
ワンちゃんが海苔を食べているイメージって…あまりないですよね。
海苔は日本人にはとても身近な食材。
おいしいだけでなく、栄養が豊富で健康効果が高い食材です。
人間にとっては良いことがたくさんあるけれど、犬にも良い効果はあるのでしょうか?
そもそも食べさせて大丈夫?
今回は、犬に海苔を与えるメリットや注意点を紹介します。
この記事を書いた人
犬は海苔を食べても大丈夫!
結論からいうと、犬が海苔を食べても問題ありません。
海苔は犬の健康に良い効果がある
海苔にはミネラルやタンパク質、食物繊維、ビタミンCなどあらゆる栄養素が多く含まれており(2-1で詳しく紹介しています)、少量でも栄養補給ができる便利な食べ物です。
ただし、あまり大量に食べすぎてしまったり、特定の持病を持っていたりすると健康に支障をきたす場合もあります。
万が一、海苔を食べて何か異変が現われた場合には、速やかに動物病院へ連れていきましょう。

ヨーグルトなどの乳製品を受け付けない、もしくはアレルギーのある犬にとって、海苔は乳製品に代わり大事なカルシウム源にもなります。
また、海草をふやかした粘り気の中に含まれるフコイダンという食物繊維は、免疫力を上げる働きがあります。
犬が食べてはいけないもの

適量を与えている分には、基本的に海苔は犬に悪影響でないと分かりました。
では、犬が食べてしまわないように気を付けなければいけないものはどんな食べ物でしょうか?
犬に絶対に与えてはいけない食材と、与える際に注意が必要な食材をまとめました。
与えると命に関わる危険性のある食材
食材 | 症状 |
---|---|
チョコレート カフェイン | 下痢や嘔吐、喉の渇きの増加、腹部不快感、元気消失、筋肉の震え、不整脈、発熱、痙攣発作などがみられ、最悪の場合死に至ることもあります。チョコレートはカカオ成分が濃いほど危険です。 |
タマネギ ネギ | 胃腸炎、貧血、血尿、下痢、嘔吐、発熱などの症状を引き起こします。ニンニクやエシャロット、ニラ、らっきょうなどもタマネギやネギと同様の成分が含まれ危険です。加熱したり冷凍したりしても犬にとっての危険成分は消えません。 |
ぶどう レーズン | 中毒症状により急性腎不全を起こす危険性があります。原因についてはいまだ不明ですが、特に皮が危険といわれています。下痢、嘔吐、元気消失などの症状が現れます。 |
アルコール 生のパン生地 | お酒に含まれるエタノールやビールのホップにより、犬がアルコール中毒を引き起こす可能性があります。嘔吐、見当識障害、発熱、情動不安、荒い呼吸をする、筋肉の震え、痙攣発作などが見られ、臓器系の機能不全により死に至る場合もあります。生のパン生地に含まれる酵母は胃を拡張させ、組織損傷や呼吸困難につながるおそれがあります。 |
キシリトール入りの食品 | キシリトールはガムだけでなく、砂糖不使用のキャンディや歯磨剤、マウスウォッシュなどにも使用されている人工甘味料です。少量でも嘔吐や痙攣発作などを催し、血糖値の急激な低下により肝不全を引き起こすこともあります。死亡例もあるため、キシリトールが含まれるものは犬の近くに置かないようにしましょう。 |
鶏の骨 | 喉や消化器官などに刺さるリスクがあるため、犬に与えるのは大変危険です。特に鶏の骨はパイプのような形状が尖って刺さりやすくなっています。その他、サバや骨の太い魚も同様に注意が必要です。 |
与える際に注意が必要な食材
食材 | 症状 |
---|---|
生魚 お刺身 | 生魚やお刺身は基本的には犬に与えても問題ありませんが、生魚に含まれるチアミナーゼという酵素を大量に摂取してしまうと犬の体内のビタミンB1が破壊され、ビタミンB1欠乏症を引き起こします。これにより食欲不振、神経障害、手足のしびれなどの症状が出ます。また、生魚にはアニサキスなどの寄生虫が付いている可能性もあるため、食べさせる場合は鮮度を徹底し、必ず目視で確認しましょう[1]。 |
レバー (豚・鶏) | 基本的には食べても安全ですが、大量に食べさせるとビタミンAの過剰摂取により食欲不振や間接炎を発症することがあります。また、生のレバーには細菌や寄生虫がいる可能性があり食中毒の原因になりますので、必ず茹でたり焼いたりするなど加熱調理してから与えてください。 |
生肉 | 生肉には雑菌などが繁殖していることがあり、下痢や吐き気の原因になります。 |
生卵 (白身) | 卵はタンパク質を豊富に含み、犬の健康維持に有効な食材ですが、白身を与え続けるとビオチン(ビタミンBの一種)が不足し、皮膚炎や成長不良、無気力を引き起こす可能性があります。卵黄や、加熱した卵であれば問題ありません。 |
ほうれん草 | ほうれん草の大量摂取は、尿管結石のきっかけになることがあります。これはほうれん草に含まれりるシュウ酸が原因です。食べさせる場合は必ず茹でましょう。 |
煮干し | 煮干しには犬の尿路疾患の原因になるマグネシウムが多く含まれます。また、塩分が高いこともデメリットです。しかし、煮干しに豊富なカルシウムは犬に積極的に摂取させたい成分のため、おやつやフードのトッピング程度なら与えても良いでしょう。 |
[1]厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」
犬に海苔を与えるメリットとは?
犬は海苔を食べても大丈夫!ということは分かったものの、「わざわざ与える必要はある?」という気もしますよね。
人間にとって海苔は健康に良い成分が豊富に含まれているように、犬にとっても海苔はメリットの多い食べ物なんです。
海苔に含まれる栄養素
海苔には犬の健康維持に効果のある、様々な栄養素が含まれています。
主な栄養素は以下の通りです[2]。
- タンパク質
- 鉄分
- 葉酸
- ミネラル:カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄分など
- ビタミン:ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEなど
- 食物繊維:不溶性食物繊維、水溶性食物繊維
また、β-カロテン、タウリン、EPAなども海苔には含まれています。
[2]文部科学省「食品データベース 藻類/あまのり/焼きのり」
[3]東京都保健医療局 食品衛生の窓「栄養強調表示」
海苔が犬に与えるメリット

海苔に栄養素がたくさん含まれていることはわかりましたが、では具体的に犬にとってどんなメリットがあるのでしょうか?
犬が海苔を食べることで期待される健康効果を紹介します。
毛艶が良くなる
ビタミンの宝庫といわれる海苔には、ビタミンAやビタミンB1、ビタミンCなどが豊富に含まれています。
ビタミンは被毛の成長やコラーゲンの生成を促す効果があり、犬の被毛に艶が出るといわれています。
皮膚や粘膜の強化にも有効に働きます。
老化・がんを予防する
海苔に含まれるβ-カロテンには活性酸素の働きをほどよく抑える抗酸化作用があります。
活性酸素は体に必要なものですが、必要以上に働いてしまうと体内の細胞を傷つけ、老化やがんの原因になります。
活性酸素とは、呼吸によって取り込んだ酸素の一部が通常よりも活性化した状態のことです。
ヒトを含む哺乳類の場合、取り込んだ酸素の数%が活性酸素になるといわれています。
活性酸素は身体の働きを正常に保つために不可欠な一方で、強い酸化作用があり、老化や疲労などの原因にもなります。
[4]サントリーホールディングス株式会社「活性酸素とは?基本を理解して正しい知識を身につけよう」
疲労回復
ビタミンB1、B2は糖質をエネルギーに変える働きがあり、疲労回復に効果があります。
たくさん運動をして疲れた時や、食欲があまりなく疲れやすくなっている時などに与えると良いでしょう。
デトックス効果
海苔は食物繊維が豊富なため、犬の便秘対策に良いといわれています。
食物繊維は善玉菌を増やして毒素や悪玉菌を排出するため、腸内環境を整えることも期待できます。
解毒作用のあるビタミンCやコレステロール値を下げるタウリン、余分な塩分を排出するカリウムなども含まれており、犬の体内のデトックス効果があります。
犬に海苔を与えるときの注意点
犬にとってさまざまな良い効果のある海苔ですが、良い面ばかりとは限りません。
持病を抱えている場合や、与え方によってはデメリットもあるので注意が必要です。
こんな持病がある場合には注意!
犬の健康にとって海苔はさまざまな良い効果をもたらしてくれるものですが、以下で紹介する持病を持っている子には食べさせないようにしましょう。
腎臓病
腎臓病が進行して重度になった犬は、海苔に多く含まれるミネラルを排出する能力が低下していることがあります。
ミネラルのうちカリウムは腎臓に負担をかけるため、持病をさらに悪化させてしまう可能性があります。
甲状腺疾患
海苔にはヨウ素が豊富に含まれ、ヨウ素の摂りすぎは甲状腺機能を過剰に刺激し、症状を悪化させる恐れがあります。
尿路結石
健康な犬であれば常識的な量の海苔の摂取で尿路結石症を起こす心配はありませんが、すでに尿路結石を発症したことがある場合や、現在治療中である場合には、与えない方が安心です。
その他、海苔を与える際に乾燥剤も一緒に誤飲させてしまうケースもあるようです。
与える際には十分注意をし、万が一飲み込んでしまった場合にはすぐに動物病院に連れて行ってあげましょう。

適量を与える
何事も与えすぎには注意が必要です。
犬に与えてもよい海苔の量に明確な基準はありませんが、体重に対する必要なカロリーやミネラル量から換算すると1日あたりの目安は以下の通りです。
大判サイズの海苔を想定した目安です。
「大判サイズ」とは、海苔の基本サイズである縦21cm×横19cmの「全型(ぜんけい)」の1/8のサイズで、最も一般的な大きさです[5]。
[5]海苔で健康推進委員会「のりのサイズ」
犬の大きさ | 目安良 |
---|---|
超小型犬(体重5kg未満) | 1日あたり1/4枚まで |
小型犬(体重5~10kg) | 1日あたり1/2枚まで |
中型犬(体重10~25kg) | 1日あたり1枚まで |
大型犬(体重25kg以上) | 1日あたり2枚まで |
海苔は食物繊維が豊富なため、与えすぎると消化不良によりお腹を壊し、下痢になってしまうことがあります。
また、ごくまれに海苔アレルギーを持っている犬もいるため、初めて与える際には少量ずつを与え、様子をよく観察してあげてください。
適切な与え方
大きいままの海苔は消化しにくいだけでなく、口の中や喉に張り付いて窒息の原因になる危険があります。
必ず細かく刻んで与えるようにしてください。
スープに混ぜるなど、水分と一緒に与えるのも良いでしょう。
厚みがあり硬い海苔よりも、柔らかい海苔の方が食べやすくおすすめです。

海苔は栄養豊富ですが、栄養バランスが乱れないよう、あくまでおやつや主食のトッピングとして与えましょう。
また、味付けをしている海苔や塩分の多い海苔は与えるのを避けましょう。
塩分過多になり高血圧の原因になったり、魚介アレルギーの症状を引き起こす魚介エキス(エビやホタテ、鰹節など)が使用されている可能性があります。
犬に海苔を与える際には、必ず成分表示を確認してください。
まとめ
適切に与えれば、海苔は犬にとってメリットがある食べ物だということを紹介しました。
ただし、与えすぎはどんな食べ物でも危険があります。
犬に海苔を与える場合は、味付きのものや塩分の強いものは避け、まずは少量から与えて様子を見るようにしましょう。
愛犬の健康にとって有益な記事になっていればうれしいです。

岩井 ゆかり (JKC公認訓練士・ペット栄養管理士)
日本初、ウェディング専門ペットシッターサービス「銀座INPET」代表。飼い主と犬の教育に関わる。著書に「育犬ノイローゼかな?と思ったら読む本」などがある。年間2000頭の子犬育てに関わる。ペット損害保険会社に約10年勤務後、いいなみ株式会社を設立。犬と人とのよりよい共生社会を目指し、活動をしている。
犬と私
海外ドラマ「フルハウス」をテレビで見て以来、ゴールデンレトリバーが大好きです。大型犬を飼うことは、その人のライフスタイルにも影響を与えます。すべての純血種のルーツや歴史にオマージュを込めて、殺処分ゼロへの啓蒙を発信し続けます。
資格
犬猫行動アナリスト JKC公認訓練士 JKCトリマーA級 ペット栄養管理士 等
著書・出演
≪新聞、雑誌≫ブライダル産業新聞社、講談社CLASSY.、ゼクシィ
≪ラジオ≫ABC放送「日本の社長数珠つながり」FMサルース「月見おんぷのギャップラジオ」