして飼い主さんとの絆を深めるためにも社会復帰のトレーニングがとても大事な意味を持ちます。
トレーニングを優先してもらうためにも、この黄色いリボンがサインとなり、温かな気持ちを持ってみんなで見守っていきたいですね。
黄色いリボンを見かけたら?

犬のお散歩をしていたら向こうから可愛い犬が来る、お友達になれるかな?と思っても少し待ちましょう。
リードに黄色いリボンは付いていませんか?もしも、黄色いリボンをしていたら、なるべく近づかず、離れるようにしてあげましょう。
リボンをつけた犬たちは、状態によっては逃げようとするかもしれません。
または吠えるかもしれません。
しかし、これは決して敵対の意味ではないのです。
離れてあげることで、お互いを守ることができます。
また、散歩コースによっては、狭い道もあるかもしれません。
逃げ場のない道では、黄色いリボンをつけた犬は通り過ぎることも、逃げることもできず、結局迂回したところで帰宅できないという状況に悩む方もいます。
黄色いリボンを見かけた人は、「もしかしたらこの道しか使えないのかな?」「今から帰るところなのかな?」などと、相手がどのような状況なのか想像してあげましょう。
思いやりと譲り合いの気持ちで、ぜひ黄色いリボンの犬に道を譲ってあげてください。
お互いに優しい気持ちを持って、状況を想像し、みんなで気持ちの良いお散歩ができるといいですね。
黄色いリボンをつけた「イエロードッグプロジェクト」とは?

イエロードッグプロジェクトは、2012年スウェーデンにて、ドッグトレーナーや犬の心理学者のグループによってはじめられたプロジェクトです。[1]
犬に毎日のお散歩は欠かせませんが、全ての犬が何の問題もなくお散歩ができるわけではないのです。
さまざまな性質と状況を抱えた犬がせっかくのお散歩を気兼ねなくできるように願いを込めて、スウェーデンの国際認定犬行動学者エヴァ・オリバーソン氏が発案しました。
きっかけはオーストラリアの複数のドッグクラブで、敏感な気質を持つ犬がお散歩をしやすくするために黄色いリボンを使っているという情報を得たことから始まりました。
長年、さまざまな人間や動物、環境下に置かれた犬に、安全な距離感と環境に適応する方法を考えていたオリバーソン氏。
黄色いリボンで周囲に犬の状況を伝える方法を知り、黄色いバンダナを購入して、愛犬家のグループにプロジェクトのキャンペーンを共に運営してもらうことを呼びかけました。
さらに、インターネット上にも公開されたことで、世界中の犬たちがこの方法を利用できるようにしました。
プロジェクトのきっかけとなったオーストラリアの黄色いリボンを使用しているドッグクラブにも伝え、情報を広げてもらったそうです。
オリバーソン氏は、プログラムの目的を以下のように掲げています。
イエロードッグプロジェクトの目的
- 敏感な犬に対し、飼い主が特別な配慮をできるようにする
Give dog owners the possibility to take extra care of their dogs that are sensitive in any way. - 不要な誤解を防ぐ
Prevent unnecessary misunderstandings. - 犬と飼い主の双方に、他の人や動物から離れる時間と距離を与える
Give both dogs and their owners more space or time to move away from people and animals. - 犬をゆっくりと訓練する時間を作り、訓練の進捗を良くする
Create the possibility to slowly train a dog and by that make better training progress.
こうして作られたイエロードッグプロジェクトでは、リードや犬に黄色いリボンやバンダナを付けて、周囲と距離が必要な犬とその飼い主の助けとなり、周囲が配慮できる目印となる、皆が過ごしやすくなる方法の一つとして世界中に広まりました。
[1]Sweden_The Gulahund™ Yellowdog program「bryr sig om känsliga hundar 」
広まるイエロードッグプロジェクトを知ろう!

日本でも活動している「イエロードッグプロジェクト」
ヨーロッパから世界中に広まりつつあるイエロードッグプロジェクト。
実は日本でも少しずつ知られるようになってきているのは知っていましたか?
ボランティア団体『みんなのイエロードッグプロジェクト』[2]は、黄色いリボンをつけることで「近づかないでね」のサインを送り、さまざまな犬が安心してお散歩ができることを願って創設された団体です。
[2]みんなのイエロードッグプロジェクト「Webサイト」
取組みについて
『みんなのイエロードッグプロジェクト』では、プロジェクトが地域に根付いてこそ意味があると考えて活動をしているボランティア団体です。
黄色いリボンの意味を知ってもらうプロジェクトは、一部地域から広めることを目標に活動し、埼玉県杉戸高野台、川口市の一部地域で成果が出ています。
現在は、全国展開を目指しているそうです。
人にヘルプマークがあっても、犬の世界にはヘルプマークがない。
この黄色いリボンこそ、犬の世界のヘルプマークとなり、どんな犬も受け入れられる社会となることを願った活動なのです。
活動の一つとして、イエロードッグを知ってもらうためのチラシを無料配布しています。
お住まいの地域にて、チラシ掲示、データを使用してSNSなどでリポストやリツイートなど、情報拡散をしてぜひご協力ください。

無料のチラシを4種類作成しています。印刷をして地域に掲示したり、ダウンロードをしてSNSで呼びかけることもできるようにするなど、イエロードッグプロジェクトの輪を広げています。
愛犬にも黄色いリボンを付けたい!どこで買えるの?
愛犬に黄色いリボンが必要と分かった時、もちろんお手持ちの黄色いリボンなどを使って大丈夫!
家にない場合には、手芸用品が売られているお店や、100円均一のお店でも「太めの黄色いリボン」が売っていることがありますので、探してみてください。
黄色いリボンをつける際のポイント
『みんなのイエロードッグプロジェクト』では、「黄色いリボンをつける側」だけでなく、「黄色いリボンを見た側」にも寄り添うことで、お互いに優しいプロジェクトになると考えています。
ぜひ黄色いリボンを付ける際には、以下2点を意識して付けてみてください。
リボンはリードの中央につける
黄色ならいいのかな?と、例えば犬用の黄色い服を着用させてみたり、かわいく首に黄色いリボンをつけることを考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それでは単なるおしゃれと勘違いされてしまい、せっかくの黄色いリボンの意味がなくなってしまいます。
さらに、飼い主さんが持つリードの手元に付けてしまうと、後ろ側から歩いてくる方には見えにくくなってしまいます。
リボンは「リードの中央」に目立つようにつけましょう!
目立つ大きめのリボンをつけましょう
黄色いリボンをつけるのならば、やはりちゃんと意味が伝わらないといけませんね。
控えめに小さなリボンにしてしまうと、例えばご高齢の方、お子さんたちになかなか見えないこともあります。
遠くからでもリボンが目立ってよく見えるように、「目立つ大きめの黄色いリボン」をつけましょう。

ぜひ『みんなのイエロードッグプロジェクト』Webサイトを訪れてみてください。
また、SNSを利用して実際に黄色いリボンをしている犬たちの写真を見てみるのもいいかもしれません。
学んでみよう、知っておこう、自分のことでなくても相手に興味を持って知ることは、優しさへの一歩前進になることでしょう。
まとめ

犬には毎日のお散歩がとても重要な意味を持ちます。
健康維持のため、ストレス解消、匂いを嗅いで情報収集を行う状況把握のため、そしてコミュニケーションのため。
しかし、何かしらの心配や不安があってお散歩が億劫になったり、逆にストレスになってしまうと、飼い主さんと愛犬の生活が成り立たなくなることもあります。
これは大変深刻な問題なのです。
せっかく愛犬とお散歩をするなら気兼ねなく気持ちよく散歩をしたい。
そのためには、人にも犬にも思いやりを持ってあげることで、お互いに楽しいお散歩タイムになるはずですね。
黄色いリボンは、目に見える思いやりのという画期的なアイディアとして誕生しました。
人から犬への愛情が形となったと言っても過言ではないでしょう。
私たち人間が、犬たちに何ができるのか。
そして人間同士でどんな助け合いができるのか。
まだまだたくさんのアイディアに溢れ、未来に希望が持てそうな、そんなプロジェクトの一つなのです。

さまざまな状況を踏まえて、「もしかしたらうちの愛犬もイエロードッグ(黄色いリボンを必要とする犬)なのかしら?」と思ったら、ぜひドッグトレーナーや、獣医などの犬の専門家に相談してみましょう。
専門家に相談する際には、愛犬の様子を伝えたうえで、黄色いリボンはどんな時に必要なのか、どのくらいの期間使用するのがいいのかなど、心配していること、不安に思っていることを相談をしてみましょう!
この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)
国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。
資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級



