
「ブルドッグ」と聞くと、垂れ下がった皮膚や突き出た下顎、
がっしりした体つきを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
一方で、
アメリカンブルドッグってどんな犬?
他のブルドッグと何が違うの?
と疑問に思う方もいるかもしれません。
本記事では、アメリカンブルドッグの特徴や魅力、飼う前に知っておくべきポイントを詳しく解説します。「飼ってみたいな」と考えている方は、ぜひ参考にしてください!
この記事を書いた人
ブルドッグは3種類!基本情報と特徴を解説
ブルドッグの種類は、イングリッシュブルドッグ、フレンチブルドッグ、アメリカンブルドッグの3種類に分けられます。
以前は「ミニチュアブルドッグ」も存在していたのですが、フレンチブルドッグがフランスから世界に輸出され始めてから、
ミニチュアブルドッグの人気が低迷し、1930年代に絶滅してしまっています。
今回の記事の「アメリカンブルドッグ」は、実はJKC一般社団法人ジャパンケネルクラブ(純血犬の血統書発行などを行う日本最大の犬種登録団体)から正式なブルドッグと認められておらず、アメリカンピットブルテリアの一種として扱われることもあります。
この章では、現存する3種類のブルドッグについて、特徴を調べてみました。
現在、世界には非公認犬種を含めて700〜800の犬種があるといわれています。
一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)では、2024年12月現在で、国際畜犬連盟(FCI)により公認された359犬種のうち、209犬種が登録されています[1]。
すべての犬種には、『犬種標準』が定められています。
この犬種標準(スタンダードとも呼ばれる)とは、各犬種の理想像が記されたものです。
例えば、体型・サイズ・毛色・性格が基準から外れたり、ペットとして飼いやすいように穏やかな性格を重視するなどして繁殖された場合、スタンダードから外れることがあります[1]。
[1]一般社団法人ジャパンケネルクラブ「世界の犬」

イングリッシュブルドッグ
一般的に私たちが「ブルドッグ」と呼んでいる犬種になります。
体重は25kg前後あり、中型犬に属します。
体全体が筋肉質でずんぐり体型、頭が大きく首周りも太め。
顔の特徴は、ペチャっと潰れたマズル(鼻先から口周りにかけて)と、顔の肉がダルンと垂れていることでしょう。
目は離れており、表情によっては怖くも見えますし、愛らしさもあるブサカワな顔も魅力のひとつです。
イングリッシュブルドッグはその見た目とギャップがあり、性格はとても優しく穏やか。
飼い主に忠実で、物静かという一面を持っています。
外見通りの性格で言えば、多少頑固な点が挙げられます。
フレンチブルドッグ
大きな頭で首から胸にかけて幅が広く、筋肉質で足が短いのが特徴です。
大きさは8kg~14kgと個体差があり、小型~中型犬に当たります。
大きな耳は丸みのある楕円形で、まるでコウモリが羽を広げたような形をしています。
そのため、コウモリ耳(バットイヤー)とも呼ばれています。
性格は、愛情深く、明るく陽気で人懐っこい性格です。
むやみに走り回ったり、吠えたりしないため、マンションやアパートなどの集合住宅でもお迎えしやすい犬種ですが、人懐っこいゆえに、寂しがりな一面もあります。
アメリカンブルドッグ
アメリカ人がイングリッシュブルドッグを改良して誕生させた犬種です。
体系は、イングリッシュブルドッグよりも足が長く、すらりとした印象を受けます。
他のブルドッグと同様に筋肉質でがっちりとしていますが、オスの体重が30~58kg・メスは27~41㎏あり、大型犬に属します。
性格は、当初は闘犬として改良されたため、攻撃性が高くペットとして迎え入れるのはとても難しい状態でした。
しかし、ブリーダーたちの手で穏やかな犬種と交配し、現在は、温厚で友好的な性格な子多くなっています。
飼い主に対しての忠誠心が強く、家族以外の人には警戒心が強いので、番犬を探している方にもおすすめです。
アメリカンブルドッグの歴史と種類
18世紀、アメリカへの入植とともに、家畜の番犬、また牧畜や狩猟のための作業犬として飼われていたアメリカンブルドッグ。
しかし、第二次世界大戦後は大規模な農場が閉鎖されてしまい、アメリカンブルドッグの仕事が失われることになってしまいました。
そんな絶滅の危機に瀕したアメリカンブルドッグでしたが、ブリーダーのジョン・ジョンソンやアラン・スコットの努力により復活活動が行われ、
「ジョンソンタイプ」と「スコットタイプ」、それらが混じった「ハイブリットタイプ」の3つのタイプが生まれ、飼育頭数が回復し絶滅の危機を脱したのです。
ジョンソンタイプ
次に説明するスコットタイプよりも大きく、足が長いのが特徴。
骨太で、筋肉隆々のがっしりとした体形をしています。
スコットタイプ
ジョンソンタイプよりも小さく、スリムな体型です。
また、運動能力が高く、家畜の群れを誘導したり、外敵から守ったりすることで重宝され、
状況判断能力にも優れているといわれています。
ハイブリッドタイプ
ジョンソンタイプとスコットタイプの特徴を併せ持ちます。
アメリカンブルドッグの飼い方としつけ
日本でアメリカンブルドッグの子犬を迎えるには?
アメリカンブルドッグは大変希少な犬種のため、日本のペットショップではほとんど取り扱いがありません。
そのため、子犬の値段や販売に関する情報を得るのも難しいのが現状です。
また、ブリーダー自体も日本ではほとんど存在せず、迎えるためにはブルドッグ専門のブリーダーとコンタクトを取り、情報を集めてみる必要があります。
加えて、この犬種は大型で運動量も多く、しつけや飼育環境にも十分な配慮が求められます。
ライフスタイルや飼育環境をしっかり考えた上で迎えるかどうか検討しましょう。
【飼い方】大型犬に適した環境と散歩・食事のポイント
大型犬のアメリカンブルドッグは運動が大好きな犬種なので、できる限り広いスペースを確保できる住宅での飼育が適切です。
また、1日の散歩時間は2時間、距離にして6kmが最適と言われています。
また、食欲も旺盛なので、体重管理が必要です。
肉を与える際には、余分な油分を落とすため湯通しを行うと良いでしょう。
過食とカロリーオーバーには注意して下さい。
【しつけ】アメリカンブルドッグの性格を活かすトレーニング方法
アメリカンブルドッグは、縄張りを守る意識が極めて高い性格なので、幼い頃からきちんとしつけやトレーニングを行うことで、勇敢で優しい家族の一員になってくれることでしょう。
飼い主のしつけによって性格が大きく左右される犬種です。
しつけができていない場合、本来の闘犬としての荒々しい気質が出てしまうので、毅然とした態度で接し、しっかりとした主従関係を築いていきましょう。

アメリカンブルドッグの健康管理と注意すべき病気
熱中症
アメリカンブルドッグのように鼻の低い短頭種は、喉の入口が狭く、鼻の穴が小さい傾向があります。
犬はパンディング(ハァハァと口を開けて早く浅い呼吸をすること)をして、舌や口の中の水分を蒸発させ体温を下げていますが、アメリカンブルドッグは息の通り道が狭い分、高体温状態に陥りやすくなるのです。
熱中症の初期症状は、体温が40~41℃以上に上昇し、呼吸数と心拍数が増加するのが特徴です。
暑い日のお散歩や運動などで、なかなかパンディングがおさまらない場合は注意しましょう。
皮膚炎
アメリカンブルドッグは、皮膚炎になりやすいと言われています。
顔のシワに汚れが溜まりやすく、炎症を起こしやすいので、シワ部分や皮膚の擦れ合う場所は注意深く観察し、
異常が見られたら動物病院を受診しましょう。
日頃のブラッシングも、毛並みに沿うように丁寧に行って下さい。
股関節形成不全
股関節形成不全は、発育過程で太ももの骨と骨盤を結合する部分がかみ合わなくなる病気です。
アメリカンブルドッグのような大型犬は股関節形成不全になりやすいので、症状がみられなくても1~2歳の間にレントゲン検査を受けることをすすめられています。
座る時に横座りになる、歩行時に左右に腰がゆれる、頭を下向きにして歩く、などの姿を見たら、病気の可能性があるので動物病院を受診しましょう。
また、肥満も股関節形成不全を引き起こす原因になるので、適度な運動を心掛けましょう。
アメリカンブルドッグに関するよくある質問(FAQ)
ブルドッグの名前の由来は?
ブルドッグは、bull(=雄牛)+dog(=犬)で、牛と闘うことを目的としてイギリス人によって作り出された、犬の品種です。
イギリスの国犬でもあるブルドッグ。
「bulldog」を英語の辞書で調べてみると、「勇猛でねばり強い」という意味で形容詞としても使われると書かれています。
アメリカンブルドッグは飼いやすい?初心者でも大丈夫?
日本ではまだあまり馴染みのないアメリカンブルドッグですが、家族に対して愛情深く、優しい性格の持ち主です。
大型犬のため、飼うためのそれなりのスペースときちんとしたしつけは必要ですが、比較的飼いやすい犬種でしょう。
なぜブルドッグは高額なの?価格が高い理由
例えば、イングリッシュブルドッグは、価格が約20万〜110万円と高額なことが多いです。
その理由の1つに、自然分娩がほぼ不可能で、帝王切開が必要になることが挙げられます。
さらに、生まれたばかりの子犬を誤って踏んでしまうことや、呼吸が難しい個体がいることもあり、他の犬種に比べて生存率が低いため、価格が高くなる傾向があります。
また、フレンチブルドッグは、繁殖を行うブリーダーが少なく、母犬の出産時の負担が大きいことから、市場に出回る純血種が少ないのが特徴です。
そのため、希少犬種とされ価格が高騰しやすいのです。

まとめ
アメリカンブルドッグは、勇敢で忠実な性格とたくましい体格を持つ魅力的な大型犬です。
イングリッシュブルドッグを起源とし、番犬や作業犬としての歴史を経て、今では家族を守る頼もしいパートナーとして親しまれています。
広い飼育スペースが必要
運動量が多いため、室内でも十分に動ける環境を用意しましょう。
しつけと社会化が重要
警戒心が強いため、幼少期から適切なしつけを行い、主従関係を築くことが大切です。
健康管理を徹底する
熱中症・皮膚炎・股関節形成不全などのリスクがあるため、日頃のケアを怠らないようにしましょう。
アメリカンブルドッグは活発な犬種ですが、適切な環境としつけがあれば、家族にとって最高のパートナーになり、その愛情深さや忠誠心の強さにきっと魅了されるはずです。

見た目とのギャップがあればあるほど、可愛く思えてしまいますよね・・・。
「しっかり向き合えるかも」と思った方は、ぜひアメリカンブルドッグを迎えることを検討してみてください。
信頼できるブリーダーからの購入や、海外の情報を集めてみるなどして、じっくり準備を進めましょう。
この記事の監修者

鮎川 多絵 (愛玩動物飼養管理士2級・ライター)
東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。
犬と私
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。
この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)
国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。
資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級