
ドーベルマンの凛々しい姿の中でも、特に目を引くのがピンと立った耳。
「どうしてドーベルマンの耳は立っているんだろう?
もともと立っているの?それとも切っているの?
そのような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、ドーベルマンの耳の秘密を解き明かし、より深くドーベルマンについて理解を深めることができるでしょう。
この記事を書いた人
知られざる歴史と理由!ドーベルマンの耳を切るワケ
ドーベルマン犬種は、その最初の著名な繁殖者であるフリードリヒ・ルイス・ドーベルマン氏の名前にちなんで名付けられました。
伝えられるところによると、ドーベルマン氏は徴税官であり、放浪徘徊犬を法的な権利に基づき捕獲する官吏[1]でした。
この捕獲した犬の中から、特に鋭敏な犬を選び抜き、交配させることによってドーベルマンという犬種が生まれたとされています。
その生い立ちから、ドーベルマンは非常に優秀な犬種として知られるようになり、原産国であるドイツはもちろんのこと、世界中で警察犬や軍用犬として採用され、戦地でも活躍しています。
さて、ドーベルマンの特徴的な外見の一つに、ピンと立った耳があります。
しかし、実はドーベルマンの耳は、生まれたときから自然に立っているわけではありません。
多くの場合、生後間もない時期に「断耳(だんじ)」と呼ばれる手術を受けることで、あの特徴的な形になるのです。
もともと垂れ耳の犬の耳を、形と大きさを変えて立ち耳にする手術のこと
では、なぜドーベルマンは耳を切るのでしょうか?
ドーベルマンの耳を切る理由には、主に以下の3つが挙げられます。
[1]公益社団法人 日本警察犬協会 「警察犬協会指定犬種 ドーベルマン」
歴史的背景:作業犬としての役
ドーベルマンは、もともと警備犬や警察犬として作業していました。
例えば、不審者を追跡したり、要人を警護したりする際、敵に組み付かれたり、攻撃を受けたりする場面が想定されます。
その際、垂れ耳は相手に掴まれたり、噛まれたりする標的になりやすく、怪我のリスクを高める可能性があります。
怪我のリスクを減らすために、耳を切る習慣が生まれたと言われています。
保護:怪我の防止
垂れ耳は、外耳炎(耳の穴で炎症が起きる病気)などの病気にかかりやすく、また、怪我をしやすくなったりする側面もあります。
そのため、耳を切ることで、これらのリスクを軽減できます。
聴覚の向上:警察犬・軍用犬としての機能
耳を切ることで、音の方向を捉えやすくなると言われています。
警察犬や軍用犬として活動する上で、聴覚は非常に重要な能力です。
手術の流れから費用までを徹底解説!

ドーベルマンの耳を切る手術は、一般的に生後2〜3ヵ月の間に行われます。
手術の方法は、獣医師によって異なりますが、全身麻酔をかけて耳の一部を切り取り、縫合するのが一般的です。
手術の費用は、動物病院や地域によって異なりますが、一般的には3万円から5万円程度が一般的です。麻酔代や薬代なども含まれます。
- 全身麻酔をかける。
- 耳の切除範囲をマーキングする。
- メスやレーザーで耳介(じかい)を切除する。
- 耳介(じかい):外耳のことで、一般的に「耳」と呼ばれている部分を指します。
- 断面を縫合する。
- 耳が立つように固定する。
- 一般的に、2〜3週間テーピングや添え木で固定します。
[2]公益社団法人 アニマル・ドネーション 「断耳をとりまく状況 」
決断前に知っておきたい!断耳のメリットとデメリット

ドーベルマンの耳を切ることは、一般的に次のようなメリットとデメリットがあると言われています。
メリット
外耳炎のリスク軽減
垂れ耳は通気性が悪く、外耳炎にかかりやすいですが、耳を切ることでリスクを軽減できます。
外敵からの保護
敵に噛まれたり、攻撃を受けたりするリスクを減らすことができます。
デメリット
手術の痛み
手術には痛みや出血が伴います。
感染症のリスク
手術後、感染症にかかるリスクがあります。
倫理的な問題
動物愛護の観点から、耳を切ることに反対する意見もあります。
これらのメリットとデメリットを十分に考慮し、飼い主は早期に決断することが求められます。
なぜなら、断耳手術は一般的に生後2〜3ヵ月の間に行われるためです。
獣医師に相談し、手術のリスクや犬への負担、代替となるケア方法などを十分に理解した上で判断することが重要です。
垂れ耳のリスクとケア方法!耳を切らないという選択
ドーベルマンの耳を切らない場合、外耳炎にかかりやすくなったり、怪我をしやすくなったりする可能性があります。
- 定期的な耳掃除や通気性の確保など、丁寧なケアが必要です。
- 耳掃除は、週に1回程度行うのが目安です。
- 通気性を確保するために、耳の周りの毛をカットすることも有効です。
しかし、近年では、動物愛護の観点から、耳を切らない飼い主も増えています。
近年、ヨーロッパを中心に動物愛護の観点から断耳を禁止している国が増えています。
日本国内でも断耳の件数は減ってきています。
賛否両論の背景を探る!断耳、倫理的な側面と海外の動向
動物愛護の観点から、断耳に反対する意見もあります。
動物愛護団体は、「不必要な手術は動物虐待にあたる」と主張しています[3]。
ヨーロッパではオーストリア、ドイツ、イギリス、ノルウェーなどで断耳を禁止しています。
また、動物福祉の観点から、デンマーク、スウェーデン、オランダなどでも断耳が制限または禁止されています。
これらの国々では、断耳されたドーベルマンのドッグショーへの出場も禁止されています[3]。
[3]公益社団法人 アニマル・ドネーション 「断尾・断耳 世界の法整備 」
まとめ
ドーベルマンの耳を切る行為には、歴史的な背景や犬種特有の理由があります。
ドーベルマン以外にも、ミニチュア・ピンシャー、ボクサー、グレート・デーンなどの犬種で耳を切ることがあります。
これらの犬種も、ドーベルマンと同様に、警備犬や警察犬として活動していた歴史があります。
しかし、近年では、動物愛護の観点から、耳を切らない飼い主も増えています。
ドーベルマンを飼育する上で、耳を切るかどうかは、飼い主の判断に委ねられます。
しかし、どちらを選ぶにしても、ドーベルマンの健康と安全を第一に考え、正しい知識と情報に基づいて判断することが大切です。
この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)
国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。
資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級