
犬は本能的にかむことが好きな動物です。
ふと振り返ると、愛犬がお気に入りのぬいぐるみや、家の中のものを一生懸命カジカジしていて、愛らしいとは思いませんか?
そんな「かむ行為」の中でも、「硬い骨」をかむことは、犬のストレスを解消し、リラックス効果があるといわれていますが……
骨なら何でもいいの?
生肉の骨?加熱肉の骨?
ストレス解消以外に何か効果や、注意点はあるの?
なんて疑問は湧いてきませんか?
今まで何となく骨をあげていたけど、飼い主が与えるもので愛犬に健康被害が……なんてことにならないよう、それぞれのメリット・デメリット、何か起きた時の対応策を確認していきましょう。
この記事を書いた人
犬に骨をあげることのメリット・デメリットって?
メリット・・骨をかむことで起こる良い効果
●歯・顎に良い
硬い骨をかむことが、歯や顎の健康にも良いことは、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
完全に歯磨きの代わりになるわけではないのですが、骨をかむことで歯垢や歯石を取り除く効果があり、歯周病の予防にもつながります。
実は愛犬の口内に悩みがある人は、犬を飼う人全体の3/4程いると言われているんです。
歯磨きをなかなかさせてくれない子も多い中、愛犬の歯のケアを自然にできるのであれば、大きなメリットと感じますね。
愛犬の歯のケアを自然にできるのであれば、大きなメリットと感じますね。
●脳の動きが向上し、消化を助ける効果もある
かむことは、脳内の血流が良くなり、脳の働きも向上することがわかっています。
また、骨にはコラーゲンやカルシウム、リン、タンパク質、脂肪などが含まれています。
犬や多くの動物は、体内に潜在酵素というものを持っており、消化吸収に非常に重要な役割を果たしているのですが、年齢とともに酵素は減っていき、
老犬になると代謝の力が弱くなっていきます。
それを補ってくれるのが骨の生肉部分に入っている食物酵素で、消化を助ける働きがあると言われています。
ほんのり肉のエキスが染み込んだ美味しい骨をかめることで、愛犬にとっても楽しく健康的なおやつとなるでしょう。
デメリット・・骨をかむことの危険性
●喉や消化器官へのリスク
鋭利な骨(鶏や魚の骨など)は、口の中や喉体高、食道、胃腸を傷つける恐れがあります。
飲み込んだ骨が消化器官に刺さると、犬の消化器官を傷つける危険性が。
特に加熱された骨(鶏、豚、魚など)はもろく、割れやすくなるので気を付けなければなりません。
最悪の場合、とがった破片が食道や胃に穴をあける、といった問題を引き起こす場合もあります。
●歯が割れる可能性
かむことで顎や歯を鍛えることができる反面、硬すぎる骨(牛の大腿骨など)は、犬がかむと歯が割れたり、欠けたりする原因になります。
特にシニア犬は、歯がもろくなっているため注意が必要。
歯が摩耗して割れるリスクも出てくるので、長時間も放置してかませっぱなしにしないよう、途中で異変がないかチェックしていきましょう。

犬に安全な骨は生肉?加熱肉?メリットと注意点
生肉の骨と加熱肉の骨:メリット・デメリットを知ろう
●生肉の骨
生肉の骨の中心部にある骨髄には、たんぱく質や脂質が含まれています。
これは、骨や筋肉を作るための材料となり、犬の健康維持にもつながります。
しかしその反面、衛生管理を徹底しないと、サルモネラ菌・リステリア菌・大腸菌などが付着している可能性があり、これらが原因で食中毒や胃腸炎を引き起こすこともあります。
●加熱肉の骨
加熱した骨は、生の骨よりもかみやすいことから、歯の筋力を保つためのエクササイズとしては効果的です。
また、生の骨は骨髄が多く脂肪分が高くなりますが、加熱肉の骨は水分が抜けることで脂肪分が減少します。
生の骨に比べてヘルシーになるので、カロリー制限が必要な犬には適しています。
しかし、問題点としてよくあげられるのは、加熱した骨は割れやすく危険ということ。
特に鶏の骨や豚の骨などは危険です。
生の骨よりも若干柔らかくなる分、裂けて細かくなりやすいため、犬が飲み込んでしまうと喉に詰まったり、腸で引っかかったりすることがあります。
骨片が消化管に引っかかると腸閉塞を引き起こすリスクもあり、外科的手術が必要になることもあります。
生・加熱 それぞれの注意するべき点
生肉の骨は栄養が豊富でデンタルケアにも効果的ですが、硬すぎて歯を折るリスクや、細菌感染の可能性があるため、衛生管理が重要です。
一方、加熱した骨はかみやすくカロリー管理にも役立ちますが、割れやすく喉や腸に詰まる危険があります。
特に鶏や豚の骨は注意が必要です。
どちらの骨も愛犬に与える際には十分な配慮が求められます。
リスクを理解した上で、安全に与えましょう。
骨の種類・それぞれの骨の特徴を知りたい!
では、うちの愛犬にはどの骨をあげたらいいの?おすすめはあるの?と気になりますよね。
骨の肉の種類でそれぞれの特徴をまとめてみました。
骨の種類 | メリット(生であげた場合) |
---|---|
鶏の首・手羽先・背骨(ネックボーン) | 軟骨が多く、カルシウム・グルコサミン・コンドロイチンが豊富で関節に良い。 |
七面鳥の首・翼 | 鶏より少し硬めで、歯のクリーニング効果も◎ |
牛のあばら骨・尾骨 | 骨髄(マロー)が豊富で、コラーゲンやビタミンが含まれる。 ただし、大腿骨のような極端に硬い骨は避ける。 |
羊のあばら骨・首骨 | 比較的柔らかめで、消化が良い。 |
ウズラやウサギの骨 | 細くて柔らかく、小型犬でもかみやすい。丸ごと食べられる場合もある。 |
骨粉(粉砕された骨) ボーンミール(加工品) カルシウムサプリ | 消化しやすく、カルシウムやミネラル補給に向いていて、シニア犬にもおすすめ。しかし、あげすぎに注意。 |
デンタルボーン(人工骨) ヤクチーズ(天然素材チーズを固めたガム) | 歯磨き効果があり、窒息や内臓損傷のリスクが低い。 |
ナイラボーン(超硬質プラスチック製) 牛皮ガム(牛皮を圧縮したもの) | 嗜好性が高く、ナイラボーンは長持ち。歯垢除去に効果的だが、誤飲に注意が必要。 |
犬のサイズやかむ力・年齢・飲み込み癖など、合ったものを選ぶことが重要です。

大型犬~超大型犬に最適な骨の種類と選び方
大型犬や超大型犬には、かみごたえがあり、適切な栄養を摂取できる骨を選ぶことが大切です。
しかし、小型犬や中型犬と同様、消化不良や歯の破損の原因になることもあります。
ここでは、大型犬・超大型犬に適した骨の種類と、安全に与えるポイントを紹介します。
大型犬~超大型犬に与えることができる骨の種類
●牛の大腿骨
大型犬に最も適した骨の一つで、非常に硬くかみ砕きにくいのが特徴です。
骨髄が豊富に含まれており、嗜好性も高いため、長時間楽しめるおやつになります。
ただし、かみすぎると歯が欠けることもあるため、適度に与えましょう。
●鹿の大腿骨
牛骨より軽めで、比較的丈夫な骨です。
鹿の骨にはコラーゲンやミネラル(カルシウム、リン)が豊富に含まれており、骨や歯の健康をサポートします。
低アレルゲンなため、食物アレルギーのある犬にも向いています。
●牛やイノシシのあばら骨
かみ応えがありながらも、比較的細めで適度な硬さのため、大型犬の歯を健康に保つのに役立ちます。
肉付きのものを選べば、さらに嗜好性が高まり、犬も満足しやすいでしょう。
●骨付きラムチョップ(羊の骨)
牛骨や鹿骨よりもやや柔らかめで、シニア犬にも適しています。
小型犬向けの骨と思われがちですが、大型犬でも楽しめるかみ応えがあります。
ただし、細かく砕ける可能性があるため、丸飲みしないように注意が必要です。
大型犬~超大型犬に骨を与える際の注意点
大型犬や超大型犬は顎の力が強く、骨をかむ力も非常に強いため、小型犬や中型犬とは異なる注意点があります。
●硬すぎる骨は歯の破損につながる
牛の大腿骨や鹿の大腿骨は長持ちする一方で、大型犬が力いっぱいかむと歯が欠ける可能性があります。
特に歯の弱い犬やシニア犬には、やや柔らかめの骨(ラムの骨やあばら骨)を選ぶとよいでしょう。
●誤飲防止のため、大きめの骨を選ぶ
大型犬は骨を丸呑みしてしまうリスクがあるため、口にすっぽり入るような小さな骨は避けることが大切です。
関節部分や頭蓋骨、肩甲骨など、大きめで誤飲しにくい骨を選びましょう。
●かみ砕きやすい骨は破片に注意
あばら骨や羊の骨など、比較的かみ砕きやすい骨を与える場合は、細かい破片を飲み込まないように注意しましょう。
特に興奮しやすい犬は、一気にかみ砕いて飲み込んでしまうことがあるため、食べ方を観察することが重要です。
●与える時間を制限する
かむ力が強い大型犬は、長時間骨をかむことで歯や顎に負担がかかります。
1回の目安は10~30分程度とし、様子を見ながら与えるようにしましょう。
食べた後、もしも異変が起ったら
のどに詰まってしまった! 症状が出ている
症状の重症度は、詰まらせた場所によって異なります。
咽頭から食道にかけてすぐ入ったところに異物がつまった場合は、症状が強く出ます。
窒息することもあるのでもちろん命にかかわります。
胸部の食道で異物がつまった場合は、見た目の症状は穏やかですが、元気がなくなり、食欲不振が残ります。
いずれにしても早めに対応したほうがいいものなので、上記の症状が出るようであれば、すぐに専門家に相談しましょう。
下痢や便秘になってしまった!
骨を食べてしまった日時や骨の部位、調理方法、症状などをあらかじめメモして、動物病院へ向かいましょう。
嘔吐をしている場合は、胃腸を休めるために水を与えないようにし、下痢の場合は、なるべく新しい便をペットシーツなどに包んで、動物病院に持参してください。
ただし、下痢の原因がサルモネラ感染症である場合、人にもうつる可能性がありますので素手で作業をせず、手洗い、うがい、消毒をしっかり行うようにしましょう。
骨を飲み込んでしまったが、今のところ症状は出ていない
無理に吐かせると骨が喉や食道を傷つける恐れがあるので、食欲や便をチェックしながら様子を見ましょう。
しかし、嘔吐・腹痛・血便・ぐったりする、などの異変を感じたら、すぐに動物病院に相談しましょう。
犬は人間と違って消化管が短く、強力な胃酸を持っているので、硬い骨でも消化酵素によって数時間で消化すると言われています。

よくある質問に回答!
愛犬の異変に気付けるような、飼い主の具体的な予防策は?
- 丸飲みしづらい大きさの適切なサイズの骨を選ぶようにする。
- 生肉の骨の場合は衛生管理に注意。冷蔵庫(4℃以下)で保管し、2~3日以内に食べさせましょう。
- 与えるときは必ず見守る。(骨の片方を飼い主が持って飲み込まないようにするなど、気を付ける。)
- 硬すぎる骨は避ける。(歯が折れるリスクも)
骨を与える頻度はどれくらいがいいの?
骨には犬の健康に役立つ栄養がたくさん含まれているため、与えるのは良いことですが、与え過ぎは良くありません。
一度にたくさん与えてしまうと消化不良をおこし、下痢になる場合があります。飼い主が与える量を調整しましょう。
子犬やシニア犬への骨の与え方の注意点は?
子犬:消化しやすい柔らかい骨(鶏の軟骨など)を少量与え、誤飲に注意します。
シニア犬:歯や消化器に負担が少ない骨を選び、無理にかませないようにすることが必要です。
子犬やシニア犬には、軟骨のような柔らかい骨を選ぶと良いです。
スペアリブや、フライドチキンの骨は与えても大丈夫?
スペアリブやフライドチキンの骨は加熱されていて割れやすいため、犬には与えない方が安全です。
まとめ:愛犬が安全に骨を楽しむために

私が飼っているシーズー犬も、16歳の時に10㎝ほどもある鳥の骨を丸呑みしてしまいました。
驚いて随分と心配しましたが、幸い何も起きませんでした。
しかし、すべての子が何事もないとは限りません。症状は無くても十分様子を観察することが必要です。
例えば・・・
- 加熱肉の場合、かみ砕いてしまい喉に詰まったり、腸に刺さったりしないように注意する
- 生肉の場合は、衛生管理をしっかりし、硬すぎる骨を与えないように気を付ける
- 誤飲防止のため、おやつのサイズや形状に注意する
- 適量を守り、主食の栄養バランスを崩さない
- 食後の様子を観察し、異変があればすぐ対処する
それぞれ、犬種・年齢・その子の癖(丸呑み・強くかみ砕く癖など)によって使い分けることが重要です。
愛犬が安心して楽しめるように、慎重に与えましょう。

この記事の監修者

鮎川 多絵 (愛玩動物飼養管理士2級・ライター)
東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。
犬と私
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。
この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)
国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。
資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級
この記事の監修者

岩井 ゆかり (JKC公認訓練士・ペット栄養管理士)
・子犬や老犬は消化能力が弱っているため、与えるのは控えましょう。
・勢い余って丸飲みするのを防ぐため、骨の端を手で持って与えてみるのが良いですね。
・骨を噛むことのメリットはありますが、デメリットも確認してから与えます。
・加熱処理済、滅菌済、ガム加工、燻製。色々な種類があるので、与える製品をよく確かめてから与えましょう。
・その犬の体質に合う、合わないがあるので少しずつ与えてみるのがいいでしょう。
・実際に骨を与える場合には、床が汚れたり、毛が汚れたりなどがあります。
・いつもと違うな、と思ったら、獣医さんに相談してみることをおすすめします。
経歴
日本初、ウェディング専門ペットシッターサービス「銀座INPET」代表。飼い主と犬の教育に関わる。著書に「育犬ノイローゼかな?と思ったら読む本」などがある。年間2000頭の子犬育てに関わる。ペット損害保険会社に約10年勤務後、いいなみ株式会社を設立。犬と人とのよりよい共生社会を目指し、活動をしている。
資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級
資格
犬猫行動アナリスト JKC公認訓練士 JKCトリマーA級 ペット栄養管理士 等
著書・出演
≪新聞、雑誌≫ブライダル産業新聞社、講談社CLASSY.、ゼクシィ
≪ラジオ≫ABC放送「日本の社長数珠つながり」FMサルース「月見おんぷのギャップラジオ」