
「ダルメシアン」と聞くと、白地に黒い水玉模様が思い浮かびませんか?
映画や絵本などでは白黒の個体が登場することが多く、「ダルメシアン=白黒」のイメージが日本でもすっかり定着しています。
でも実は、ダルメシアンには“茶色”の水玉模様をもつ子もいるんです!
この記事では、そんな“レアカラー”のダルメシアンに加えて、あまり知られていないダルメシアンの犬種としての特徴や、飼う際に知っておきたいポイントまで、まるっとご紹介します。
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ダルメシアンには2種類のスタンダードカラーがある
ダルメシアンの毛色にはいくつかのバリエーションがありますが、JKC(一般社団法人ジャパンケネルクラブ)で犬種標準(スタンダード)に認められているのは以下の2種類です。
日本国内における純粋犬種の犬籍登録、血統書の発行、災害救助犬の育成、犬の正しい飼育指導、ドッグショー、訓練競技会、アジリティー競技会、フライボール競技会などの開催、愛犬飼育管理士、トリマー、ハンドラー、訓練士の公認資格の認定などを行う国際的な畜犬団体
一般社団法人ジャパンケネルクラブが定めた繁殖指針。
その犬種の姿形、能力、性質などを保存するために定めたもので、繁殖指針として優良な犬を保存していく上で重要な資料となっている。

▽ ブラック・スポット・バラエティー
もっとも一般的でポピュラーなカラーです。
白い被毛にくっきりと黒い水玉模様が入るタイプで、映画『101匹わんちゃん』のダルメシアンはこちらのタイプですね。
この黒い斑点は優性遺伝子のため、片親がブラックの遺伝子を持っていれば、子犬にもその特徴が現れやすくなります。

▽ レバー・スポット・バラエティー
こちらは濃い赤褐色=レバー色の斑点を持つタイプ。
見た目は茶色の水玉模様で、ブラックに比べてやわらかく落ち着いた印象です。
このレバー色は劣性遺伝子のため、両親ともにレバーの遺伝子を持っていなければ、子犬には現れません。
そのため、数が少なく“ちょっとレア”な存在なんです。
劣性遺伝子とは、遺伝の際に形質があらわれにくい遺伝子のことを指します。
対して、優性遺伝子は形質があらわれやすい遺伝子です。
そのため、優性遺伝子と劣性遺伝子の両方を持っている場合は、優性遺伝子の形質、ダルメシアンの場合は黒い斑点が表れます。
こうした関係がわかりやすい例として、血液型があります。
A型やB型の遺伝子は優性で、O型の遺伝子は劣性のため、A型とO型の遺伝子を持っている場合はA型としてあらわれる、といった仕組みです。
「劣性」とあるので遺伝子として劣っているのではと勘違いする方も多いですが、この二つの遺伝子に性質の優劣はないそうです。
[1]和田 勝「基礎から学ぶ生物学・細胞生物学」(羊土社 2006)
スタンダード以外の珍しいカラーも存在する?
スタンダードとしてはブラックとレバーの2色だけですが、まれに以下のようなカラーの子も生まれることがあります。
- レモン(明るい黄色)
- オレンジ
- ブルー(青みがかったグレー)
- クリーム
- トリコロール(3色持つタイプ)
これらの色の子はドッグショーなどには出場できませんが、家庭犬としてはもちろん愛される存在。
見た目の個性が強く、希少性を求めるファンの間では根強い人気があります。
ダルメシアンってどんな犬?意外と知らない基本情報

カラーの話題から少し離れて、ここでダルメシアンの基本的な特徴も見てみましょう。
□ 名前の由来:クロアチア(ダルマチア地方)
ダルメシアンははっきりとしたルーツがわかっていない犬種です。
古代エジプトの彫刻や16世紀に描かれた絵画にもその姿が確認されており、長い歴史があることがわかっています[2]。
そんなダルメシアンの名前のルーツは、クロアチアの「ダルマチア地方」。
古くから馬車の伴走犬や、馬が牽引する消防馬車の護衛犬として活躍していました。
[2]一般社団法人ジャパンケネルクラブ「ダルメシアン」
□ 性格:陽気で活発、でも繊細な一面も
ダルメシアンはとても元気で運動好きな性格です。
人懐っこく明るい反面、環境やストレスに敏感な一面もあり、繊細な子が多いともいわれています。
しっかり信頼関係を築くと忠誠心が強く、家族にとって頼もしいパートナーになります。
□ 体格:中型犬〜大型犬の中間
- 体高:50〜60cm前後
- 体重:20〜30kgほど
引き締まった筋肉質の体型が魅力。
スラリとしたシルエットに、あの水玉模様が映えるんですよね。
□ 被毛:短毛で抜け毛が多い
意外と知られていないのが、抜け毛の多さ。
短毛ながら、季節を問わず抜け毛が多い犬種です。
掃除機の出番が増えることは覚悟しておきましょう。
□ ダルメシアンの水玉模様って、生まれたときからあるの?
答えはNO!
実はダルメシアンの子犬は、生まれたときは真っ白なんです。
生後2週間ほどすると、少しずつ水玉模様が現れ始めます。
「うちの子、どんな模様になるんだろう?」と、成長を楽しみに待つのも醍醐味のひとつ。
また、斑点の大きさや数、位置はひとりひとり違うため、まさに“世界にひとつだけの模様”になります。
ダルメシアンを飼うときに気をつけたいこと

元気で個性的なダルメシアンですが、飼うにあたってはちょっと注意が必要です。
□ しっかり運動できる環境が必要
ダルメシアンはとにかく体力がある犬種。
毎日2回、1〜2時間程度の散歩やランニングが必要です。
運動不足になるとストレスがたまり、問題行動につながることも。
走るのが好きな人や、アウトドア派の家庭にはぴったりです。
□ トレーニングは根気よく
知能が高いため、しつけたことはよく聞く一方で、ちょっと頑固なところもあります。
誤ったしつけをしてしまうと、頑固な面が邪魔をして、軌道修正が困難になることも…。
ゲームのルールなどの楽しいことはすぐに覚えてくれるので、遊びを取り入れたトレーニングが効果的です。
信頼関係を大切にするタイプなので、焦らずじっくり向き合いましょう。
□ 尿路結石に注意
ダルメシアンは、尿酸の代謝が少し特殊なため、尿路結石になりやすい傾向があります。
尿路結石とは、尿中のミネラルが結晶化して尿路に石を作る病気で、主な症状は次の通りです。
- 血尿や頻尿、排尿時の異常:血の混じった尿が出たり、頻繁にトイレに行ったり、排尿時に痛みや違和感を感じることがあります。
- 全身症状:発熱や食欲不振といった、体調全体に影響が出ることもあります。
予防のためには、水分をしっかり摂らせること、たんぱく質の量やバランスに配慮した食事を心がけることが大切です。
□ 聴覚障害になりやすい傾向がある
ダルメシアンは遺伝的に聴覚障害を持ちやすい犬種ともいわれています。
ブルーアイ(青い目)の子は聴覚障害を持っている確率が高く、逆に模様の面積が大きな子は聴覚障害が起こりにくいとも言われていますが過信は禁物。
- 名前を呼んでも反応がない
- 大きな音でも寝たまま起きない
- 後ろから触られるとびっくりしてしまう(ときには噛んでしまうことも)
障害は性別や模様の色に関係なく発生する可能性があるので難聴かなと思ったら早めに動物病院で検査をしましょう。
聴覚障害が先天性(生まれつき)の場合、犬自身はそれが当たり前の世界で生きているため、特に不自由を感じないこともあります。
一方で、後天性(生後に起きる)の場合は、音のある世界から突然音が消えることで、不安や混乱、臆病な行動が見られることも。
そのような場合は、ハンドシグナル(手振り)など視覚的な合図でのコミュニケーションを取り入れるのがおすすめです。
これは、聴覚障害のある犬だけでなく、騒がしい場所にいるときや老犬になって耳が遠くなったときにも非常に役立ちますよ。
□ 皮膚疾患(ダルメシアン・ブロンズ症候群)
短毛で肌が敏感なため、環境や食事に気を配る必要があります。
特に「ダルメシアン・ブロンズ症候群」と呼ばれる皮膚トラブルは、ダルメシアン特有の疾患です。
アレルギーやストレス、湿度や気温などの環境要因によって引き起こされるとされており、
かゆみ、毛の脱落、毛の変色、化膿などの症状が見られます。
頭部の先端、首の下、背中、脇腹周辺に小さな蕁麻疹のようなブツブツが出ることが多く、
初期症状を見逃さずに対応することが大切です。
上述の通り毛の変色を伴うこともあるので、体毛の色なのか、それとも皮膚疾患で変色してしまったのかをしっかり見極めるのも大切です。

まとめ:ダルメシアンは“知れば知るほど魅力的な犬種”
映画『101匹わんちゃん』のヒットをきっかけに、一時期は一般家庭でも広く飼われるようになったダルメシアン。
その見た目の可愛らしさやスタイリッシュな模様に惹かれて迎え入れたものの、思った以上の体力やしつけの難しさに戸惑い、やむを得ず手放してしまうケースも少なくありませんでした。
しかし、ダルメシアンという犬種の特徴をきちんと理解し、準備と覚悟をもって向き合えば、これほど魅力的なパートナーはほかにいません。
家族と一緒に走ったり遊んだりするのが大好きで、知的で感受性も豊か。
信頼関係を築くほどに、その奥深い魅力をどんどん感じられるようになるはずです。
ダルメシアンをお迎えするときは、しっかり学んで、愛情たっぷりで!
水玉の相棒との毎日は、きっとあなたの宝物になりますよ!
この記事の監修者

鮎川 多絵 (愛玩動物飼養管理士2級・ライター)
東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。
犬と私
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。