
優しそうな目とフワフワの毛、スラっとした姿が優雅なボルゾイ。
日本では、見かけることは少ないかもしれません。
(2024年時点での、日本での飼育頭数は258頭[1]。)
「お金持ち」の犬、という印象を持たれることも多いようですが、その理由、そして実際にお金持ちでないと飼えないのか、気になりますよね・・!
この記事では、ボルゾイの飼育にかかる費用やその他のポイントについて解説し、ボルゾイが「お金持ち」の犬なのか、考察していきます。
[1]一般社団法人 ジャパンケネルクラブ 「犬種別犬籍登録頭数」
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ボルゾイは歴史的に、「お金持ちの犬」だった

ボルゾイはもともと、原産地のロシアで貴族の狩猟犬として飼われていました。
狩猟犬の中でも、優れた視覚と走力で獲物を追いかけて捕獲する犬種です。
体の高さが約70~80cmと大きく、強靭な顎でオオカミなど(!)大きな獲物を捕まえることができます。
ロシアで飼われ始めた当時は、特権階級しか飼うことが認められておらず、歴史的に見てボルゾイは「お金持ちの犬」だったといえるでしょう。

特権階級だけが飼うことができた狩猟犬・・・!特別感が漂います。
優雅なビジュアルと、オオカミも捕まえられる狩猟能力、というギャップに惹かれますね。
ボルゾイの飼育にかかる費用は高い?
歴史的に「お金持ちの犬」だったボルゾイ。
現在は、飼育に費用やその他のコストがかかる犬種なのでしょうか。
ここでは、ボルゾイを飼う際にかかる費用や、必要となるケアを説明していきます。
迎える方法と費用
ボルゾイを飼うには、他の犬種と同様にペットショップやブリーダーから迎える、また保護団体から譲り受けるといった方法が考えられます。
それぞれの方法の良い点・注意点を十分に理解した上で、慎重に選択することが大切です。
ボルゾイをペットショップやブリーダーから迎える際の費用は、20万円~50万円程が相場のようですが、それぞれのペットショップやブリーダーによって異なります。
食費と食事のあげ方
ボルゾイは大型犬のため、食事の量は多く、その分食費が高額となります。
ペットフード協会のデータ(2024)によれば、大・中型犬にかかる1カ月の食費は平均で5,617円となっており、超小型犬や小型犬に比べて3~5割ほど多くなっています[2]。
ボルゾイの食事は、1日2回以上に分けて与えることが多いようです。
運動量が多い犬種のため、消化しやすい、栄養価の高いフード(総合栄養食)を与えることが大切です。
一般に、犬の大きさ・成長段階によって必要な栄養素は異なるため、適切なドッグフードを選びましょう。
なお、注意点として、ボルゾイは「胃捻転(いねんてん)」という病気にかかりやすい点があげられます。
この病気と食事の際の注意点は、次の「2-3.医療にかかる費用」で説明します。
[2]一般社団法人 ペットフード協会 「犬 飼育・給餌実態と支出」
医療にかかる費用

ボルゾイを飼う際は、他の犬と同様に獣医費用や予防接種の費用がかかります。
大型犬の場合、獣医費用の年間平均は約7万円程で、年齢が上がるにつれて増える傾向にあります[3]。
費用に含まれるものとして、年1回の接種が義務付けられている狂犬病ワクチン(1回約4,000円前後)の他、任意の接種となる混合ワクチン(種類によって5,000円~1万円ほど)、フィラリアやノミ・ダニの予防接種などがあります。
また、医療費に関連して、ボルゾイを飼う際に特に注意が必要な病気・けがを説明します。
胃捻転(いねんてん)
胃捻転とは、なんらかの原因で拡張した胃がねじれる病気で、早急な処置が必要となります。
ボルゾイのように胸の部分が長い大型犬は、胃捻転になりやすいため予防が重要です。
食事の30分前から運動をさせずに休ませる、食後や飲水後の30分間は安静にする、食事は少量を複数回にわけて与えるなどの工夫をしましょう。
外耳炎、マラセチア皮膚炎
ボルゾイは耳が垂れており、耳の穴が塞がるので通気性が悪くなります。
このため、細菌が繁殖して炎症が起こりやすく、外耳道(耳の穴から鼓膜までの通り道)に炎症が起こる「外耳炎」や、特にマラセチアという真菌(カビ)による「マラセチア皮膚炎」を発症しやすいといえます。
耳道を清浄に保ち、頻繁に耳をかいたり、皮膚が赤くなったりしていないか、注意しましょう。
骨折
ボルゾイは非常に足が速いため、興奮して駆け回った際に止まれず、壁などに衝突して骨折する場合があります。
急に興奮して走り出さないよう、飼い主がコントロールすることが大切です。
上記に限らず、日々、犬の健康状態に注意を払い、気になる点があれば早めに動物病院を受診することが大切です。
[3]一般社団法人 ペットフード協会 「犬 飼育・給餌実態と支出」
必要なケア(ブラッシング・シャンプー)と頻度

ボルゾイの毛は、細くウエーブのかかった毛と、寒さに耐えるために生えた毛の二層構造になっています。
このような二層構造の毛を「ダブルコート」と呼びます。
ダブルコートの場合、一定以上の長さになることがないため、カットは必須ではありません。
従って、定期的なカットのためのトリミング費用はあまりかからないといえます(シャンプーについては後述)。
犬の毛は、以下のように、毛の構造によって「ダブルコート」と「シングルコート」とに分けられます。
ダブルコート:オーバーコート(太くて固い、皮膚を保護するための毛)と、アンダーコート(柔らかい、保湿・保温のための毛)の二重構造からなるもの。
シングルコート:上記のアンダーコートがない(または、わずかしかない)もの。
カットは不要な一方、ボルゾイは半年毎の換毛期を含め、一年を通して毛が生え変わるため、抜け毛が多いという特徴があります。
日々のケアとして、2~3日に1回程度のブラッシングを行うとよいでしょう。
散歩後に行うことでノミ・ダニや寄生虫を落とす効果があるほか、特に換毛期は適切な体温調整が可能になり、熱中症や皮膚炎等を防ぎます。
シャンプーは、月に1~2回が理想的です。
ボルゾイは体格が大きいため、洗いにくいようであれば、時々プロに任せてしっかり汚れを落としてあげるのもよいでしょう。

長毛種・「お金持ちの犬」と聞くと、定期的なカットが必要な印象がありました。
ボルゾイの毛は意外にも、お手入れが楽なんですね!
運動量と飼育スペースの確保
ボルゾイは、優れた走力をもつ狩猟犬で、走ることが大好きです。
このため、十分な運動量(走る量)を確保してあげることが非常に大切です。
散歩は、毎日30分~1時間/1回(少し犬の息があがるくらいの速度が理想)の散歩を1~2回(自宅で排泄しない場合は、散歩が排泄タイムになるので最低でも朝と夜の1日2回)行いましょう。
加えて、ボルゾイの場合は週末など、リードをつけずに走り回れるような広いドッグランに出かけて運動不足を解消させてあげるとよいでしょう。
また、ボルゾイは室内で飼うことが推奨されます。
人との関わりを好む犬種のため、人の気配を感じる空間で過ごすことで落ち着くことができます。
例えば、家族で過ごすことの多いリビングであれば、落ち着くことのできる部屋の隅などにハウスを設置するとよいでしょう。
窓の近くは、外からの刺激でリラックスしづらいため、避けましょう。

日々の十分な散歩と、週末のドッグラン。
大型犬のハウスを設置できる広さのリビング。
このような環境を提供できる飼い主(「お金持ち」には必ずしも限られないかもしれませんが・・)が、ボルゾイには向いているようですね。
ボルゾイを飼う前に知っておくべきこと
ここまでボルゾイの飼育にかかる費用やコストを説明してきましたが、ここではボルゾイを飼育する場合に知っておくべきその他の点を簡単に説明します。
ボルゾイの性格
ボルゾイは、飼い主に対しては従順で温厚、穏やかな性格です。
エレガントな外見と優しい性格が、ボルゾイの最大の魅力といえるでしょう。
一方で、感受性が鋭く神経質な一面ももっています。
しつけの重要性
ボルゾイは大型の狩猟犬であり、トラブルを避けるためしっかりとしたしつけを行うことが重要です。
繊細な性格のため、しつけや訓練は厳しく叱らず、褒めながら行うのがよいでしょう。
その上で、家族以外の人や犬とも触れあう機会を持ち、社会性を養いましょう。
なお、ボルゾイは「視覚」が優れた狩猟犬のため、遠くの鳥や猫などを見つけて急に走り始める、といったこともあります。
散歩の際などは、呼び戻し(名前を呼ばれたらすぐ反応して、飼い主のもとに来ること)を徹底する等、特に注意が必要です。
介護の負担
ボルゾイの平均寿命は10〜14歳で、9歳を超える頃から身体機能の低下が見られる傾向があります。
ボルゾイに限らず、大型のシニア犬の介護は特に体力が必要です。
寝たきりになった場合に(大型犬の場合は床ずれを防ぐため)寝返りを補助するなど、飼い主は持ち上げる場面が多くあるためです。
また、犬種に限らず、高齢になるほど医療費の支出は増加することも理解しておく必要があるでしょう。
まとめ:ボルゾイは「お金持ちの犬」なのか?
歴史的に「お金持ちの犬」であったボルゾイ。
飼育にかかる費用(迎える際の費用、食費、医療費、トリミング代など)は、他の大型犬に比べて特に高額ということはなく、「お金持ち」でなければ飼えない犬、ということはないでしょう。
ただし、走ることが大好きなボルゾイには、日々の十分な散歩に加え、定期的にドッグランなどに連れて行き運動量を確保できる、飼い主の時間的・経済的余裕が必要といえます。
また、室内で飼うためのスペース確保、しっかりとしたしつけ・訓練の実施、そしてシニア犬になった時の介護など、ボルゾイが幸せに暮らせる環境を提供し続けるという心構えも大切です。