
(写真提供:Instagramユーザー@sea.mie0731さん)
優しくて、家族に寄り添ってくれて、一緒にいるだけで心がほっとするような存在——。
そんなイメージを持たれている方も多いゴールデンレトリバー。
ドラマやCMで見かける“家族の一員”としての姿に惹かれ、「いつか一緒に暮らしてみたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
「ゴールデンレトリバーって、やっぱり飼いやすいのかな?」
「優しそうだけど、実際はどうなんだろう?」
そんな疑問を持ってこの記事にたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。
大きな体に包まれた優しさと、見た目を裏切らない穏やかな性格。
しかし、ゴールデンレトリバーはただ「優しくて穏やか」なだけの犬ではありません。
大型犬ならではのしつけやケア、健康面での配慮も必要な犬種でもあるのです。
この記事では、ゴールデンレトリバーの基本的な性格や見た目の特徴、しつけやお手入れ、健康面での注意点まで、幅広く解説していきます。
ゴールデンレトリバーという犬種の“本当の魅力”を一緒に確認していきましょう!
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ゴールデンレトリバーの歴史

ゴールデンレトリバーの詳しい歴史は明らかになっていませんが、生まれはイギリスだといわれています[1]。
犬種名である「レトリバー」は、英語で「回収する」という意味を持つ「retrieve」が由来だとされていて、ハンターが撃ち落とした水鳥を泳いで回収して陸地に持ち帰る鳥猟犬として活躍していました。
イギリスやスコットランドで鳥狩猟が盛んになった時代、仕留めた獲物を回収する犬の必要性が高くなり、「陸上でも水の中でも獲物を回収できる犬種を」と1900年代に生み出されたようです。
1913年頃には、その毛並みの色からイエローレトリバーと呼ばれることもありましたが、1920年にはゴールデンレトリバーという名称に統一されました。
[1]一般社団法人ジャパンケネルクラブ「ゴールデン・レトリーバー」
ゴールデンレトリバーの性格

(写真提供:Instagramユーザー@sea.mie0731さん)
ゴールデンレトリバーといえば、どんな印象がありますか?
「優しい」「家族愛がある」などでしょうか。
「ゴールデンレトリバーを飼っている家族」という構図をドラマやCMなどでもよく見かけるように、その印象通り優しく愛情深い性格のゴールデンレトリバーは、多くの人に愛されている犬種でもあります。
純粋犬種の犬籍登録や血統書の発行を行なっている一般社団法人ジャパンケネルクラブ(以下、JKC)の発表によると、2024年のゴールデンレトリバーの登録頭数は7,275頭[2]!
139種の全犬種のうち10位で、大型犬では1位[2]なんです。
1月~12月までの1年間でJKCの血統データに新規登録され、血統書が発行された犬の頭数。
1年間分の頭数しか日本にいないというわけではなく、犬の寿命として仮定した期間の登録頭数を積算することで、おおよその頭数が把握できます。
ここではそんなゴールデンレトリバーの性格をもう少し詳しく見ていきましょう。
一般的にいわれている性格をご紹介しますが、その子によって性格は異なりますので、実際に接する際やお迎えを検討する際には、しっかりとその子の個性を見てあげてくださいね!

筆者が、ゴールデンレトリバーと聞いて真っ先に思い浮かんだのは、映画『僕のワンダフル・ライフ』。
家族愛がテーマのとても素敵な話なのですが、そのせいか、ゴールデンレトリバー=とにかく愛情深くて人に寄り添ってくれる犬種というイメージがあります。
[2]一般社団法人ジャパンケネルクラブ「犬種別犬籍登録頭数」
優しくて友好的

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鳥猟犬として活躍していた歴史から、人と行動を共にしたり作業をしたりするのが好きで、とても人懐っこい犬種です。
また、嫌なことをされても辛抱強く、怒りづらいといわれています。
飼い主さんはもちろん、他の犬や動物とも友好的な関係を築きやすく、性格はとても穏やか。
そのため、警戒心が薄めで番犬にはあまり向きません。
愛情深い

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飼い主さんやその家族と一緒に過ごすのを好み、遊び好きでもあります。
体の大きな大型犬ですが、温厚な性格と相まったその愛情深さから、子どものいる家庭にも向いているでしょう。

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頭が良い

公益社団法人日本警察犬協会では、警察犬に適しているとして7犬種を指定、公表していますが、ゴールデンレトリバーもその中の一種です[3]。
警察犬として活躍するためには物覚えが良く、賢くなければいけません。
警察犬に適しているとされる7犬種は以下の通り。
- エアデールテリア
- ボクサー
- コリー
- ドーベルマン
- ゴールデンレトリバー
- ラブラドールレトリバー
- ドイツシェパード
ゴールデンレトリバーは人の言葉をよく理解し、判断力や洞察力にも長けているといわれており、とても利口で頭が良い犬種です。
頭の良さを生かして、警察犬だけではなく盲導犬や聴導犬、セラピードッグなどとしても活躍することが多いです。
[3]公益社団法人日本警察犬協会「警察犬協会指定犬種」

ゴールデンレトリバーの見た目の特徴

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ゴールデンレトリバーの体高と体重は以下の通りです。
【性別によるゴールデンレトリバーの体高と体重の違い】
体高と体重 | オス | メス |
---|---|---|
体高(地面から肩甲骨の上あたりまでの垂直距離) | 56~61㎝ | 51~56㎝ |
体重 | 29.5~34kg | 25~29.5kg |
体長(前胸の端からおしりの端までの長さ)は体高よりやや大きく、体高と体長のバランスは大体11:12です。
被毛は犬種名の通り、光沢のあるゴールドの一色のみで、一般的に黒い毛が入ったり模様が入ったりすることはありません。
ただ、同じゴールドでも、クリームっぽいものや赤みのあるものなど色調はさまざまです。
全体的に長い毛で覆われていて、表面には硬めの上毛があり、その下に柔らかくボリューミーな毛があるダブルコートです。
被毛が上毛(オーバーコート)と下毛(アンダーコート)の二重になっていること。
密集している被毛は撥水効果も抜群!
撃ち落とされた水鳥を泳いで回収していた名残がここにも見られますね。
耳は垂れていて、アーモンド形の目をしています。
ゴールデンレトリバーと過ごす際の注意点
やっぱり穏やかな性格で愛情深いんだ!
子どもとも仲良くなれそうだし飼いたいな…
ここまで読んでいただいた方の中には、そうお考えの方もいるかもしれません。
しかし、もちろんゴールデンレトリバーをお迎えするには注意すべきこともたくさんあります。
ご自身の生活スタイルとお迎えした後の生活、しつけやこまめなお手入れなど…
家族に迎え入れる前にしっかりと把握しておかなければいけません。
ここでは、ゴールデンレトリバーと過ごす際に主に気を付けてほしい点を5つ解説します。
家族として、責任を持って、楽しくゴールデンレトリバーと過ごせるようにチェックしておきましょう。
生活スタイル

(写真提供:Instagramユーザー@sea.mie0731さん)
ゴールデンレトリバーの性格は、解説した通り、誰かと行動を共にしたり遊んだりするのが大好き!
特に飼い主さんやその家族と一緒に過ごすのが好きなのですが、裏を返せば、寂しがり屋で独りぼっちはちょっと苦手。
飼い主さんが家を空けることが多かったり、犬だけで留守番したりする場面が多くなりそうな家庭には不向きかもしれません。
しつけ

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非常に頭が良く、従順な犬種なので、比較的しつけのしやすい犬種だといえるでしょう。
人とスキンシップを取ったり愛情を示されたり褒められるのが好きなので、褒めて伸ばすようなしつけが向いています。
一方で、飼い主さんと遊ぶのがうれしくて、子犬のうちはやんちゃで興奮しやすい部分も。
ゴールデンレトリバーは大型犬なので、成長と共に体は大きく、力も強くなり、じゃれているつもりが誰かにケガをさせてしまう恐れもあります。
飛びつきや甘噛みなどは子犬のころからの徹底したしつけが大切です。
飼い主さんの手や足を甘噛みした時には、代わりに噛んでもいいおもちゃなどを与えて、人の手足で遊ぶことを覚えさせないようにしましょう。
散歩

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基本的には活動的な犬種のため、運動不足にならないよう注意してあげましょう。
1日に2回、最低でも各30~60分程度は散歩をするようにしてくださいね。
ドッグランのような場所は思い切り運動できる上に、他の犬と遊ぶのが大好きなゴールデンレトリバーにとっては最高です。
また、泳ぎが得意な子も多く、犬も泳げるプールなどに連れて行くのもおすすめです。
お手入れ

ゴールデンレトリバーは、被毛が上毛と下毛の二重構造になっているダブルコートの犬種です。
ダブルコートの犬種は、アンダーコートで体温調整をしています。
夏に向けた春の換毛期には密度の低い涼しいアンダーコートが生え、冬に向けた秋の換毛期には密度の高い保温性に優れたアンダーコートが生えてきます。
一年を通して抜け毛の多い犬種ではありますが、特にこの換毛期にはかなりの毛が抜け落ちます。
床に落ちた毛をそのままにしておくと衛生的に良くないだけでなく、犬が踏んだ時に滑って転んでしまう可能性も。
「フローリングに犬の毛が落ちていると滑りやすさが2倍になる」という実験結果も出ています[4]。
愛犬と飼い主さんの思わぬケガを防ぐためにも、気が付いた時にすぐ掃除ができるようにコロコロなどの粘着式のクリーナーを何個か部屋に置いておくなどの対策が重要です。
ブラッシングやシャンプーといったこまめなお手入れも、大切な対策の一つですよ。
【ゴールデンレトリバーのお手入れ方法とポイント】
お手入れ方法 | ポイント |
---|---|
ブラッシング | 抜け毛が多い犬種のため毎日のブラッシングが必要こまめなブラッシングは抜け毛対策にも、ゴールデンレトリバーの美しい被毛を保つためにも有効毛がもつれている部分をまず指でほぐし、その後ブラシを使って毛先からとかす全身をとかした後はコームを使い、毛並みに沿ってとかす毛が引っかかるところがある場合には無理に引っ張らず、丁寧に行う |
シャンプー | 月に1~2回が目安ブラッシング後、犬用のシャンプーを使用して行うゴールデンレトリバーの被毛には油分があるため、汚れをしっかりと落とすためには皮膚まで水を行き渡らせる |
トリミング | ダブルコートの犬種は一定の長さで被毛の成長が止まるため、トリミングの必要はない飼い主さんがトリミングしたいと思ったらサロンに連れていく程度でOK |
[4]株式会社ディライトクリエイション「犬の毛の滑りやすさに関する実験」(2017年4月25日、北里大学 名誉教授 馬渕清資 博士 共同実験)
かかりやすい病気

垂れ耳といった特徴や遺伝的な影響から、ゴールデンレトリバーがかかりやすいといわれている病気がいくつかあります。
ここでは大きく分けて5種類の病気について解説しますが、これ以外にも普段の愛犬の様子と少しでも違う部分や異変がある場合には病院を受診するようにしましょう!
【ゴールデンレトリバーがかかりやすい病気】
病気 | 具体的な病名と症状 | 予防法や対処法 |
---|---|---|
皮膚の疾患 | アトピー性皮膚炎 ・遺伝的にアトピー皮膚炎が発症しやすい傾向にある ・口や目、耳、腰などにかゆみや赤みが出る ・症状が悪化すると、脱毛症状や皮膚が黒ずんで厚くなる場合もある | ・予防が難しい病気のため、発症後の悪化防止が重要 ・かゆみ止め薬の使用やシャンプーで皮膚のコンディションを保つことが大切 |
マラセチア性皮膚炎(別名:脂漏性皮膚炎) ・免疫や代謝の低下により、常在菌であるマラセチアが異常繁殖してしまう ・アトピー性皮膚炎が症状を悪化させる原因になる場合もある ・かゆみや赤みにプラスして皮膚のべたつきが出る ・慢性化してしまうと、皮膚が黒ずみ厚くなる恐れがある | ・マラセチアのエサになる皮脂をコントロールすることで予防可能 ・薬用シャンプーなどを使用して皮膚のコンディションを保つことが大切 | |
膿皮症(のうひしょう) ・皮膚や粘膜にいる常在菌の異常繁殖によって発症 ・被毛が長いゴールデンレトリバーは湿気がたまりやすく、暖かくなってくる春や夏に発症しやすい ・アトピー性皮膚炎が発症のきっかけになる場合もある ・赤い発疹やかゆみが出る ・悪化すると脱毛症状やフケが出る場合もある | ・シャンプーやブラッシング、部屋の掃除などをこまめに行い、体や住環境を清潔に保つことで予防可能 | |
耳の疾患 | 外耳炎 ・外耳という、耳の入り口から鼓膜までの部分に起こる ・炎症耳のかゆみや赤みが出る ・耳垢の増加や臭いなども ・かゆみによって、頻繁に耳をかいたり地面に耳をこすりつけたり、頭を振ったりする様子が見られる | ・垂れ耳のゴールデンレトリバーは耳に湿気がこもって細菌が繁殖しやすいので耳を清潔に保つことが大切 ・定期的に耳をコットンで拭くことで、予防だけでなく異変にも気付きやすくなるのでおすすめ |
耳血腫 ・耳をかく、頭を振るなどの動作による耳への刺激で皮膚と軟骨が離れてしまい、耳たぶの内側に血がたまってしまう ・長期化すると、耳たぶの軟骨(耳介軟骨)が変形してしまう恐れがある | ・外耳炎のかゆみによって耳をかくなどの動作が増えている可能性もあるため、耳を清潔に保ち外耳炎を予防することで耳血腫も予防可能 | |
消化器の疾患 | 胃捻転 ・食事などで胃が大きく膨らんだ(胃拡張)後に、胃がねじれることで発症 ・胃がねじれると周りの臓器が圧迫されたり血液の循環が妨げられる ・胸からお腹部分が膨らみ、吐き気がある ・吐きたそうなのに吐けない様子 ・首を下げて座り込み苦しそうにする ・呼吸をしづらそうにする | ・1回の食事で多くの量を与えないことや早食い、食後すぐの運動を避けるなどの予防が大切 ・治療が遅れると非常に危険なので、異変があれば夜間であってもすぐに診察してもらう必要がある |
全身性の疾患 | 骨肉腫 ・大型犬や超大型犬が発症しやすいといわれている骨のがん ・特に4本の足の骨に多く見られ、前足では肘から遠い部分、後ろ足では膝に近い部分に発症しやすい ・肺への転移が多く見られる傾向にある | ・ゴールデンレトリバーは悪性腫瘍発生率が高いという研究結果[5]もある ・癌や悪性腫瘍の原因は明らかになっていないため予防方法がない ・早期発見や定期検査が重要 ・癌は血液検査だけでは発見が難しく、検査費用も高額なので、シニア期(7歳以降)になったら3カ月〜半年に1度、動物病院での診察がおすすめ |
リンパ腫 ・体内に入ってきたさまざまな異物から体を守っているリンパ球のがん ・体の表面のしこりをきっかけに発覚することが多い | ||
血管肉腫 ・血管の内側にある細胞のがん ・進行がとても早く、転移率も高い ・血管の多い脾臓や心臓、肝臓などで発生しやすい | ||
筋骨格の疾患 | 股関節形成不全 ・股関節の発育や発達の異常によって、歩行にも支障が現れる病気 ・両足の発症がほとんどだが、まれに片足だけに症状が見られる場合もある ・大型犬は短期間で体が大きく育つため、成長期に骨の成長と筋肉形成のバランスが崩れて発症しやすい ・一般的に横座りや腰を振ったような歩き方(モンローウォーク)が見られる | ・遺伝的な要因が大きい病気 ・一方、食事や運動不足による肥満、成長期の激しい運動や関節に負担のかかる生活など、環境的要因によっても発症するリスクはある ・股関節に負担がかからないよう、食生活などで適切な体重管理を心がけることが大切 |
[5]駒澤 敏「平成25年度岐阜県犬腫瘍登録データによる家庭犬の腫瘍発生状況」(日本獣医師会雑誌 69,2016年)
ゴールデンレトリバーについてのまとめ

(写真提供:Instagramユーザー@sea.mie0731さん)
ゴールデンレトリバーは、穏やかで人懐っこく、家族や子どもとも良好な関係を築きやすい犬種です。
友好的な性格に加えて優しさと賢さも兼ね備えており、警察犬や盲導犬として活躍したり、家族の一員として寄り添ってくれたりする姿は、たくさんの人の心を惹きつけています。
しつけのしやすさなど多くの魅力がある一方で、大型犬ならではのしつけの責任や体力、お手入れの手間、かかりやすい病気など、しっかりと向き合うべきポイントも少なくありません。
- 寂しがり屋な一面もあるため留守番が多い家庭ではストレスを感じてしまう可能性もある
- 大型犬なので、万が一のことがないようしつけはしっかりと行う(褒めて伸ばすスタイル)
- 活動的な犬種のため、運動不足にならないように注意する
- 抜け毛の多いダブルコート特有のこまめなお手入れ
- かかりやすい病気を把握し、様子を常にチェックしておく
など、性格の良さや飼いやすさだけでなく、生活環境やライフスタイルに合っているかを冷静に見極めて家族全員で関わる姿勢が大切です。
愛犬から向けられる愛情に負けないほどの愛情と覚悟がある方にとって、ゴールデンレトリバーと暮らす日々は、笑顔と癒しに満ちたかけがえのない時間になるはずです!