
飼い主さんが食べようとしているものの上でフワフワと揺れる鰹節。
そんな鰹節を発見した愛犬が、香りにクンクン、目をキラキラ、

食べさせて!
と熱い視線を送る…。
鰹節って犬に食べさせても良いのかな?
食べさせても体調を崩さないかな?
と不安に思う飼い主さんも多いのではないでしょうか。
実は、鰹節は適量であれば犬にとって食べるメリットの多い食材なのです。
しかし、与え方を間違えると健康に悪影響を及ぼす可能性もあるため、注意点を理解し、正しい知識を持って与えることが大切です。
この記事では、鰹節の栄養素や食べさせることのメリット・デメリット、注意点を詳しく解説します。
おすすめの食べさせ方もご紹介するので、愛犬の健康を守りながら、一緒に「おいしいひととき」を過ごすコツを見ていきましょう!
この記事を書いた人
犬に鰹節を食べさせても大丈夫!

鰹節は犬に食べさせても大丈夫です!
鰹節は、さばいた生のカツオを煮詰め、いぶして乾燥させることで作られます[1]。
この製造工程において添加物を加えられない食材でもあります[1]。
しかし、鰹節はとても硬いので、塊のままではなく削られているものを食べさせるよう注意してくださいね。
鰹節には一体どんな栄養素が含まれていて、犬にあげることでどんなメリットがあるのか気になりますよね?
ここではその疑問を解決していきましょう!
[1]一般社団法人 日本鰹節協会「伝統食材”かつお節(鰹節)”とは」
鰹節の栄養素
たこ焼きの上に乗っている鰹節。冷奴の上に乗っている鰹節。
なんだかトッピング要素が強いイメージがあるかもしれません。
しかし、鰹節には意外と栄養素が含まれていることを知っていましたか?
●たんぱく質
たんぱく質は筋肉や骨、臓器、皮膚、血液などを構成するとても大切な成分です[2]。
鰹節の原料である生のカツオ100gあたりのたんぱく質が約25gなのに対し、鰹節100gあたりのたんぱく質は約75g前後と、3倍程度まで凝縮されています[3]。
●カルシウム
骨や歯の99%を構成する成分であるカルシウム。
鰹節はカルシウムも含まれているうえに、カルシウムの働きを補助するリンやマグネシウム、ビタミンDなどもバランスよく含まれている食材です。
●脂質
鰹節100gあたりの脂質は約3gと低脂質の食材です[3]。
さらにこの脂質を構成する脂肪酸のうち、半分以上は不飽和脂肪酸です。
この不飽和脂肪酸は体内で合成することができず、食事から摂取する必要がある「必須脂肪酸」ともいわれています。
脂質を構成する脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます[4]。
飽和脂肪酸
肉などの動物性脂肪に多く含まれ、悪玉コレステロールを増加させたり、循環器疾患のリスクを高めたりしてしまう。
不飽和脂肪酸
魚などの植物性脂肪に多く含まれ、中性脂肪や悪玉コレステロール値を下げる効果がある[5]。
●必須アミノ酸
たんぱく質を構成している小さな物質を「アミノ酸」と呼び、種類は20種類あります。
このアミノ酸は生き物が体内で作り出すことのできない「必須アミノ酸」と体内で作り出すことのできる「非必須アミノ酸」に分けることができます[6]。
【犬の必須アミノ酸と非必須アミノ酸】
必須アミノ酸 | バリン ロイシン イソロイシン リジン メチオニン フェニルアラニン トレオニン トリプトファン ヒスチジン アルギニン |
非必須アミノ酸 | チロシン システイン アスパラギン アスパラギン酸 グルタミン グルタミン酸 セリン プロリン グリシン アラニン |
人は「アルギニン」を体内で作り出すことができるため、上記の必須アミノ酸10種類から「アルギニン」を引いた9種類が「人にとっての必須アミノ酸」となります。
「非必須アミノ酸」という名前ではありますが、不要なものではなく大切な役割を担っています。
特に病気療養中の犬やシニア犬は、体内でアミノ酸を作り出す力も落ちてきているので、食事やサプリメントで補った方が良いケースもあります。
鰹節には「犬にとっての必須アミノ酸」10種類が全て含まれています。
アミノ酸は骨や皮膚だけでではなく、目や歯などを作る成分として体の中で働いています。
そして、生命を維持するための機能に優先して働きかけるという特徴があります。
例えば、皮膚がきれいでも心臓が正常に機能していなければ、生命を維持できません。
毛が抜けたり皮膚トラブルが起きたりするなど直接的に生命と関係が少ない部分から異常が出始めることが多いといわれています。
アミノ酸は生命維持にとても重要な栄養だということが分かりますね。
[2] LOTTE MediBalance 「カツオに含まれる栄養素とは?選び方やおいしく食べるコツも紹介」
[3]文部科学省 「食品成分データベース」
[4]農林水産省「脂質やトランス脂肪酸が健康に与える影響」
[5]サーカス動物病院「オメガ3脂肪酸で犬の皮膚を健康に|オメガ3脂肪酸の効果を徹底解説」
[6]厚生労働省eヘルスネット「アミノ酸(あみのさん)」
鰹節を食べさせることのメリット
鰹節にはさまざまな栄養素が含まれていることは解説した通りです。
また、鰹節を食べさせるメリットとして、「食欲促進効果」があります。
人にとってもそうですが、鼻の利く犬にとっても鰹節のあの香りはとても良い匂い!
食欲が刺激されて食いつきが良くなることがあります。
シニア犬などで食欲が減退してしまった犬にとっても良いかもしれませんね。
鰹節を食べさせることのデメリット
一方で、鰹節に慣れてしまって、食の好みが変わってしまう可能性があるというデメリットもあります。
今まで食べていたドッグフードを食べなくなってしまったり、ドッグフードにかけられた鰹節だけを食べてしまったりするかもしれません。
そうならないためにも鰹節をあげ過ぎないことや、ドッグフードと一緒にあげる場合には上にかけるのではなく中に混ぜ込むなど、十分に気を付けてくださいね。
鰹節を食べさせる時の注意点

ここでは実際に鰹節を食べさせる時の具体的な注意点を解説します。
注意すべきことをよく理解して、楽しくおいしく安全に鰹節を食べられるようにしてあげましょうね!
アレルギーに注意!
魚のアレルギーがある犬はもちろん、まだ体質がはっきりと分かっていない子犬などには食べさせるのを控えましょう。
食べた後に下痢をしたり、体を痒がったり、嘔吐したりしてしまった場合は、アレルギーや体質が合わなかったというサインです。
そのような症状が出た際はすぐに食べさせるのをやめてくださいね。
また、少しでも心配な場合は、迷わず獣医師に相談しましょう。
食べ過ぎに注意!
どの食べ物にもいえることですが、過剰摂取には十分に注意しましょう。
鰹節も、栄養素が含まれているからといって、たくさん食べさせれば良いというわけではありません。
【過剰摂取に注意する成分】
成分 | 過剰摂取の影響 |
---|---|
リン | 腎臓病などで腎臓の機能が低下している犬がリンを過剰摂取してしまうと、 リンが正常に排出されなくなり血液中に蓄積されてしまいます。 血液中に蓄積されたリンが多くなると以下のような影響があります。 ・骨からカルシウムを取り出すように指令を出すホルモンが分泌されて骨が弱くなってしまう ・血液中のリンとカルシウムが結合して、骨以外の場所に沈着する(「石灰化」) ・体内のさまざまな場所で石灰化が起き、腎臓の炎症や心臓など循環器系の不調が現れる |
マグネシウム | けいれんや神経障害などを起こすリスクがあります 。 |
ナトリウム | 高血圧や腎疾患などを引き起こすリスクがあります。 |
カリウム | 高カリウム血症になる恐れがあります。 高カリウム血症は、筋力の低下や手足の痺れ、吐き気、不整脈の症状があります。 |
カルシウム | 特に、成長期の大型犬がカルシウムを過剰摂取すると、 骨格異常を起こすこともあります[7]。 |
鰹節にはこれらの成分も含まれているため、与えすぎには注意が必要となります。
とはいえ、鰹節は一度に多くの量を食べるものではありませんし、よっぽど大量に食べなければ過剰摂取になることはありません。
どのくらいの量で影響があるかは、犬種やワンちゃんの普段の食事量にもよります。
まずは普段の食事に少しずつ混ぜて様子をみてくださいね。
[7]環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」
塊のままあげないで!
骨をかじったりするし、鰹節も塊のままあげて良いのかな?
そう思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
たしかに、形も骨になんとなく似ているような気もするし、大丈夫そうだと思ってしまいますよね。
しかし、鰹節はとても硬い食材。歯が欠けてしまう恐れもあります。
また、かじっているうちに小さくなった破片をそのまま飲み込んでしまうと、喉や食道に詰まってしまう可能性も。
「おやつとしてどうしてもかじらせたい!」という方には、ジャーキーのように厚切りにされている鰹節もありますよ。
鰹節を使用した加工食品に注意!
鰹節は、カツオを原料にして、製造工程で添加物を加えられずに作られる食材です。
ですが、味付きの鰹節や顆粒だしなど加工された食品には塩分や糖分、調味料などが添加されていることが多く、犬に与えるのには向いていません。
おすすめの鰹節の食べさせ方
鰹節を食べさせることができるのは分かった!
栄養もあるし、香りも良くて、食べさせてみようかな…
そんなあなたのために、おすすめの鰹節の食べさせ方をご紹介します!
削り節を混ぜてみる
鰹節を薄く削った削り節をドッグフードに混ぜてみましょう。
この時のポイントは、フードの上に乗せるだけにしないこと。
鰹節だけ食べてフードを残してしまわないよう、しっかり混ぜ込んでくださいね。
だしを活用
だしそのものもあげることができます。
犬にあげる肉や野菜を煮込む際に、鰹節を使用してカツオだしにしたり、カツオだしでドライタイプのドッグフードを柔らかくしたり、夏には凍らせてアイスキューブにするのもおすすめです。
カツオだしにゼラチンを加えて、ゼリーにすればおやつにもなりますよ。
だしがらを活用
だしだけではなく、だしがら(だしをとった後の残った鰹節)も有効活用しましょう。
ドッグフードに混ぜたり、おやつとしてあげたりしてみてください。
料理後のだしがらにも栄養は残っていますよ!
犬用の鰹節
心臓疾患や腎臓疾患があり、お医者さんから塩分制限を指示されている場合には、犬用で減塩タイプの鰹節もあります。
ジャーキータイプ
ジャーキーのように、鰹節を厚切りにしたものもあります。
かみごたえもあり、おやつにも最適です!
鰹節の塊を自分で厚めに切って与えることはやめましょう!
鰹節はとても硬いので、包丁で切るのは非常に危険です。
もし切れたとしても、包丁が欠けた刃が鰹節に混ざっている可能性もあります。
まとめ
鰹節は量やあげ方に気を付ければ、犬に食べさせることのできる食材です。
栄養素も含まれていて、良い香りで食欲促進効果もあります。
「おいしい!」と喜ぶ愛犬の姿を見るのは嬉しいものですが、食べ過ぎは健康を損ねる可能性も。
愛犬の体調を観察しながら、バランスの取れた食事を心がけるようにしましょうね。
薄く削られた鰹節や、鰹節を使用したカツオだし、そのだしがらなど食べさせ方もさまざまです。
鰹節を上手に取り入れて、愛犬と一緒に楽しい食事の時間を過ごしましょう!
この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)
国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。
資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級