
白い毛に黒いスポット柄が特徴的なダルメシアン。
ディズニー映画『101匹わんちゃん』でお馴染みの犬種です。
艶やかな毛質とゴージャスな見た目、引き締まった体格で目を引く大型犬です。
「ダルメシアンを飼ってみたいな」という方も多いのではないでしょうか?
犬を飼う時に気になることの1つに「犬種ごとになりやすい病気」があると思います。
この記事ではダルメシアンのなりやすい病気と併せて、さらに寿命がどれくらいなのかをお伝えします。
事前になりやすい病気を知って、愛犬が元気に長生きできるようにしたいものですね。
そして、どんな性格の犬種なのか、一緒に暮らす時の注意点などもご紹介します。
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ダルメシアンってどんな犬?

ダルメシアンはどんな犬種なのでしょうか。基本情報は以下の表の通りです。
基本データ
原産国 | クロアチア共和国、ダルマチア地方(クロアチア西部、アドリア海沿岸一帯) |
犬種グループ[1] | セントハウンド(嗅覚獣猟犬) 犬種グループの第6グループ |
サイズ | 大型犬 |
体重 | オス:約27~32㎏ メス:約24~29㎏ |
体高 | オス:約56~61㎝ メス:54~59㎝ |
用途 | コンパニオンドッグ、番犬、馬車犬 |
毛 | 短毛で1年を通して抜け毛が多い、こまめなブラッシングが必要 |
[1]一般社団法人 ジャパンケネルクラブ「犬種グループについて」
犬種のグループ分けは、世界畜犬連盟(FCI)に加盟している日本ケンネル・クラブ(JKC)が採用している10グループ制に準拠しています。
生存目的、用途によって10のグループに分類されています。
尚、現在FCIに加盟していない蓄犬大国では7グループ制を採用しています。
ダルメシアンの歴史
美しい模様と優美な姿のダルメシアン。その歴史は意外と知られていません。
起源は明確にわかっていないうえ、誕生した場所も不明です。
犬種名の「ダルメシアン」は、クロアチア共和国のダルマシア地方で、18世紀中頃に存在の記録が確認された[2]ということで、地名から命名されたといわれています。
しかし、それ以前にもあらゆる土地でそれらしい記録があるため、実際のところはっきりとしていません。
ダルメシアンは19世紀のイギリスとフランスで、主に貴族の馬車の伴走犬として活躍しました。
他にも牧羊犬、レトリーブ、サーカス犬としても重宝されていました。
馬車の伴走犬としては、役割として馬車を盗賊などから守る番犬でしたが、その優雅で特徴的な姿から、恐らく馬車の装飾的な意味も持ち合わせていたことでしょう。
かつての役割は現在ではなくなりましたが、アメリカではダルメシアンが消防馬車の馬を守りながら火事現場まで走っていたという記録が残っています。
まだ消防車のサイレンがなかった時代に、ハイスピードで消防車の前を走って皆に知らせていたということです。
この史実により、アメリカの消防署ではダルメシアンがマスコットとして飼われることが多く、消防の代名詞となってきました。
ダルメシアンの役割は様々でしたが、その中の「レトリーブ」とは英語の「回収する」という意味があります。
犬の訓練用語の一つ「回収訓練」としても使われています。
ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリバーのように、獲物を捕まえて飼い主のところまで持って帰ってくる(回収)役割の犬種名についていることがあります。
[2]一般社団法人 ジャパンケネルクラブ「ダルメシアン- DALMATIAN」
ダルメシアンの性格や特徴
様々な役割を持っていたダルメシアンは、どのような性格と特徴があるのでしょうか。
馬や馬車を守るために飼われていたこともあり、大変活発で遊んだり、走ったりすることが大好きな犬種です。
そのため、遊びや散歩などの運動が少ないとストレスが溜まってしまい、いたずらなどの問題行動にも発展しやすくもあります。
家族に対しては愛情深く陽気で懐く傾向にありますが、一方で警戒心や人見知りが強い性格です。頑固でなかなか譲らない部分もあります。
神経質な一面があるため、警戒や恐怖心、興奮が攻撃性に変わってしまうと、周囲の人や他の犬などに影響を与えてしまい、トラブルに発展してしまいます。
若い時から身の回りに順応させ、他の人や犬に適応できるようにしつけをしたり、慣らしてあげるなど、飼い主さんの努力も必要です。
ダルメシアンは白い被毛に斑点がある大型犬です。
バランスの良い引き締まった体で、瞳は丸い形をしています。
多くは黒い瞳ですが、ブルーやレッド、オッドアイの場合もあります。
耳は垂れ耳で、しっぽは先が細くなっています。
筋肉が発達していて、機敏に動き運動能力に優れています。
生まれた時は、被毛のスポット柄はなく全身が白色です。
生後10日から2週間までに段々とスポット柄が出てきます。
このスポット柄は直径2~3㎝で丸く、黒や茶系の色をしており、柄がくっつかず、丸く、まんべんなく体幹部に分布しているのが良いとされています。
被毛はスムースコートと呼ばれ、硬くて短い毛が密集しています。
光沢があり艶やかですが、抜け毛は案外多いのが特徴です。
寒さに弱い傾向にあります。
優美で美しい外見を持ちあわせるダルメシアンは、心を開いた相手には友好的で優しい犬種ですので、良好な信頼関係を築くことで、きっと生涯の良きパートナーになるでしょう。
ダルメシアンの寿命

ダルメシアンの平均寿命は約10~13歳といわれています。
大型犬の寿命は平均的に10~12歳くらいとされていますので、その他の大型犬とほぼ同じです。
国内ではダルメシアンの最高齢は19歳という記録もあるようですので、平均寿命を上回ることはもちろんあります。
国内のダルメシアン最高齢は、19歳2か月の「ラッシーちゃん」(2017年時点)[3]。
ペット保険大手のアニコム損害保険株式会社が敬老の日に合わせて毎年開催している「ご長寿アルバム」で表彰されました。
[3]アニコム損害保険株式会社「祝 敬老の日 Here’s to a long life!!2017(ロングライフに乾杯!!)」
大型犬と人間の年齢を比較すると以下の表のようになります[4]。
大型犬 | 人間 |
---|---|
1歳 | 12歳 |
2歳 | 19歳 |
3歳 | 26歳 |
4歳 | 33歳 |
5歳 | 40歳 |
6歳 | 47歳 |
7歳 | 54歳 |
8歳 | 61歳 |
9歳 | 68歳 |
10歳 | 75歳 |
11歳 | 82歳 |
12歳 | 89歳 |
13歳 | 96歳 |
14歳 | 103歳 |
15歳 | 110歳 |
16歳 | 117歳 |
17歳 | 124歳 |
18歳 | 131歳 |
19歳 | 138歳 |
20歳 | 145歳 |
環境省の公開している年齢の計算式では、小型〜中型犬の場合「24+(年齢-2)× 4」、大型犬の場合「12+(年齢-1)× 7」と掲載されています。
大型犬は1歳で人間の12歳にあたり、それ以後は7歳ずつ年齢が重なっていく計算です。
[4]環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
ダルメシアンがかかりやすい病気

ダルメシアンには犬種特有のかかりやすい病気があります。
それぞれの病気について、治療、予防法も併せてみていきましょう。
ダルメシアンがかかりやすい病気 |
---|
〇難聴 |
〇尿路結石症 |
〇アトピー性皮膚炎 |
〇ワーデンブルグ・クライン症候群 |
〇白内障 |
難聴(聴覚障害)
〇難聴(聴覚障害)
ダルメシアンは遺伝的に難聴になりやすい犬種です。
中には生まれつき耳が聴こえない子もいます。
この聴覚器には実はメラニン色素が大きく関わっています。
このメラニン色素は、聴覚器の他に毛色や目の色を作っているのです。
ダルメシアンの白い毛の毛根部分には、このメラニンを作り出す細胞がないことから、メラニンが作られないのです。
そのために毛に色がない状態で白くなっています。
さらに、メラニンを作る細胞は色をつけるだけではなく、内耳にある蝸牛という部分にもあり、正常な聴覚を維持するために働いています。
内耳の聴覚器異常によって、難聴が起きてしまうのです。
これは「メラニンを作る細胞」を、作るかどうかを決める遺伝子の異変が原因とされています。
また、これらのみではなく、人間が犬種を作るために繁殖をコントロールしてきたことも原因の1つとなっています。
求める気質や体格などのために交配を繰り返した結果、犬種特異性の病気が起こりやすくなっているのです。
ダルメシアンに多くある難聴は先天性であることが多く、有効な治療法が確立されていません。
しかし、後にご紹介する対処法を意識することで、普通に生活を送り、むしろ飼い主さんとの絆も深まります。
先天性聴覚障害の場合、なかなか予防は難しいものがありますが、飼い主さんにできることはあります。
飼い主さんが常に心がけることで、愛犬の身の回りの危険を回避したり、生活環境をよいものにしていくことが可能です。
その心がけていただきたいポイントは、以下の通りです。
もしも愛犬が難聴とわかっても、変わらず愛情を注いであげてください。
後ろから声をかけても反応しない、反応が薄い、飼い主さんが突然目の前に出てきてびっくりした様子だったことなどから、難聴だったと気づくことがあります。
愛犬が難聴であるとわかった際には、コミュニケーションの手段を確立しましょう。
飼い主さんとのアイコンタクトやハンドシグナルなどの視覚を使ったサインに慣れさせるようにしてください。
耳が聴こえないことで、思わぬ事故やケガに繋がることがあります。
難聴であることは悲観せず、状況に対処してその子を思いっきり可愛がってあげてください。
尿路結石症
尿路結石症は、尿路である腎臓、尿管、膀胱や尿道のどこかに結石が形成された状態のことをいいます。
結石が膀胱にできると、膀胱の粘膜を傷つけてしまうことから、血尿・頻尿になり、排尿時に強い痛みが伴います。
さらに、膀胱から尿道に結石が流れると、尿道を完全にふさいで排尿ができないなどの症状が出ます。
ダルメシアンは、尿酸塩結石が発生する確率が高い犬種[5]です。
一般的には手術で大きくなった結石を取り除きます。
結石が小さく、マグネシウムからできている場合には食事療法で改善することもあります。
尿路結石は再発しやすいため注意が必要なため、食事管理を徹底します。
ミネラルウォーターも発症原因の1つとされていますので、水道水や軟水を与えるようにしましょう。
[5]なんせい動物病院「コラム(1)ダルメシアンの尿道結石」
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患のひとつです。
ダニ、カビなどに対して免疫機能が過剰に反応してしまいます。
これは犬種によって遺伝的に起こりやすいとされ、ダルメシアンはそのうちの一つです。
初期段階では春先から夏にかけて痒がり、徐々に慢性化して年中痒がるようになります。
顔、四肢、腋の下やお腹など皮膚の薄いところに起こりやすいです[6]。
完治することは非常に難しい病気です。
アレルギー要因は、温度や湿度、寄生虫などの外的要因、他には精神的要因があります。
病院での治療に合わせて、家の生活環境や食事の見直しにより症状を軽減させることができます。獣医師と相談をしてみてください。
遺伝的な場合は発症しないようにすることも難しいですが、先に紹介したように生活環境や食事に注意することで、症状を緩和させることができます。
「部屋の掃除」をこまめにして、アレルギーの原因となるノミやダニ(の死骸)を取り除きましょう。
部屋の温度や湿度の調整も忘れないようにしましょう。
「シャンプー」は薬用シャンプーを使用して皮膚の清潔を保ってあげましょう。
但し、シャンプーのし過ぎは逆効果ですので、獣医師に相談をして指導を仰いでください。
「食事」にはアレルゲンが含まれていることもあります。
愛犬のアレルギーを調べて対処したり、獣医師による処方食を与えてみてください。
[6]へきなん動物病院「アトピー性皮膚炎」
ワーデンブルグ・クライン症候群
あまり聞きなれない病名ですが、ワ―デンブルグ・クライン症候群はメラニン色素の欠損によって起こる皮膚病です。
一般的な皮膚疾患との区別が難しいため、違和感を感じることがあればすぐに獣医師に診てもらってください。
遺伝子の変異によって発生するとされています。
普段から皮膚の変化に注意して観察をしましょう。
治療法、予防法についても獣医師に相談をしてみてください。
白内障
人間も年齢を重ねてくると発症する白内障は、目の水晶体が濁ってくる疾患です。
光がうまく通らず、映像が霞んだりぼやけたりします。
ダルメシアンは多くの場合、遺伝的に白内障になりやすい素因を持っている犬種です。
他には加齢や糖尿病も原因になります。
白内障はゆっくり進行して、初期段階はそれほど視力障害も見られないため飼い主が気づかないうちに進行していきます。
高齢のダルメシアンは、白内障になると失明の原因になることがあります。
獣医師の診察で、目のレンズが不透明になっているか、曇って見えないかなどを確認します。
治療には内科治療と外科治療があります。
内科治療では、内科的治療法(点眼薬)によって進行を遅らせることができます。
外科治療では、既に視力障害が起こっている重度の場合に水晶体を摘出して、眼内レンズを挿入する手術を行います。
白内障が疑われる行動は以下の通りです[7] 。
〇物にぶつかって歩いている |
〇物が動いていても気づく様子がない |
〇寝ていることが多い |
〇音に敏感に反応する。驚いたり、怖がったりする |
〇突然かみつくようになった |
ダルメシアンに限らず、犬は「痛い」とか「見えにくい」など訴えることができません。
気づくことができるのは飼い主さんだけです。
定期的に獣医師の診察を受け、普段の愛犬の様子を観察して変化に気づけるようにしておきましょう。
[7]こなか動物病院「白内障」
ダルメシアンの飼い方や注意点

ダルメシアンの飼い方をご紹介します。
基本的にはどの犬にも共通することも含まれますが、運動能力が高く、大型犬のダルメシアンならではの注意点もありますので参考にしてください。
生活環境
ダルメシアンは寒さに弱いため、室内飼育を徹底しましょう。
また、大型犬ですので、飼育に適する広々とした生活環境を用意する必要があります。
活発で遊び好きの犬種のため、狭い場所で飼育することは困難です。
また、フローリングは滑りやすいため、四肢の関節を痛めてしまう危険があります。
大型犬である程度の体重がある犬種は、滑ると関節にかかる負担もそれだけ大きくなります。
滑り止め予防に、フローリングの加工をしたり、カーペットを敷いてあげるなどの工夫をしておくと安心です。
食事管理
総合栄養食を与えてください。
ただし、ダルメシアンはアレルギーによる皮膚疾患が多い犬種のため、初めて与えるフードは少量で様子を見ながら与えてください。
関節のことを考えると体重管理も必要です。
獣医師の指導を仰ぐなどして、適切なフード、量を与えてください。
運動管理
朝夕2回の散歩は毎日しましょう。その子の性格や運動量によって異なりますが、ダルメシアンは活発で運動能力に優れた犬種ですので、1日約2~3時間の散歩が必要です。
ドッグランなどの自由に遊ぶことができる施設の利用もおすすめですが、他の犬との喧嘩にならないように普段からトレーニングをしておきましょう。
昨今は梅雨、夏の湿気と気温が高いため外を歩かせる時間帯には十分に注意しましょう。
手入れ
定期的な手入れとして、シャンプー、爪切り、耳掃除、肛門腺絞りが必要[8]です。
特に垂れ耳の犬種は外耳炎などの炎症が起きやすいため、定期的に耳のチェックを行い、清潔を保つようにしてください。
家庭で耳掃除をする場合は、表面をコットンで軽く拭く程度にして、耳道内まで綿棒などを入れないようにしましょう 。
毎日のお手入れとしては、濡れたタオルで体を拭き、ブラッシングをしてあげてください。
ブラッシングは抜け毛を取り除き、マッサージ効果もあるため愛犬とのコミュニケーションにも良いでしょう。
お散歩の後は水や濡れたタオル等で肉球の汚れを取ってあげてください。
普段から家庭でのケアをすると共に、病院での定期的な健康診断もするようにしましょう。
病気は早期発見と治療がとても大切です。
[8]さかきばら動物病院「犬の外耳炎について|垂れ耳や耳毛が多い犬種は特に注意を」
まとめ

ダルメシアンはとても魅力的な美しい犬種です。
一方で、心身共に繊細で注意する点も多々ありますが、どんな動物を飼うことにも共通して、大切な命を守ることができるのは飼い主さんだけなのです。
遺伝性疾患はあらゆる犬種にみられるもので、上手に工夫して獣医師などの専門家の力も借りることで、世界でたった1匹の愛犬との
楽しく素晴らしい日々を過ごすことができます。
犬の寿命は愛犬を大切に思うほどに気になるものですが、1日1日を大事に過ごし、絆を深めていくことが、
その子にも飼い主さんにとっても良い思い出になります。
かけがえのない愛犬との時間を大切にしたいものですね。
この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)
国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。
資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級