茶色い聴導犬が斜め前を見て、良い子にしてアスファルトの上で立っている。

聴導犬は、盲導犬や介助犬と同じ補助犬の仲間で、耳が不自由な人を支える「働く犬」です。

日本で活躍している聴導犬はまだ少ないため、見かけたことがないという方も多いかもしれません。

この記事では、聴導犬がどのような役目を持つのかという基本的な情報から、実際に見かけた時の対応までお伝えします。

この記事を書いた人

聴導犬はどんな仕事をしているの?

大きな道路の街並みの画像。人が行きかう街

聴導犬は、体が不自由な人をサポートする補助犬の一種です。

補助犬は全部で3種類[1]

1種類目は、目の不自由な人が安全に街中を歩けるように段差や曲がり角を教える盲導犬

ハーネスを付けているのが特徴です

次に、手足が不自由な人の代わりに、ドアを開けたり時には着替えも手伝ってくれたりする介助犬です。

最後に、聴導犬耳が不自由な人の代わりに音を聞き、それを知らせる役割を担っています

聴導犬は「聴導犬」と書かれた胴着を身に付けています

盲導犬というとユーザーを危険から守る役割を担うためゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーなどの大型犬が多いですが、聴導犬の役割は音を知らせることなので、犬種に限りはありません

ワン!ポイント  聴導犬が教えてくれるさまざまな音の例
  • 車のクラクション
  • ドアチャイム
  • 電話の着信音
  • 非常ベル
  • 電子レンジの音
  • お湯が沸いたやかんの音

聴導犬は、耳が不自由な人の耳となって、車のクラクションやドアチャイムの音、非常ベルなどを伝えます[2]

盲導犬や介助犬は、体に不自由があるユーザーの方からの指示を優先して働いているのに対し、聴導犬は自ら考える力を訓練された補助犬と言えます[3]

ユーザーである耳が不自由な方は、音が聞こえないため、実際に鳴った音に対する具体的な指示ができません

聴導犬は、聞こえてくるあらゆる音を聞き分けて、その音がユーザーにとって必要な情報なのか判断した上で伝えるという訓練をされているのです。

また、聴覚に障害がある方は、周囲の人から障害があることを認識してもらいにくいことがあります

そのため、聴導犬がいることで周りの人に障害を理解してもらう助けにもなっており、緊急時に支援が受けやすくなる効果もあります。

[1]厚生労働省「ほじょ犬もっと知ってBOOK

[2]一般社団法人日本身体障害者補助犬学会「公共交通機関編ガイドブック

[3]日本聴導犬協会「ケンタくんの聴導犬Q&A

聴導犬の普及の現状

耳が不自由な人のパートナーとなって働く聴導犬ですが、決して普及しているとは言えない現状にあります。

厚生労働省によると、令和6年9月末時点で実稼働している補助犬の数は、盲導犬が796頭であるのに対し、聴導犬はわずか50頭[4]

実際に街中で活躍している聴導犬の数は、もっと少ないのではないかと言われています。

その理由は、聴導犬への理解が不足していること。

飲食店やデパートなどで入店を断られてしまうことが重なると、ユーザーも気がめいってしまい、中には外出時には聴導犬を家に置いてくるという方もいるほどです[5]

聴導犬は、体の不自由な人にとっては自身の体の大切な一部

「身体障害者補助犬法」という法律に基づいて、公共施設をはじめ、病院やレストラン、タクシーなど、いろいろな場所で聴導犬を受け入れることが、義務付けられています[6]

「犬だから」という理由で拒否されることがないよう法律で守られている一方、私たちの理解がまだ足りない現状があるようです。

もし聴導犬を見かけたらどのように対応したらいいのか、知っておくことが大切です。

[4]厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「身体障害者補助犬実働頭数(都道府県別)

[5]YAHOO!JAPANニュース「聴導犬はどんなことをするの? ~ その利点と理解促進に向けた課題 ~

[6]厚生労働省「ほじょ犬もっと知ってBOOK

聴導犬を見かけたら

では、実際に聴導犬を見かけたら、どのように対応したらいいのでしょうか。

聴導犬をそっと見守るのが優しさ

聴導犬は、ユーザーの方の耳となれるように、集中して音を聞いています

そのため、集中している聴導犬の妨げになるような行為は避け、そっと見守ってあげるのがいいでしょう

可愛いから、珍しいからといって触ったり声をかけたりするのは控えましょう

聴導犬はペットではありません

仕事中なのだということを忘れないようにしましょう

ワン!ポイント  聴導犬にやってはいけないこと

1.触らない
2.見つめない
3.声をかけたり呼んだりしない
4.食べ物を与えない(アレルギーや健康管理の観点でも×)

聴導犬にはできないことも

聴導犬は音を伝えることはできても、その音の具体的な情報まで伝えることはできません

例えば、鉄道の駅で緊急のアナウンスがあった場合、耳の不自由な方が困ることもあるでしょう。

そういう時は、携帯のメモ画面などを通して、情報を伝える手助けができるといいですね

まとめ

耳の不自由な方をサポートする聴導犬は、ユーザーの方の耳となろうとお仕事に集中しています。

悪気がないのに聴導犬やユーザーの方の迷惑になってしまうのは避けたいもの。

聴導犬が活躍しやすい環境とは何か、一人一人が知識を付けながら、社会全体で考えていきたいですね

 この記事の監修者

鮎川 多絵 (愛玩動物飼養管理士2級・ライター)

東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。

犬と私
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。

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資格
愛玩動物飼養管理士2級 防災コーディネーター 学芸員 登録日本語教員

この記事を書いた人

吉田桃子

異国メシとティータイムをこよなく愛す、飲めないビール好き。ガンバ大阪のサポーター。採用や労務などに従事。「組織と従業員をつなぐ、架け橋になる」がモットー。
生まれて初めて対峙した犬は、Kさんの相棒であるシベリアン・ハスキー。恐る恐る近づいた記憶はあるけど、怖かった記憶はない。きっと優しい子だったんだろう。

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