犬吸いパーティに興じている海外の男女たち

カレーマニアにとって「カレーが飲みもの」なら、犬マニアにとって、「犬は吸うもの!」。

え?「犬を吸う」ってどういうこと??

「犬吸い」とは、愛犬のモフモフとした顔や体、肉球に顔をうずめながら、思いきりその匂いを吸うことです。

まるで日なたのような、犬特有のやさしい匂いを吸い、顔をうずめると、日々の疲れやストレスが癒されてリラックスする人が多いのではないでしょうか。

しかし、吸われている愛犬は一体どんな思いでいるのかも気になります

この記事では、犬吸いをされる犬の心理、「ヒト」への効果や注意点などを、フワフワ、モフモフと解説していきます。

この記事を書いた人

 なぜ人は犬を吸いたくなるの?モフモフの魔法とメリット

本能的に「かわいいものに触れたい」欲求があるから

人間には「かわいい」と感じるものに近づきたくなる本能があり、これを「ベビースキーマ」と呼びます[1]

犬のモフモフした毛並み、丸い顔、優しい瞳は、愛らしさの象徴。「顔をうずめて吸いたい!」という衝動は、ごく自然な感情なのです。

[1]ニッポン放送「赤ちゃんをかわいいと思う本能「ベビースキーマ」とは?

愛着ホルモンが分泌されるから(幸福感アップ)

犬に触れて匂いを嗅ぐことで、ストレスを減らして心をほっとさせるオキシトシン(別名:愛情ホルモン)が分泌されます[2]

犬吸いは、人が「もっと幸せを感じたい」という欲求が起こす行動なんですね。

[2]Nagasawa et al., The role of oxytocin in the dog–owner relationship(2015)

匂いに安心するから(リラックス効果)

犬の体臭には、安心感を与える独特の香りがあります。

これはフェロモンや皮膚常在菌によるもので、飼い主にとっては「自分だけの匂い」と感じられることも。

まるでふるさとのように、心を落ち着かせてくれる存在なのです。

絆を深めたいという気持ちの表れ(コミュニケーション効果)

犬をギュッと抱きしめたり、顔をうずめたりするのは、「もっと近づきたい」「大好きと伝えたい!」という飼い主の深い愛情表現です。

犬もまた安心感を得て、「この人が大好き!」という信頼の気持ちをさらに深めていきます。

健康にもいい(免疫力アップ)

犬とのふれあいは、科学的にも健康に良い影響を与えることが知られています。

愛犬を抱きしめ、近くで匂いを感じる行動は、飼い主の副交感神経を優位にし、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制すると報告されています[2]

その結果、免疫機能が活性化し、感染症などに対する抵抗力が高まる可能性があります。

飼い主はもちろん、犬も飼い主の匂いが大好きなので、お互いにとって幸せな時間になります。

人は「かわいさ」「安心」「幸せホルモン」の力によって、犬を吸わずにはいられない!!というわけなんです。

[2]Nagasawa et al., The role of oxytocin in the dog–owner relationship(2015)

とてもおしゃれに犬を抱きしめて匂いを嗅ぐ男性

犬吸いの注意点・リスク

4つの感染症の原因ときっかけ人獣共通感染症(ズーノーシス)とは?

「犬吸い」が引き起こす健康リスクとして、注意したいのが「人獣共通感染症(ズーノーシス)[3]です。

ズーノーシスとは、動物から人へ、または人から動物へ感染する病気の総称を指します。

犬に顔をうずめたり、密接に触れ合ったりすることで、軽い症状から重い健康問題につながる感染症を引き起こすこともあるため、注意が必要です。

ここでは、犬吸いによって感染する可能性のある主な病気について、感染源や感染経路、主な症状をまとめた表でご紹介します。

病名感染源・感染経路  症状
皮膚糸状菌症    
(ひふしじょうきんしょう)
犬・猫・ウサギなどの皮膚に触れることで真菌(カビ)に感染特に梅雨や夏の季節に多く、丸い発疹やかゆみ、頭に感染するとフケが出たり、円形に抜けたりします。人が発症したときは皮膚科で抗真菌薬の塗り薬や飲み薬による治療を行います。
パスツレラ症犬・猫のかみ傷、引っかき傷などから感染犬や猫などの口の中に生息するパスツレラ菌が原因で感染します。パスツレラ症は、傷ができると急速に腫れ、痛みが出るのが特徴です。重症化すると敗血症のリスクも。
回虫症
(かいちゅうしょう)
犬・猫の便(毛に付着する場合も)を吸い込む・経口感染犬や猫の便に含まれる回虫の卵が、口や鼻から体内に入ることで感染する寄生虫症です。多くは無症状ですが、重症化すると発熱や咳、視力障害を引き起こすこともあります。特に子犬や子猫に多く、ペットの便の処理や手洗いの徹底が大切です。
アレルギーの発症犬の毛・フケ・唾液を吸い込む・接触などで感染顔をうずめることでアレルゲンを直接吸い込み、くしゃみや鼻水、皮膚のかゆみなどのアレルギー症状が出ることがあります。過去に動物アレルギーがなかった方でも注意が必要です。

犬吸いを楽しむ時は、まず犬の健康状態を確認し、皮膚病がないかもチェックしましょう

犬の毛や皮膚を清潔に保ち、触る前後で手を洗うことも大切です。

また、アレルギーがある場合は、犬の毛や皮膚に触れた後は特に注意し、症状が出ないように気をつけましょう。

これらを守り、元気な時にリラックスして触れ合えば、もっと楽しめますよ!

[3]東洋経済オンライン「「犬吸い」「猫吸い」は愛情表現だと考える人の盲点

犬は犬吸いをどう感じている? ~いぬのきもち

飼い主としては、愛犬をかわいさのあまり犬吸いしてしまいますが、すべての犬が、顔をうずめられたり密着されたりするのを喜ぶわけではありません。

中には、顔を近づけられること自体が苦手だったり、体に密着されるのをストレスに感じたりする子もいます。

嫌がっているときに出すカーミングシグナル(=犬が不安やストレスを感じたときに見せる仕草)は、以下のようなもの。

こんなサインが見られたら、できるだけ自然な流れで、やさしく静かに距離を取ることが大切です。

犬が嫌がっているときに見せるカーミングシグナル例

カーミングシグナルいぬのきもち
顔を背ける視線をそらして「やめて」と伝えている。
体を舐める・鼻を舐める自分を落ち着かせようとしているサイン。
あくびをする眠いのではなく、緊張やストレスを感じているときにも出る動作。
体をブルブルっと振る嫌な気持ちをリセットしたいときの行動。
しっぽを下げる・お腹を見せる服従や不安の気持ちを表している。嫌悪感を持っている可能性大。
耳を後ろに倒す緊張しているサイン。怖がっていることも。
ゆっくり歩く・固まる怖くて動きたくないか、できるだけ刺激を減らしたいと思っている。
人はOKでも犬はNOかも

大谷選手も!思わず顔をうずめたくなる愛おしさ

犬吸いは、犬を飼っている人の多くが経験しているようです。

ブリーダーナビが実施したアンケートによると、約6割の飼い主が「犬吸い」をしていると回答しています。

そして、あのドジャースの大谷翔平選手も、愛犬デコピンに「犬吸い」している姿が話題になりました[4]。

2024年、ドジャースのワールドシリーズ制覇を祝うパレード&セレモニーで、大谷選手がデコピンを抱き寄せ、首元に顔をうずめるしぐさを披露。

ファンからは「またデコ吸いしてる!」「愛おしくてたまらないんだね」といった声が多く寄せられました。

試合のセレモニーなどでも、デコピンに顔を寄せる姿がたびたび見られています。

大谷選手も、「犬は吸うもの!」と思っているのかも??

ドジャースの大谷翔平選手が、愛犬のデコピンを抱きしめて犬吸いしている様の水彩画風

[4]ベースボール専門メディアFull-Count「大谷翔平が「また吸ってる!?」止まらぬ“愛”…スリスリにファン共感

犬だって「犬吸い」したい! 〜フワフワ×モフモフ〜

犬は仲間同士で、相手の背中や首元に顔をうずめることがあります。

これは信頼や愛情、安心感を表現する大切なコミュニケーションのひとつです

犬にとって匂いはとても重要な情報源。相手の体に顔をうずめ、匂いを深く吸い込むことで、「安心できる存在だ」と再確認しているとも言われています。

犬同士のふれあいによっても、先述した愛情ホルモンのオキシトシンが分泌されることが報告されています。

人間と犬も、そして犬同士も、フワフワを愛でる気持ちは、共通なのかもしれません。

犬同士の匂いの嗅ぎ合いの4つの写真

まとめ 犬吸いは愛情表現のひとつ。吸うならこうして!

愛犬の体に顔をうずめて匂いを嗅ぐ「犬吸い」は飼い主にとっては幸せの時間。しかし、犬にストレスを与えないためにも、やり方には少し注意が必要です。

ワン!ポイント 💗正しい犬の吸い方💗 

・犬がリラックスしているときに・・無理に抱きしめず、自然に近づく

・嫌がるサインを見逃さない・・カーミングシグナルを見たらやめる

・飼い主が花粉症の場合は注意・・犬の被毛に花粉が付着していることがあるので、シャンプー後など清潔な状態で吸うのが安心

・衛生面にも配慮・・顔をなめられたら優しく洗い、感染症予防を意識する

ああ、今日も愛犬のモフモフの海にフガフガ溺れたい~!

男女4人の外国の人間が、ゴールデンレトリバーやフラッドコーテッドレトリバーの匂いをかいでいる

 この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)

国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。

資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級

この記事を書いた人

黒川志保

ライター駆け出し1年生。奄美大島・ヨロン島専門の旅行代理業も営む。日本・海外を巡った後、小学校教諭→旅行業界へ。第49期 宣伝会議 編集・ライター講座修了。夢は、すべての生き物がストレスなく幸せに暮らせること💗

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