
「最近、愛犬のうんちが出にくそう…」
「トイレで踏ん張っているけど、なかなか出てこない…」
そんな様子を見て、もしかしたら便秘かもしれないと心配になっていませんか?
犬も人間と同じように、食事や体調の変化によって便秘になることがあります。
放っておくと悪化し、体調不良の原因になってしまう恐れも。
「そういえば朝ご飯にヨーグルトを食べたらお腹の調子が良かったかも!」
そんな飼い主さんの体験から、犬にヨーグルトをあげてみようと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
ヨーグルトは犬に食べさせられる食品ですが、本当に効果的なのでしょうか?
この記事では、犬の便秘の原因や症状を解説しつつ、ヨーグルトが便秘解消に役立つ理由や犬に食べさせる際の注意点を詳しくご紹介します。
この記事を書いた人
犬の便秘について知ろう

そもそも、便秘の定義とはなんなのでしょうか。
日本消化管学会の作成する「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」では、人の便秘を以下のように定義しています。
本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態。
分かりやすくすると「本来排泄されるべき便が、コロコロしたウサギのふんのような状態だったり、硬かったり、なかなか出なくてすごく踏ん張ったり、出しきれていない感じがしたり、お腹が苦しかったりなど排便しづらいなと思っている状態」でしょうか。
排便がない具体的な日数は定められていないようです。
犬の便秘についても人と同様に、「具体的に何日排便がなかったら便秘」という定義はありませんが、目安としては、丸2日〜3日以上排便がない場合に便秘と診断されることが多いようです。
日数よりも重要なのは、普段の排便の回数や様子と違うところがないかということ。
ここでは、犬の便秘の原因や症状、リスクについてご紹介します。
いつもと違う状態にすぐ気付けるよう、しっかりとチェックしておきましょうね。
便秘の原因として考えられるもの
犬の便秘はさまざまな原因が考えられます。
- 食事内容:ドライフードをたくさん食べて水分をあまり取らない、フードが合っていない、食物繊維を過剰に取っているなど
- 腸の動きの低下:加齢、運動不足、腸内環境や自律神経の乱れなど
- 病気:甲状腺機能低下症、会陰ヘルニア、前立腺肥大、腸閉塞など
- けが:排便の姿勢をとると痛みがあり、排便を我慢してしまう
上記のような原因のほか、腎臓病の時に飲む薬や下痢の時に飲む薬の影響で便秘になることもあります。
便秘の可能性がある症状
- 普段と比べて排便回数が少ない
- トイレで長くいきんでいる
- 便が乾燥して硬い
- 便がいつもより小さく、においもきつい
などの排便回数や見た目は分かりやすいですが、犬の様子を観察することも重要です。
また、以下のような様子が見られる場合には、何か排便に関して問題を抱えているサインです。
- 何度もトイレに行こうとする
- 排便の姿勢になるが便が出ない
- 排便時に鳴き声をあげる
加えて、排便がない状態が長く続いている時には、元気がなくなったり食欲が落ちたりすることも。
さらには、一生懸命便を出そうとして、いきみ過ぎて吐いてしまうこともあるので注意しましょう。
普段の排便の様子と違うな、と感じた際にはなるべく早く病院を受診するようにしてくださいね。
犬の便秘、放置しないで!
便秘をそのまま放置し、便がたまった状態が続いてしまうと、腸が伸びてしまう「巨大結腸症」になる可能性があります。
軽度であれば下剤などで対処できますが、開腹手術が必要になる場合もあります。
猫での発生が多いといわれていますが、犬でも起こり得る症状のため注意が必要です。
排便に関して異変があればすぐに相談できるよう、普段から信頼できる獣医さんを見つけておくことが大切ですね。
犬の便秘解消にヨーグルト?

「愛犬の便秘を解消するために、普段から気を付けられることはないかな?」
「便秘解消といえばヨーグルトだけど、犬も食べられるの?」
「犬に牛乳ってあげないほうが良かった気がするんだけど、ヨーグルトもやめた方が良い?」
たしかに、「最近便秘気味かも…」と感じた時にはヨーグルトを食べようと思う人が多いかもしれません。
結論から述べると、犬にヨーグルトを食べさせても大丈夫です!
ですが、注意すべき点もありますので、しっかりと確認しておきましょう。
ヨーグルトがなぜ便秘に良いのか
なぜ、ヨーグルトは便秘に良いとされているのでしょうか。
ヨーグルトには乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌が含まれています。
善玉菌には腸内環境を整える働きがあり、これは人と同じように犬にも効果があるといわれています。
善玉菌によって悪玉菌の繁殖が抑えられ、便秘の解消が期待できるのです。
体にとって良い働きをする腸内細菌を「善玉菌」といいます。
善玉菌は腸内に長くとどまることができず、便として排泄されるという性質があるため、良い腸内環境をキープするためには、善玉菌を摂取し続ける必要があります。
一方、体に良くない影響を与えるといわれている腸内細菌は「悪玉菌」といいます。
一般的に、悪玉菌が増えると腸の動きが鈍り、便秘になりやすくなるといわれています。
犬にヨーグルトをあげるメリットとデメリット
「犬に牛乳はあげない方が良い」と聞いたことはありませんか?
牛乳には「乳糖」と呼ばれる成分が含まれています。
この乳糖を分解するためには「ラクターゼ」という消化酵素が必要ですが、個体差はあるものの、犬はラクターゼの分泌量が少ないといわれています。
そのため、乳糖の分解が不十分になり下痢を引き起こしてしまうのです。
この症状は「乳糖不耐症」と呼ばれています。
牛乳がだめなら、ヨーグルトもだめなのではないかと心配になりますよね。
でも、大丈夫。
ヨーグルトを発酵させる過程で、2〜4割程度の乳糖が分解されるので、犬に食べさせることができます。
- 腸内環境が整う:前述した通り、ヨーグルトには善玉菌が含まれているため、腸内環境を整える効果が期待できます。腸内環境が整うと、便秘や下痢など消化器官トラブルが改善します。
- 犬の健康を維持できる:腸内の善玉菌が増えることで、免疫力が高まり、病気にかかりにくくなるといわれています。
- 消化を助ける:ヨーグルトにはさまざまな酵素が含まれており、消化を助ける効果があるといわれています。
- 食いつきが良くなる:犬の好みによりますが、フードにヨーグルトをトッピングすると食いつきが良くなる場合もあります。
- 口臭予防:犬の口臭の原因に「腸内環境の悪化」や「歯周病」があります。乳酸菌は歯周病の原因である細菌の増殖を抑える効果もあります。
また、ヨーグルトを与えることでエイジングレベル(犬の外観や体臭、生活習慣の様子)が改善する可能性があるという論文も発表されています[1]。
[1]国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所「Lactococcus lactis H61の投与によるイヌのエイジングレベルの改善の可能性」
- 乳糖不耐症のリスク:ヨーグルトを発酵させる過程で乳糖が分解されていることは前述した通りです。しかし、全ての乳糖が分解されるわけではないので、乳糖不耐症のリスクがゼロになったわけではありません。
- 肥満の原因:ヨーグルトには脂肪も含まれています。過剰に摂取してしまうと使われなかった脂肪分が体内に蓄積されて肥満の原因になります。
- 食物アレルギーのリスク:ヨーグルトに含まれているタンパク質に免疫機能が過剰に反応してしまい、アレルギーを起こすことがまれにあります。
- 持病のある犬は食べられない:腎臓や心臓に持病があり、タンパク質の摂取制限を指示されている犬には与えないようにしましょう。また、脂肪分も多いため、胆のうやすい臓が弱っていると診断されている犬にも与えない方が良いでしょう。
デメリットをきちんと理解したうえで、初めて食べさせる時には少量をあげるようにする、食後の様子に変化がないか観察するなど気を付けるようにしましょう。
ヨーグルトをあげるときの注意点

「犬にヨーグルトを食べさせられるんだ!」
「便秘予防も兼ねてちょっとあげてみようかな…」
そう思った方の中には、
「ちょっと味がついてるヨーグルトもあげれるのかな?」
と疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。
ヨーグルトをあげる際には、上記で説明したようなデメリットを理解しておくことはもちろん、その他にも注意すべきポイントがあります。
実際にこれからヨーグルトをあげようとしている方へ向けて、注意点をまとめましたのでぜひチェックしてみてください!
プレーンヨーグルトを選ぼう
人の感覚で考えると、「フルーツ入りのヨーグルトがおいしそう!」と思いますよね。
しかし、犬に食べさせるヨーグルトはフルーツなどの入っていない、無糖のプレーンヨーグルトを選ぶようにしましょう。
低脂肪タイプや無脂肪のヨーグルトだとさらに良いでしょう。
フルーツなどのトッピングの入っているヨーグルトは、糖分が多いという理由以外にも、ブドウなどの犬が食べてはいけないものが入っている可能性があります。
無糖と書かれているヨーグルトでも、甘味成分としてキシリトールを使用しているものもあります。
キシリトールも犬が摂取してはいけないものの一つなので十分注意してください。
犬用のヨーグルトを選ぶのもおすすめですよ。
初めてヨーグルトを食べさせる時
ヨーグルトを初めて食べさせる時には、デメリットで述べたような乳糖不耐症のリスクやアレルギーのリスクに注意することが重要です。
最初はごく少量から食べさせるようにして、食後も下痢や嘔吐、皮膚の痒みなどのアレルギー反応が起きていないかを観察するようにしましょう。
アレルギー反応が見られた場合、すぐにヨーグルトを食べさせるのをやめて、病院を受診してください。
食べさせる量に気を付けよう
犬が一日にどれだけのヨーグルトを食べて良いのかという正式な調査データはありません。
しかし、ヨーグルトには脂肪も含まれているので、過剰摂取は肥満の原因にもなってしまいます。
また、一度に大量のヨーグルトを食べると下痢になってしまう可能性も。
ヨーグルトはおやつの一つと捉え、一日に必要なカロリーの10%程度に抑えるようにしましょう。
【犬の一日に必要なカロリーの求め方】

[1]栃木県動物愛護指導センター「愛犬と愛猫へのフード量はどう計算するの?」をもとに執筆者制作
例えば、体重が30kgの避妊・去勢済みの成犬の場合、897(RER)×1.6=1,435で、1日に必要なカロリーは1,435kcalになります。
他におやつをあげる場合にはその分ヨーグルトの量を減らしたり、おやつをあげた分主食の量を減らしたりして、カロリーコントロールも忘れずに行ってくださいね。
まとめ
犬の便秘は食事・運動・生活環境などさまざまな要因が関係していますが、病気が隠されている可能性もあるため注意が必要です。
放置してしまうと健康リスクも高まるため、早めに便秘を解消してあげる、病院に連れて行くなどの適切な対応をとるようにしましょう。
犬の便秘対策としてヨーグルトを食べさせられますが、メリットとデメリットを理解することが大切です。
ヨーグルトは腸内の善玉菌を増やし、便秘解消が期待できる食品でした。
しかしその一方で、犬によって合う・合わないがあるため様子を見ながら食べさせるようにしましょう。
実際に食べさせる際には、プレーンヨーグルトを選び、あげすぎに注意して、初めての場合は少量から試すことを忘れないでくださいね。
愛犬の体調を考えながら、無理のない範囲でヨーグルトを取り入れ、健やかな毎日をサポートしてあげましょう!
この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)
国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。
資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級