崖に立つ超大型犬のアラスカン・マラミュート

「アラスカン・マラミュート」という犬種を知っていますか?

想像がつく方も「あのハスキー犬に似た犬ね!」と思うかもしれません。

馴染みのあるシベリアンハスキー犬に似ているものの、アラスカン・マラミュートならではの特色と、シベリアンハスキー犬とまた異なった魅力があります

あまり知られていないアラスカン・マラミュートについてもっと詳しくなってみませんか?

この記事では、そんなアラスカン・マラミュートの魅力をたっぷりとお伝えします。

この記事を書いた人

アラスカン・マラミュートってどんな犬?

アラスカン・マラミュートの子犬が落ち葉の上にしゃがんでいる

歴史

アラスカン・マラミュートの起源は、記述が残っていないためはっきりとしたことは分かっていません。

犬種名の「アラスカン・マラミュート」は、アラスカ西部の海岸地方に住んでいたアメリカ・エスキモーの先住民族「マラミュート族」が由来とされています。

アラスカン・マラミュートは、このマラミュート族と生活を共にし、橇引き(そりひき)や狩猟や漁猟などで暮らしを手伝っていたと考えられています。

祖先はシベリア原産の犬であると推測されています。

18世紀に、白人がアラスカに入植するまでの間、アラスカン・マラミュートは純粋な血統が保たれていました。

しかし、白人の橇(そり)引きのレースが流行し、この時に他犬種との交配は進み、特に1909年から10年間はこの雑交がよくみられました。

早く走れる犬種需要が高まり、アラスカン・マラミュートもより高い運動能力が求められたのです。

こうして意図的な交配が行われるようになり、純血のアラスカン・マラミュートは減少し、絶滅の危険性がありましたが、米国本土でも橇引きレースが行われるようになったことから純粋犬保存運動がおこったのです。

1926年以降に、一部の愛好家により純血のアラスカン・マラミュートを保全する動きが見られるようになり、伝統的な交配と改良によって現在の犬種に辿り着いたのです。

アメリカンケネルクラブ(AKC)において、アラスカン・マラミュートの登録第1号は1935年に記録されています 。

ワン!ポイント

アラスカン・マラミュートは現在大型犬に分類されていますが、本来は、現在の中型犬ほどの大きさだったといわれています。

改良の過程で体高が増えたとされています。

基本情報

アラスカン・マラミュートは北極の橇犬としては最古の犬種の1つといわれています。

図を使って、基本情報をみてみましょう!

アラスカン・マラミュートの写真に特徴の図解

指趾(しし)[1]をしっかりと握って立ち、目は注意深く好奇心に満ちています

頭部が幅広く、顔の模様もさまざまありますが、特徴的です。

しっぽはまるで羽飾りのようで、被毛が豊富なボリュームがある巻き尾です。

骨量があり、丈夫な脚と深い胸も特徴です。

ワン!ポイント

指趾(しし):手の指や足の指のこと。

[1]難病情報センター「指趾

アラスカン・マラミュートの飼い方

散歩するアラスカン・マラミュート

性格と特徴

アラスカン・マラミュートの性格は、クールな見た目とギャップがあるかもしれません。

穏やかで人懐っこく、社交的です。

よく馴れている人や犬と遊びたがり、じゃれ合うのが好きです。

もともとは多数の犬と橇(そり)を引くために改良された犬種のため、協調性が高いところが特徴です。

献身的である一方、頑固な性格でもあるため、子犬の時代から人間との暮らしを覚えさせるようにしましょう。

飼い方のポイント

とにかく体が大きく、橇犬であるため体力があります。

特に若い頃まではかなりの運動量が必要です。

最低でも1回に1時間、十分な散歩の時間を取ってあげるようにしましょう

また、力強いため、突然リードを引かれてしまうと人が倒れてしまう危険もあります。

落ち着いて行動ができるようにきちんとトレーニングをする必要があります。

小さなお子さんだけで散歩をすると、力に負けて転んでしまうなどの事故に繋がりますので、きちんと大人がついているようにしましょう。

アラスカン・マラミュートの被毛は、寒い土地の犬種ならではの厚い毛量です。

やや長めの短毛ダブルコートで、アンダーコートといわれる下毛は防水のため皮脂に覆われています。

そのため、適度なシャンプーを怠ったり、ブラッシングを怠ると体臭の原因になったり、毛が絡んでフェルト化してしまうなど、衛生面や健康面でのトラブルに繋がってしまいます。

定期的にケアをしてあげましょう。

換毛期には非常に毛が抜けますので、ブラッシングはこまめに行いましょう

また寒い土地の犬種のため、寒さには強く、暑さに弱い体質です。

夏の散歩時間は、涼しい時間帯を選びましょう。

気を付けるべき病気

どの犬種にもいえることですが、かかりやすい病気はあります 。

特に皮膚疾患にかかりやすく、遺伝的に毛穴の構造に異常きたす「毛包形成不全」、ホルモン分泌低下により元気がなくなったり脱毛を発症する「甲状腺機能低下症」、亜鉛過多または欠乏による皮膚炎を発症する「亜鉛反応性皮膚炎」、大型犬に多く見られる正常な股関節が形成されていない「股関節形成不全」が好発したり、「白内障」も多く見られます。

また、胸の深い犬がなりやすい「胃捻転」にも注意が必要です。

日本は高温多湿のため皮膚疾患を悪化させやすいので、日常的にこまめなブラッシングをしてよく観察するようにしてください。

また、栄養不足や運動不足は股関節の正常な発育を妨げてしまいますので、しっかりと食事の管理と運動の管理を行いましょう

ただし、食事のドカ食いは胃捻転を引き起こすので、良質なフード選びや落ち着いて食事をさせるように心掛け、食後は静かに過ごさせるなどの配慮も必要です。

心配や不安があれば、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。

ワン!ポイント アラスカン・マラミュートがかかりやすい病気
  • 胸の深い犬がなりやすい「胃捻転」
  • 股関節に炎症が起こって痛みが出る「股関節形成不全」
  • 甲状腺ホルモンの分泌量が低下する「甲状腺機能低下症」
  • 目の水晶体が白く濁って視力が落ちる「白内障」
  • 亜鉛過多または欠乏による皮膚炎「亜鉛反応性皮膚炎」
  • 遺伝的に毛穴の構造に異常きたす「毛包形成不全」

よく似ているシベリアンハスキーと何が違う?

散歩するアラスカン・マラミュート正面
シベリアンハスキーのアップ

アラスカン・マラミュートは見た目がよく似たシベリアンハスキーと比べられることがあります。

どちらの犬種も祖先がシベリア原産のため、同じ先祖犬なのではないかといわれています。

性格も温厚で優しいところは共通しています。

では、一体どのように見分けたら良いのでしょうか?

この2つの犬種を見分けるポイントをお伝えします!

違う点アラスカン・マラミュートシベリアンハスキー
被毛の色ライトグレー・グレー・ブラック・セーブル・レッド・ホワイトのみが認められているブラック&ホワイトやグレー&ホワイト、ブラック系から純白まで全ての毛色が認められている
体の大きさ体高:58〜71cm
体重:39〜56kg
体高:50〜60cm
体重:15〜27kg
耳の位置やや低い位置にあり、耳と耳が離れている比較的高い位置にあり、耳と耳の距離が近い
しっぽの形巻き尾垂れ尾
目の色ダークカラーのみ青、黒、茶系、オッドアイなど

※体高と体重は平均値

このように表で比較すると、案外違うことに気が付くかもしれません。

あなたはどちらが好みですか?

アラスカン・マラミュートもシベリアンハスキーも、どちらもそれぞれに魅力があるので選ぶのが難しいですね!

アラスカン・マラミュートにどこで出会える?

散歩するアラスカン・マラミュートと鼻挨拶する白い大型犬

アラスカン・マラミュートを飼いたいと思ったら、ブリーダー、ペットショップ、保護犬譲渡などさまざまな迎え入れ方があります。

「アラスカンマラミュート ブリーダー」でWeb上の検索を行うと、日本でもいくつかブリーダーが見つかります。

ネットやSNS、専門誌で探す方法もありますが、友人や知人からブリーダーを紹介してもらう方法はおすすめです。

他には、動物病院やトリミングサロンで聞いてみるのも良いかもしれません。

先にご紹介した通り、アラスカン・マラミュートは力の強い大型犬です。

安易に飼育をすることはせず、きちんと迎え入れる事前の準備を行うことが重要となります。

家族が増えること、命に対する責任を持って、共に幸せな生活が送れるようにしましょう!

良いブリーダーの見分け方

ブリーダーからアラスカン・マラミュートを迎えたいと思ったら…これから大切な家族になるわけですから、やはり信頼できるブリーダーに出会いたいですよね。

では良いブリーダーはどのように見分けたらよいのでしょうか?

あくまで一例ですが、ポイントを以下5点に絞ってお伝えします 。

ポイント解説
専門性を持ってブリーディングしている●犬種への深い理解や、遺伝的疾患などに配慮した交配を行っている
●引き渡す子犬だけでなく、親犬の健康を適切に管理し愛情を持っている
清潔な環境作りをしている●健康や安全に配慮するなどの適切な管理、清潔を意識している
●親犬、子犬の排泄物の処理をきちんとし、爪や被毛の手入れがされている
購入前にしっかりと誠実に対応する●引き渡す子犬の健康状態をしっかりと対面で説明してくれる
●対応は丁寧かどうか。また初めて迎え入れる方に対して、心配や不安、疑問に思うことに誠実に向き合って話してくれる
第一種動物取扱業を取得している●「登録番号」「営業種」「登録期限などを記した標識または登録証」を施設内などに掲示している(ブリーダーなど動物を取り扱う業者は、「第一種動物取扱業」として都道府県への登録は必須)
※上記の掲示物が見当たらない場合には、きちんとブリーダーに確認し、怪しいと感じたら購入を控えましょう
生後56日(8週)を過ぎた子犬を引き渡している●生まれてから56日(8週)を経過した犬の販売や展示をしている(ブリーダー・ペットショップなどでは、犬が生まれてから56日(8週)を経過するまでは、販売や展示が禁止されています。
(「動物の愛護及び管理に関する法律」)子犬の「社会性を身につけること」「健康な体に成長すること」が理由とされ、56日が経過せずに販売された子犬には多くの問題行動や感染症のリスクがあるためです)

※もしも、そのブリーダーが怪しいと感じたら、その業者から購入することは控えましょう。

悪質なブリーダーの中には、生まれてから56日を経過していない犬を販売したり、生年月日を偽装しているといったこともあります。

違反している業者がいたら、都道府県の動物愛護管理部局へ相談してみてください。

まとめ

アラスカン・マラミュートが口を開けて斜め上を見上げている

アラスカン・マラミュートをもしも見かけたら、この記事で知ったことを思い出してみてください。

これまでなんとなく知っていた犬種が、ちょっと身近で親しみのある存在になるかもしれません。

橇犬として人の役に立ち、人と共に過ごしてきたアラスカン・マラミュートですが、今ではすっかり「家族の一員」として楽しそうにお散歩をしています。

レアな犬種でなかなか会えなくて残念!と思ったら、昨今はYouTubeやSNSで飼育している人がその可愛い姿を載せているようですので、チェックをしてみるのもいいかもしれませんね!

 この記事の監修者

吉田萌 (NPO法人ドッグトレーナー2級)

国際動物専門学校 しつけ・トレーニング学科卒。
噛み・吠え癖の酷い元保護犬のビーグルを里親に迎えた事をきっかけに『褒めてしつける』を念頭に活動。 自身の経験を活かし、しつけイベントにて飼い主に寄り添ったトレーニング方法を指導。 ナチュラルペットフード・栄養学の知識にも精通。保有資格はNPO法人ドッグトレーナー2級の他に、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級など。

資格
NPO法人ドッグトレーナー2級、しつけアドバイザー2級、愛玩動物飼養管理士、ドッググルーマー2級

この記事を書いた人

鮎川多絵

東京都出身。1986年10月生まれ。趣味は映画鑑賞・1人旅・散歩・動物スケッチ。
家族は保護犬1匹保護猫2匹(+空から見守る黒うさぎのピンキー)。
子供の時からイヌ科動物が大好きでした。戸川幸夫氏の「牙王」で狼犬に憧れ、シートン動物記で「オオカミ王ロボ」に胸を打たれました。特に大きな犬のゆったりとした雄姿には目を奪われます。保護犬と保護猫の飼育経験から、動物関連の社会問題、災害時のペット同伴避難について意識を向けています。

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